1987年にオーストラリアで誕生した、スキンケアブランド「イソップ」。その品質の高さと洗練されたパッケージデザインは世界中で人気を集め、日本にも男女問わず多くのファンを持つ。イソップ・ジャパン株式会社でリテール統括を務める林明玉さんも、もともとはそんなファンのひとりだ。15年以上ファッション業界に身を置き、結婚・出産後もキャリアを諦めなかった林さんにこれまでを振り返ってもらいつつ、イソップ・ジャパンの組織や仕事、今後の展望について語っていただいた。
ADVERTISING
林 明玉さん/イソップ・ジャパン株式会社 リテール統括
台湾出身。2歳のときに家族とともに日本に移住。大学卒業後は老舗インポーターに入社し、営業として7年勤務したのち退職。フリーランスを経て、2011年に複数のイタリアブランドを取り扱うコングロマリット企業へ入社。イタリア有名ブランドの日本でのリローンチに携わり、セールスからMD、海外とのやりとりまで幅広く従事。7ヵ月の産休・育休を経て、復職後はリテール部門に勤務。その後ヨーロッパの大手ラグジュアリーブランドへ転職し、リテールマネージャーとして6年勤める。2022年に退職し、約半年の充電期間を経てイソップ・ジャパンに入社。リテール統括に着任し、現在に至る。
老舗インポーターで営業キャリアを積み重ねた20代
― 林さんは、ファッション業界で長く働かれてきました。まずはそのキャリアのスタートから教えてください。
子供の頃から海外への憧れが強く、将来は海外出張に行ける仕事に就きたいと思っていたこと、またファッションが好きだったこともあって、ファッションブランドの老舗インポーターである日系企業に入社しました。仕事は教えてもらうというより、自分で現場で覚えるという雰囲気だったため、いわゆる“たたき上げ”です(笑)。営業として、取引先との交渉から、在庫管理、店頭のディスプレイまで幅広く担当しました。在籍した7年間はビジネスの川上から川下まで携わったことで、オーナーシップを持って仕事に取り組む面白さと難しさを体験させてもらいました。それはその後のキャリアにも大きく影響していると思います。
― その後は、どのようにキャリアを歩まれていかれたのでしょうか。
当時の私は、売り上げに繋がる戦略的な手法についてもっと学びたいと考えていました。そんなとき、イタリア系コングロマリット企業に転職した元社員から「新しい事業の日本での立ち上げメンバーを探している」とご紹介いただき、そのご縁で転職しました。
― そこから、日本での有名イタリアブランドのリローンチ、という大仕事に携わっていかれるのですね。
そうです。当初、そのリローンチに関わっていたのは私とゼネラルマネージャーしかいなかったので、MD(マーチャンダイザー)からセールスまで、すべて2人で行いました。オフィスもなければショールームもないというゼロからのスタートでしたが、その分つくり上げていく楽しさがありました。海外とのやり取りはすべて私が行い、日本へ卸す商品のサンプリング、プライスづけ、PL管理なども担当しました。二人三脚で頑張った結果、売り上げを順調に確保でき、メンバーも増え、とても手ごたえを感じることができました。産休・育休に入るまで3年半ほど携わりました。
子育てで得た気づきを仕事に活かし、自分自身も成長
― 復職後、仕事内容に変化はありましたか?
産休・育休前は約2か月に1度のペースで海外出張へ行っていたのですが、さすがに復職後は難しく、今後について会社と相談しました。その結果、国内出張なら何とか行けそうということで他ブランドのリテール部門に異動に。ただ、子どもが0歳のうちは結構大変な日々でした。18時までしか保育園に預けられなかったので、例えば大阪出張のときは始発の新幹線に乗って、なんとか仕事を済ませて帰りは16時台の新幹線に乗って保育園にお迎えに行く、という慌ただしさでしたから(苦笑)。子どもが1歳になれば保育園に19時まで預けられるので、当時は「とにかく1歳を超えてくれれば、もう少し余裕ができる!」と自分に言い聞かせていました。
― それは大変でしたね。そんな状況でも頑張れたのは、自分のキャリアは自分自身で築いていくという強いお気持ちがあったからでしょうか。
後から振り返るとそうかもしれません。でも当時はそこまで意識していなくて、ただ「仕事をしていたい」という気持ちだけ。あとは夫の助けがあったことも大きいです。夫は育児に協力的ですし、私が仕事をすることに対し全面的に応援してくれていたので。そういった部分は心の助けになりましたね。
― その後は、リテールビジネスのスキルを深めるため大手ラグジュアリーブランドへご転職。どんなお仕事をされていたのですか。
リテールマネージャーとして、主に店舗のチームづくりを行いました。私が担当したのは、25店舗・スタッフ300名のピープルマネジメント。前職では、13~14店舗・スタッフ100名ほどの担当だったので、それに比べると一気に規模が拡大しました。300名のスタッフに対し、どのようにすれば自分の声を届けられるのか。そこに苦労しましたね。結果、私が大事にしたのは各店舗へ出向き、店長やスタッフの顔を見て、名前を覚えて、話をすること。スタッフと信頼関係を結ぶためには、オフィスから発信しているだけではダメなのです。
― 現場主義で、動かれていたのですね。
オフィスでの仕事が中心ではありましたが、時間が空けばとにかく店舗へ行くようにしていました。これは今も変わりませんが、私は現場の空気感や現場でキラキラと輝いているスタッフを見るのが好き。ヒトや組織が成長していく過程を見るのも好きなのです。
― 前職では他にどのような気づきがありましたか。
仕事と子育てって少しリンクする部分があるなと感じました。子どもが生まれる前の私はどこか独りよがりで、“こうしてください”という話の仕方が多かった。ところが、家で言葉が簡単に通じない子どもを相手にするようになってからは、職場でも人に対して言い方や伝え方を特に工夫するようになりました。“こう言って通じなければ、ああ言ってみようか”という風に。そして、子どもは成長と共に少しずつ自立していきますよね。そんなところもまた、社員や組織の育成に通ずる部分があります。相互のコミュニケーションを通じて私自身すごく成長させてもらったと感じています。
“好き”という想いが、仕事をする上で大きなプラスに
― 大手ラグジュアリーブランドをご退職後は、しばらくお仕事をせずに過ごされていたそうですね。
ちょうど夫の仕事にも変化があったタイミングでしたし、子どもがまだ小学校低学年だったということもあって、いったん、私は仕事をストップして家族のサポートにまわろうと思ったのです。その期間は、自分自身も本当にやりたいことは何かゆっくりと考えることができました。半年ほど経ち、家庭も落ち着いてきた頃に私もそろそろまた働き始めたいと思うようになり、イソップへの入社を決めました。
― これまでとは異なる、スキンケア業界への転職をされた理由は?
