刺繍を施したリバーシブル仕様のサコッシュ
カーテン製造卸・小売りのカズマ(福井)は今夏、手刺繍作家の髙知子さんと協業するファッション・インテリア雑貨「Filament」(フィラメント)を発表しました。福井市と中国・浙江省に自社工場があり、機械刺繍に取り組んで20年。技術と生産力、ノウハウを生かし、2年前から準備を進めてきた新規事業です。数馬亜季子社長に企業姿勢を聞きました。
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奥深さを再認識
金沢市を拠点に活動する髙知子さんの手刺繍の作品は、色の豊富さと組み合わせ、手仕事ならではの温かみに魅力があります。カーテンに用いる機械刺繍との表現の違いに数馬社長は感動したそう。互いに共感して意気投合し、新しい商品作りを始めました。
中心になったプロジェクトメンバーは、開発部の土屋さんと大橋さん、営業部の二ツ橋さん。日常はそれぞれ違う業務を担当しています。土屋さんは、外部の方との物作りは初めてで最初は手探り状態でしたが、従来の考え方や、やり方に捉われずに進めることができ、「自分の成長にもつながった」と感じています。当初は自信がなかったスタッフにもだんだんと積極性や責任感が生まれ、会社にとっては潜在能力に気づくきっかけになりました。
「髙さんが手で一本一本、針を生地に刺す感覚や、一頭の運び方、強弱の付け方などに目からうろこが落ちるような思いがした」と数馬社長。機械に置き換えて再現しようと研究し、刺繍に対する考え方や作り方を見直すきっかけになりました。
新しいつながり
自社で一貫生産していますが、アクセサリーに使う資材の仕入れ先の開拓など、初めてのことばかりです。カーテンとは異なる過程に、当初は社内で混乱も少なからずあったそうです。全社で意識を共有する姿勢が不可欠となりましたが、やり遂げる意志を持って、納得いくまで試作を繰り返す中で理解され、協力関係を築くことができたといいます。
展示会は、カーテン事業とは異なる商品特性やターゲット層を踏まえて、合同展「ててて商談会」に初出展しました。会場では「これが機械刺繍で出来ているの⁈」と驚きの声も聞かれ、ミュージアムショップや雑貨店といった、従来と違う業界の取引先とつながりました。内装関係の事業者からは、刺繍の技術を生かした他の商品開発の依頼もありました。
フィラメントを通じて、培ってきた技術力をより多くの企業や人に知ってもらうこと、さらに付加価値を高める成果を上げることができました。「カーテンの一歩手前のテキスタイルの可能性を大事にして、これからも開発を続け、発信していきたい」と数馬社長。自社の生産背景を活用して新しい商材に取り組むことで、企業の進化、発展を促しています。
■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。
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