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盛況と停滞の波を乗り越える「フライング タイガー」 鍵は“コミュニティマーケティング”

盛況と停滞の波を乗り越える「フライング タイガー」 鍵は“コミュニティマーケティング”

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カラフルでユーモアにあふれた北欧雑貨が店内いっぱいに並ぶ「フライング タイガー コペンハーゲン」。ここ数年は店舗とファンを順調に増やし続け、独自のコミュニティ「ファミリエ」を活かしたPR施策も軌道に乗っているという。約10年前、日本でのスタート時から同ブランドのマーケティング・PRを担ってきたのがマーケティング部 部長の山中伸悟さん。思うように売上が伸びない停滞期も経験しながら行き着いたそのPR手法とは?詳しくお話を伺った。

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山中 伸悟さん/Zebra Japan株式会社 マーケティング部 部長
1979年、東京都出身。大学卒業後は大手総合電機メーカーのグループ企業(マーケティング事業専門)に入社。3年半勤務した後、“ブランドづくり”についてさらに学びを深め、経験値を高めたいという想いから大手広告代理店に転職。さまざまな企業のマーケティングに従事し、ブランドづくりにおけるフレームワークを多数学ぶ。2011年、株式会社サザビーリーグに転職。それまで培ったキャリアを活かしながら同社のマーケティング部門に従事。2012年、「フライング タイガー コペンハーゲン」の日本への展開に伴い、Zebra Japan株式会社へ移り、現職に就く。

“ブランドづくり”に携わりたいという強い想い

―  山中さんのこれまでのキャリアについてお教えいただけますか。

大学時代、“将来はかっこいいブランドづくりに携わりたい”という漠然とした想いがあり、総合電機メーカー傘下にあるマーケティング専門企業に就職しました。ところが、当時は自身の専門性もなく、母体が大企業だったこともあり、“ブランドづくり”という仕事にはなかなか関われなかったんです。そこで、学びを深めようと広告代理店に転職。約6年にわたって様々な企業と関わり、ブランドづくりのフレームワークを学びました。ただ、“ブランドを生み出す事業会社で働きたい”という想いはずっと胸にあり、サザビーリーグへ転職。その2年後の2013年、サザビーリーグの「フライング タイガー コペンハーゲン」の国内事業への資本参加が決まり、それに伴って同ブランドを展開するZebra Japanに移り、現在に至ります。

― マーケティング領域に長く携わられていますね。この職種のどんな部分に魅了されていますか?

当初は、マーケティング戦略やコミュニケーション戦略を練り、それが実行されて成果として表れる――それがプランナーとしての醍醐味だったのですが、最近は少し変わってきました。というのも、結局ブランドをつくり上げるのは“人”だと感じるようになったからです。ブランドのパーソナリティ=“人の総体”とも言えます。そういう意味で、今はいわゆるマーケティング戦略というよりも、人を活かす仕組みづくりに興味が湧いています。

大盛況→停滞期を迎えるも、軌道修正で乗り越える

― 「フライング タイガー コペンハーゲン」というブランドについて、詳しく教えていただけますか。

1995年、10クローネ(デンマークの通貨)で買えるアイテムを揃えた雑貨店としてデンマークでスタートしました。いわば、“デンマーク版100円均一ショップ”ですね。取り扱う商品は皆で楽しめるものや、人との繋がりを生むアイテムが中心。これには、北欧のヒュッゲの文化(※)が大きく影響しているのでしょう。ずっとヨーロッパで展開されてきましたが、2012年に大阪・心斎橋にアジア初の1号店が誕生。以降、日本では出退店を繰り返しながら成長を続け、現在は国内に45店舗展開しています。(9月15日時点)

※デンマーク発で世界的に拡がりを見せている価値観。「大切な人との居心地のよい雰囲気や時間」のこと

― 1号店が出来たときは瞬く間にブームとなり、メディアでも連日のように取り上げられましたね。

ありがたいことに、整理券が必要になるほど多くのお客様にご来店いただきました。翌2013年には、東京・表参道に旗艦店がオープン。いずれも大行列ができて好調な滑り出しでしたので、最初の2~3年はお客様にスムーズにお買い物をしていただくにはどうすればいいか、各店舗が適切なオペレーションを行うためにはどうすればいいか、ということに終始していました。

Flying Tiger Copenhagen 表参道ストア

― その後は、順調に店舗を増やされていったのでしょうか?

