外資系ブランド企業の職種の中でも人気の高いマーケティング職。求人募集への応募倍率も他の職種より高い傾向にある。本記事では、外資系ブランド企業の仕事内容や求められるスキル&マインドセットについて数々の一流外資系ブランドのマーケターとして活躍されてきた堀 弘人さんに解説いただいた。これから外資系ブランドのマーケティング職を志望する方はぜひ参考にしていただきたい。
ADVERTISING
堀 弘人さん/H-7HOUSE 代表
ブランドコンサルタント。ブランドコンサルティング企業H-7HOUSE(エイチセブンハウス)を設立し、幅広い業種のブランド戦略を支援している。また、NESTBOWLの社外取締役も務める。起業前はアディダス、リーバイス、ナイキ、LVMH Watch & Jewelryなど数々の外資系企業にてマーケティングディレクターを含む要職を歴任。その後、楽天の国際部門にて戦略プロジェクトリーダーとして新規事業の立ち上げと収益化を経験したビジネスリーダー。学習院大学卒。米国・コーネル大学 ブランドマネジメントプログラム修了。
外資系ブランドでのマーケティング職とは
― 外資系ブランドのマーケティング職(以下、外資系マーケター)の仕事内容を教えていただけますか。
仕事内容は多岐に渡り、その解釈は企業によって大きく異なります。私の経験からお話しすると、ブランド戦略をはじめ、広告宣伝やPR、イベント、デジタルとEC管理、CRM、リテール、ホールセール、商品開発など多方面に渡ります。これらをワンブランドとして統一感を保ちながら、ビジネスの最大化を図ることがこの職種の主な目的となります。
― 外資系ブランドにとって、日本市場はどのような位置付けなのでしょうか。
日本市場は、世界的に見ても非常に特異で、多くのブランドにとって重要な売上を占める市場として位置付けられています。そのため、外資系ブランドマーケターは本国オフィスからの良いプレッシャーを受けながら日々、業務を推進します。世界的なブランド戦略の理解だけでなく、日本独自の消費者インサイトやファッショントレンドを深く理解する必要もあり、それを本国オフィスと緊密にコミュニケーションを取りながら戦略構築を行います。
十分なグローバル戦略の理解のもとで、ローカルの戦略を開発し、それを本国の承認を取り付け、実行するというバランス感覚が求められ、それがブランドを成功に導くためのカギとなります。
外資系ブランドマーケターの魅力とやりがい
― 外資系ブランドマーケターのお仕事の魅力について教えていただけますか。
たくさんありますが、なかでも国際的なビジネス経験を積めること、グローバルな視野を養えることは大きな魅力だと思います。世界的なブランドの仕事は、国内外に大きな影響力を持つことも自身の仕事を通じて実感できることでしょう。
また、外資系ブランドでのキャリアは、世界的に広い人脈を築くことにも繋がります。私自身、20年以上に及ぶキャリアの中でサンフランシスコやニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、ソウルなど、数多くの都市を訪れて経験したことや、そこで得た出会いは何事にも代えがたい大きな財産で、現在の私の強みにもなっています。
― 国際的な仕事をしたい方にはぴったりですね。大きなやりがいもありそうです。
そうですね。トップクラスのメゾンでは数十億円規模のマーケティング予算を扱うケースもあり、市場や消費者に大きな影響を与えるという貴重な経験も積めます。
ただし、ブランドによっては本国のコントロールが強く、ローカルの裁量自由度が低いというケースもあります。その場合は、日本市場向けにゼロからクリエイティブを創出したり、最適化した製品を開発したりすることが少ないブランドもあります。そのようなブランドでのマーケティング職は、自由度という意味において限定的で、ブランドキャンペーンの露出先選定や露出量調整が主な業務となることもあります。転職の際は、ご自身の業務にどの程度の裁量が与えられるのかも事前に知っておくとよいでしょう。
外資系ブランドマーケターに必要なスキル&マインド
― 外資系ブランドマーケターに必要なスキルについてお教えいただけますか。
主に「分析能力」、「言語能力」、「戦略的思考」、「クリエイティビティ」の4つが挙げられます。
・分析能力
戦略的な意思決定を行うために、グローバルなデータだけでなく自国の市場調査を主導し、データを正しく解釈するといった高度な分析能力が不可欠です。これには量的なデータだけでなく、質的なインサイト把握も含まれます。
・言語力
英語力、特にビジネス英語の習得は必須です。本国の位置する国によってはフランス語やイタリア語を話せることが有利に働く場合も多くあります。しかし最近は、生成AIや翻訳・通訳アプリといったコミュニケーションツールが発達していますので、スキルに不安のある方はテクノロジーも武器としてうまく活用するとよいでしょう。
・戦略的思考