大きな理由としては、「イソップ」は20年くらい愛用していたブランドだったからです。ブランドに対して“好き”という想いが根底にあると、より深い愛情を持って仕事に取り組めますし、自分がそのブランドの製品を使って感じた感動を他の誰かへ繋げていきたい、という気持ちになれます。そんな気持ちが生まれたのは今回が初めてで、新しい気づきでした。
― 「イソップ」の製品を20年も愛用されていたんですね。
そうなんです。私がこれまで使っていたのはハンドケア製品とボディケア製品が中心で、スキンケア製品は入社後に本格的に使い始め、その良さを日々実感しています。心地よい香りに包まれながら行う1日5分のスキンケアの時間は、お肌だけでなく心にもとても良い影響をもたらしてくれています。シンプルだけれど考え抜かれたイソップのスキンケアは、1日の始まりと終わりに、“自分をケアできた”という充足感を感じられるのです。イソップは、そういった気持ちも健康的な肌をつくるために大切だと考えるブランド。これから、より多くの方々にイソップの良さをお伝えしていきたいです。
― イソップで働く方々は、林さんのように“イソップが好き”という気持ちが高じて働いている方が多いのでしょうか。
イソップが好きな方はもちろん、トレンドを追わない独自の製品開発と、品質にこだわる本物志向であるというフィロソフィーに強く共感している方も多いです。また、イソップは創業当初からアートやデザイン、建築などから深い影響を受けています。このような分野に触れることができ、スタッフ自身の知識や生活を豊かにしてくれる世界観も、化粧品ブランドとしては珍しい特徴なので、魅力を感じている方もたくさんいると思います。アパレル、美容師、学校の先生などさまざまなバックグラウンドを持ったスタッフが働いています。
― 異業種、異業界からの転職でも働きやすい理由は何でしょうか。
トレーニング体制や環境が整っていて、学びの機会が多いからだと思います。リテールの仕事は、製品を介してお客様と対話を楽しめることが大切。そういった土台さえあれば、テクニック的な部分は会社がサポートできます。さらに、キャリアパスも多種多様。店頭での販売経験を経てからオフィスの職種にチャレンジ、という機会もあります。高いモチベーションがあり、学びたいという気持ちのある方にとってはチャンスがたくさんある職場だと思います。
― イソップの社風、組織の特徴についてはいかがでしょうか。
組織はとてもフラットだと思います。創業メンバーである現チーフカスタマーオフィサーも、世界各国の店舗を訪れてスタッフと日常的にコミュニケーションを取りますし、立場や部署間に垣根がほとんどなく、話をしやすい職場環境です。また、オフィスと店舗が分断されるのではなく、うまく連携が取れていると思います。だからギフト需要が高まる繁忙期にはリテール部門だけでなく、マーケティング部門やCS部門などのスタッフも店舗にヘルプで入ることも。日頃から、店舗を中心に物事を考える姿勢がありますね。
― ブランドにとって、店舗はなくてはならない大切な存在。それを体現した組織ですね。最後に、今後の展望とイソップが求める人物像についてお聞かせください。
イソップはいま成長段階にあり、これからさらに店舗を増やしていく予定です。そのため、次世代を担う人材の採用や育成に力を注いでいきたいと考えています。単なる販売のテクニックといった目先のことではなく、ブランドの深部にもっとアタッチするような、なぜ私たちがこの製品をこのマーケットで広めていきたいのかという根幹の部分についてしっかりと理解を深め合っていけるような人を求めています。最近は男性のお客様も増えてきているので、より親身になってお客様と対話できる男性スタッフも増やしていきたいです。イソップが好きな方、ブランドビジネスが好きな方、学びたい方、チャレンジしたい方……そんな方々と一緒に働ければうれしいです。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【NESTBOWL】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境