近年、盛り上がりを見せている異業種コラボレーション。異なる業界でありながらも、ライフスタイルという枠で同じ共感目線を持つ複数の企業やブランドがタッグを組む。単一では表現できない新しい「楽しい」「おもしろい」が生み出されていく仕掛けは、まさに今の時代を象徴している。このひとつの事例として今注目されているのが、湘南レーベル株式会社が手がける「8HOTEL(エイトホテル)」と他業種のコラボだ。多くのホテルが存在する中で、なぜ8HOTELの異業種コラボがSNSを中心に話題となっているのか。茅ヶ崎エリアで体験できるカルチャーやコミュニティを、どのように“思い出”として持ち帰っていただくのか、人の心を動かす体験型ホテルの在り方について、湘南レーベル株式会社取締役・谷内香さんと8HOTEL CHIGASAKI支配人の伊澤美和さんにお話をうかがった。
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谷内 香さん/湘南レーベル株式会社 取締役社長室長(写真:左)
神奈川県出身、不動産業・ホテル業を展開する同社にてPR、ブランドマネジメントに従事。
伊澤 美和さん/8HOTEL CHIGASAKI支配人(写真:右)
神奈川県出身、8HOTEL CHIGASAKIのオープニングメンバーとして入社。現場オペレーション、地域企業とのコラボなど支配人として多岐に渡り活躍。
Instagram:@8hotel_chigasaki/@8hotel_fujisawa
「思い出」を持ち帰る体験が心に残る「感動」につながる
− ファッション、アート、フード、ミュージック、さまざまな要素が結びつく8HOTEL CHIGASAKIの特徴について教えてください。
谷内 香さん(以下、敬称略):2010年オープン以来、今年で13年目になるFUJISAWAと2020年にオープンしたCHIGASAKI。 8HOTELは現在この2拠点で展開しています。その中でもここCHIGASAKIは、アメリカのモーテルをイメージしたホテル。中央にあるプールを囲うように、宿泊者限定のサウナやカフェ、フロントなどの非日常空間を体験していただけるのが大きな特徴です。
伊澤 美和さん(以下、敬称略):ビジネスで足を運ぶ方が多いエリアですが、CHIGASAKIのテーマは地元。湘南という独自の地域カルチャーを体感していただこうという思いから、ローカルとビジターを融合させたカジュアルなホテルライフを過ごしていただけるよう工夫している点も8HOTELならではです。
− どのような場面で湘南カルチャーを体感できますか?
谷内:ただ宿泊するだけでない「思い出を持ち帰っていただく」という体験こそが8HOTEL。湘南という土地を表現する地産地消をメインに、地元の農家や企業とのつながりから食やアート、ファッションなどをコラボという形で発信しています。こうした体験を通じて、人が人を呼んでいるのかなと。実際、CHIGASAKIに宿泊された方がホテルでの感動体験から8HOTELを就職先に選ばれたという嬉しいご縁もありました。
伊澤:1階のカフェラウンジでいただける季節のフルーツで作ったスイーツや茅ヶ崎産のアイスクリームや茅ヶ崎のビール工房とコラボしたビール、そして茅ヶ崎の農家から仕入れた野菜でつくる朝食の日替わりスープは絶品です。ホテルだけでなく、茅ヶ崎の街を楽しんでほしいという意味も込め、ディナーはあえて提供していません。
コラボを通じて、その街の日常に触れてもらう
− 『1週間が8日あったとするならば、人はどのようなインスピレーションを抱くのだろうか。』というコンセプトを体現する中で印象に残っている取り組みはありますか?
谷内:FUJISAWAのお話になりますが、湘南と所縁のあるアーティストやクリエイターとコラボした「8DAYS A WEEK(エイトデイズ ア ウィーク)」は大成功でした。シンプルな白壁のゲストルームに宿泊するのではなく、各ゲストルームにアートが入るプロジェクトを行ったのですが、壁に直接絵を描いていただいたり、写真を飾ったり。各アーティストの個性あふれる絵や作品が50以上の部屋で展開されたのを今でも覚えています。
伊澤:私たちにとって湘南カルチャーは身近な存在ですけど、外からはどう見えているんだろうと考えていて。その街の日常を体験する、それを湘南地域でトライしたのがFUJISAWAです。宿泊者はもちろん、地元の人も足を運びに来る社交場のようなカフェラウンジ、アーティストやクリエイターが発信する湘南カルチャーが色濃く反映されたデザインルーム。 こういう場所って今まで湘南エリアになかったように思います。誰もが楽しく心地よく過ごせる湘南のビーチカルチャーを、良い形で引き継いで
− 海外の有名プロサーファーも宿泊されているそうですね。
谷内:もともとFUJISAWAに海外のプロサーファーが宿泊する 機会があり、その流れでCHIGASAKIに泊まっていただきました。ホテルから海まで歩いて20分くらいなので、リクエストがあればホテルのトゥクトゥクで無料送迎しています。有名プロサーファーが宿泊したホテルということで興味を持って泊まりに来られるお客さまもいらっしゃいます。
− CHIGASAKIのゲストルームは、どんな雰囲気でしょうか?