特にグローバルとローカルの要求をバランス良く組み合わせながら行う戦略的思考が必要です。マーケティング戦略は単に製品を売るためだけではなく、ブランド価値を長期的に構築することも求められます。短期的な視座と、長期的な思考もブランドビジネスには重要です。
・クリエイティビティ
新しいキャンペーンコンセプトを考える際や、未来のマーケットトレンドを予測する際には、ときに斬新なアイデアが求められます。私は、国内外の近代美術館やギャラリー、海外のストリートアートなどに触れてクリエイティビティを養うように心がけてきました。日頃からTikTokやInstagramなどで最新トレンドをインプットすることもおすすめです。
― 必要なマインドセットについても教えてください。
外資系企業では、異文化への深い理解とそれに対する敬意、そして常にオープンマインドでいることが大切です。こうしたマインドは国際的なビジネス環境での成功を支える基盤となります。
また、外資系企業ではしばしば本国からのトップダウンの指示に基づいて行動する必要があります。その際は、高い柔軟性と政治的な洞察などが求められ、時には上層部との調整や意見の擦り合わせが非常に重要です。リーダー職になればなるほど、この調整業務に多くの時間を割くことになります。
外資系ブランドマーケターのキャリアパスとは
― 外資系ブランドマーケターは、どのようなキャリアパスを歩むのでしょうか。
個人の目標やその企業やブランドの状況によって大きく異なると思います。私自身のケースでお話すると、キャリアアップを図るために約3年ごとに転職し、異なる外資系ブランドでの職務に就き、役職や待遇を戦略的に上げていきました。
― 転職をしたことで良かった点をお教えいただけますか。
あくまで私個人のケースですが、さまざまなブランドや市場環境で働くことで、実践的かつ幅広いビジネススキルの習得、ケースメソッドを体験できた感覚があります。また数年ごとに新しい職場環境に身を置いたことで、モチベーションの維持もしやすかったです。
転職は、広範囲にわたって人脈を築くことにも繋がりますし、将来のキャリアアップに役立つことも多いです。実績をきちんと積んでいれば転職市場での評価も高くなり、役職の昇進、場合によっては平均10〜20%程度の大幅な年収増が見込める場合があります。
― 逆に、気をつけなければいけない点は何でしょうか。
転職回数が多いと、「組織に馴染めないのでは」「業務上の問題を抱えているのでは」といった否定的な印象を抱かれてしまう可能性があります。また、外資系企業とひと口にいっても企業文化や働き方はそれぞれで大きく異なり、新しい環境に適応するためにはある程度の時間や労力が必要です。
これから目指す方、転職を考えている方へ
― 外資系ブランドマーケターとして働いている方は、どのような経歴をお持ちの方が多いですか。
基本的には、同じような外資系ブランドやメーカーのマーケター経験者が多いです。ほかに、大手総合商社や企業などで国際的なビジネス経験を積まれた方、日系企業のマーケティング経験者からの転職者もいます。また、人材として海外での修学や留学経験をお持ちの方や、インターナショナルスクール出身の方も多くいらっしゃるのも特徴だと思います。
― 未経験からの転職は難しいのでしょうか。
難易度としては比較的高めでしょう。ブランドの事業規模にもよりますが、外資系のマーケティング部門は少数精鋭で構成されることが多く、即戦力を求めていることが多いためです。ただ、もちろんチャンスがゼロというわけではありません。例えば、ノンマネージャー職や、もっとも人材が不足しているデジタルやeコマース領域は各人事担当者も積極的に外の業界から有能なタレントを探しています。
未経験の方は、先述の必要スキルやマインドセットに加え、基本的なビジネススキルやマーケティング理論を学べるオンラインコースや講座などを受講することをおすすめします。そして、知識だけではなく外資系企業で働く人々とのネットワークを築いておくことも重要です。業界イベントやセミナーに参加したり、LinkedInなどを活用して人脈を広げたりすると良いでしょう。
国際的な舞台で活躍でき、グローバルな視野や高いコミュニケーションスキルを身につけられる外資系ブランドマーケターの仕事。未経験からの転職は容易ではありませんが、日頃から知識や必要スキルを高め、人脈を広げておくことでチャンスと可能性は広がるといえそうです。目指す方は、ぜひ本記事の内容を参考にチャレンジしてみましょう。NESTBOWLではマーケティングに関する求人情報やキャリアに関する最新トレンド、転職活動に役立つ知識や考え方、業界注目のフロントランナーへのインタビューなど、豊富なコンテンツをメールでお届けします。まずはお気軽に、こちらからご登録ください。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【NESTBOWL】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境