日本でスタートしてから数年は、「商品がたくさん並ぶ中から、お客様が探し出す楽しみがあるお店が好ましい(=店の売り場面積は大きい方が良い)」という考えで、大型店舗を増やしていきました。ところが、必然的に店舗家賃が高くなっていく中、当初のブームも落ち着き、次第に売上は伸び悩むように……。当時はデンマークから一方的に送られてくる商品を並べていたのですが、なかには日本のお客様にはフィットしにくい商品があったり、そもそも来店リピートに繋がらなかったりといった課題も出てきていました。一定の売上は保てていたものの、運営コストの高さが仇となり、数店舗は閉店することになりました。

― 苦しい時代があったのですね。どのように巻き返していかれたのでしょうか。

まずは“当ブランドの日本でのコアなお客様はどんな方々なのか”を知るところから始めました。浮かび上がったのは、小さな子どもを連れたお母さんやご家族といったいわゆるファミリー層。そこで、店に並べる商品はそのようなお客様に好評のトイ(おもちゃ)やパーティーグッズ、お菓子類を増やしたり、出店場所をショッピングセンターにして小型店舗を増やしたりといった方向に舵を切っていきました。

― 少しずつ、日本市場にローカライズされていったのですね。

そうですね。その頃から商品のセレクトはある程度日本でもハンドリングできるようになっていましたし、一部の食品は日本で製造するようになりました。そして、コミュニケーションの部分でも日本のお客様によりフィットするような手法を取ることで、停滞期を乗り越えていきました。

「ファミリエ」を活かしたPR施策で、ファンを増やし続ける

― 御社が行っているマーケティング施策について教えていただけますか。

2018年頃は、コミュニティマーケティング(※)に力を入れていました。当社ではコミュニティを「部活」という名称で推進し、ホームパーティー系やDIY系のジャンルで活動を行い、その活動に付随して店舗ではイベントも行っていました。ただ、コミュニティ施策だけではなかなか売上には直結しません。“あるべきコミュニケーションとは何なのか”を考え、行き着いたのがメディアを通じたPR。その時期に当社が提案したいことをあらゆるメディアを通じて知ってもらうこと、メディアを通して伝えていくことに注力してきました。

※ユーザーコミュニティを活用したマーケティング手法。企業がコミュニティを作り、顧客ユーザーとコミュニケーションを長期的に深めていくことで顧客ロイヤリティの向上やファンの創出に繋げることができる。

コロナ禍では、「フェミリエ」のファンバサダーが講師を務めるワークショップを、公式アカウントのInstagramライブで実施

― そのPR施策について具体的に教えていただけますか?

コミュニティをさらに拡大化させたものを、社内では「ファミリエ(デンマーク語でファミリーの意味)」と呼び、メディアへのPRは「ファミリエ」と共に行っています。「ファミリエ」は、「KOL(専門性と影響力のあるインフルエンサー)」、「インフルエンサー」、「ファンバサダー(ファン+アンバサダー)」、「スタッフ」の4つに分類。ホームパーティーやDIYを得意とする方々が多く、例えば、「KOL」にはくまみきさん(youtubeチャンネル登録者数60万人以上)やこうじょうちょーさん(youtubeチャンネル登録者数50万人以上)などがいらっしゃいます。

― なるほど。このような施策を行いたい企業やマーケターは多いと思いますが、成功法則まで見いだせているケースはまだ少ないと思います。

やみくもに広告費をかけることなく、コミュニケーションスキームをどう作り上げるか。これに10年を費やしてきました。そしてこの3年でやっとその手応えを感じています。お客様の姿がより明確に見えるようになりましたし、その方たちとの間に生まれた絆や繋がりの大切さを感じています。つくり上げるのに時間はかかりましたが、生まれた絆は強いと感じています。

直近では、タイガー魔法瓶とコラボした「#時短ハロウィン」ネタを企画。「ファミリエ」のファンバサダー宅で撮影を行った。

― 試行錯誤を繰り返しつつ、着実に店舗とファンを増やし続けてこられた印象です。今後の展望についてもお聞かせください。

今後、当ブランドはさらにグローバル展開を進めていく予定です。そんな中で日本はアジア地域を牽引する存在になれるのではと考えています。そして、アジアならではのシーズナリティやイベントに関わるものやアジア発のキャンペーンなどを提案していけるとブランドとしてさらに面白くなっていくと思います。ヨーロッパだけではできなかったことにもチャレンジしていきたいです。

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