谷内:CHIGASAKIのゲストルームは、シンプルなミッドセンチュリーのお部屋。サウナやプールをはじめ、ホテルで無料貸し出ししているレンタル自転車ビーチクルーザーで茅ヶ崎の街を思いっきり遊んでいただきたいからこそ、ゲストルームはゆっくりくつろげるシンプルな空間にしています。より落ち着いた雰囲気を求められる方には、「8CASUAL(エイトカジュアル)」というフランフランの家具がコーディネートされたお部屋がおすすめです。
伊澤:ゲストルームといえば、お誕生日や記念日など、バルーン装飾やケーキを用意するサプライズプランも好評ですね。サプライズする方とホテルスタッフが事前に打ち合わせするのですが、どんなケーキがいいのか、どのタイミングで持っていくかなど、一生懸命考えます(笑)。
サウナシュラン受賞した本格サウナの「ととのう体験」も大好評
− 8HOTEL CHIGASAKIといえばサウナがSNSで話題となっています。サウナによる訴求効果はありましたか。
谷内:SNSに投稿されたホテル情報をご覧になって宿泊されるお客さまがとても増えています。サウナに関しては、年間500回サウナに入ると公言されているサウナ師匠・秋山大輔さんが所属されているTTNE Incプロデュースの本格的なフィンランドサウナが体験できるということで「ここでサウナ体験してみたい!」と憧れを持って来てくれるお客さまが多いですね。
伊澤:2022年にサウナシュランを受賞したCHIGASAKIのサウナ。自分の好きなタイミングでセルフロウリュウが楽しめるので、サウナ好きの方にぜひ体験していただきたいです。サウナ後は冷水シャワーを浴びて、目の前にあるプールを水風呂代わりに身体を冷やしていただくのですが、これが格別の気持ち良さ。冬もシングルプールとして解放しているので、通年を通してサウナとプールが楽しめるのも8HOTELの強みです。
谷内:サウナの後は「ととのえ部屋」でまったり。身体を休めたりヨガをしたりと多目的に利用できます。夜はプールに設置されている大型プロジェクターでサーフムービーを流してムードあふれるナイトプールも楽しめますよ。CHIGASAKIに関しては、オープン前にインフルエンサーを集めて宿泊体験してもらい、自由に配信してもらったことで一気に知名度が上がりました。同じ場所で写真が撮りたい!と若い世代が宿泊し、それをメディアが取り上げてくださり、そこから他の企業とつながりが生まれたケースもあります。
人と人とのつながりから生まれたコラボレーション
− さまざまな企業とコラボ展開されていますが、なぜここまで広げることができたのでしょうか。
谷内:ここまで他企業とコラボレーションできたのは、まわりの方の支えやアドバイス、サポートがあったからこそ。8HOTELをよく利用してくれる方がアパレルブランドやプロサーファーとつないでくださったことが大きく、一緒にやりましょうと手を挙げてくださる企業が人伝てに増えています。今ではそこが一番の強みになっているので、とてもありがたいですね。
伊澤:今まで私たちがやってきたことが自然な流れの中でコラボレーションにつながっています。宿泊された方が8HOTELを好きになってくれて、そこから新たに人が人を連れてきてくれることを実感しています。
− これまでどのようなコラボレーションが実現されましたか?
谷内:最近だと、FREAK’S STORE(フリークス ストア)とコラボしたファッションアイテムですね。色味やデザインなどデザイナーと打ち合わせしながら、ビーチと街の両方で使えるルームウェアやTシャツ、ビーチバッグをつくりました。他にも雑誌martとのコラボバッグやBILLABONG(ビラボン)、TOM’S(トムス)といったアパレルブランドとご一緒させていただきました。
伊澤:TOM’Sは、スタッフのユニフォームシューズとして取り入れるなど、新たなチャレンジもしました。TOM’Sの靴がここで買えるということで、お客さまからの評判も良かったと思います。
谷内:8HOTELにとって、テーマやコンセプトを体現できることは、本当に周囲の力があってこそ。コラボを実現するノウハウを学ぶことは大きな励みになっています。
海と親和性が高いブランドと一緒に「ここ」だけの特別体験を提供したい
− 多くのブランドとコラボを実現されましたが、挑戦してみたいコラボレーションはありますか?
伊澤:例えばハイブランドとのコラボレーションに興味があります。
谷内:そうですね。茅ヶ崎という土地柄、海との親和性が高いので、そういうテイストを持っているブランドとご一緒できたら嬉しいです。個人的に、ラグジュアリーブランドのビーチライン販売会はやってみたいです(笑)。
伊澤:ドレスコードを決めたプランも楽しそう。例えば全身ホワイトのドレスコードで宿泊していただき、写真撮影などを楽しんでもらうとか。和に寄せて縁日をイメージしたコラボレーションも素敵だなと思います。
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