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コロナ禍でアパレル各社のEC売り上げは急拡大したが、消費者の店頭回帰の傾向が強まる中、EC売上が伸び悩んだり、マイナス成長に転じたりする企業も出てきた。一方、この3年間でEC利用が定着したことから、店舗スタッフがECチャネルのコンテンツ強化に協力したり、オンライン上で接客を行ったりと、働き方も変化してきた。コロナ後のアパレル業界で勝ち残るには何が必要なのか、先進企業の取り組みを見ていく。
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チャット接客で高い満足度
ジュンは、自社通販サイト「ジャドールジュンオンライン」の顧客体験をリアル店舗に近づける施策のひとつとしてチャット接客を強化しており、チャット利用者の満足度が高いという。
「JUNチャットサービス」はコロナ禍の早い段階でスタートした。サイトの画面右下に表示する「チャットスタッフに相談!」ボタンをクリックするとチャットスタッフが登場し、希望の商品名もしくは品番と相談内容を入力すると、スタッフがていねいに商品の詳細やサイズ感、コーディネートに関しての悩みに答えてくれる。
サイト内から情報を探し出し、利用者に適した案内を行うが、同社ではテキストだけでなく画像を付けて回答。その際、利用者がイメージしやすいように通販サイトの商品画像を切り抜いてコラージュする。骨格タイプやパーソナルカラーが分かる場合は、それぞれのタイプに合った商品を提案するという。
チャットサービスは、元ベテラン販売員を中心に、各ブランドの商品説明会や最新のトレンド研修を受けたスタッフがリアルタイムで対応するため、店舗スタッフから接客を受けているような感覚で利用できる。
顧客ごとにパーソナライズされたチャット接客により、昨年10月の満足度アンケート調査では、85%が「非常に満足」と回答したという。
チャットについては最初に導入したシステムから「チャネルトーク」に切り替え、LINE連携したことで、LINE公式アカウントに届くリアルタイムの問い合わせも「チャネルトーク」で管理できるようにした。
旧チャットシステムではボットをまったく使わずに人だけで運用していたが、現在はCS系の問い合わせはボットが対応し、商品に対する問い合わせはスタッフが回答する。
EC利用が定着する中、チャットでの問い合わせも増えているが、引き続きチャット接客の質と量を両立することで、他社ブランドや外部ECモールとの差別化を図る。
欠品アイテムの店舗出荷を開始
また、ジュンの取り組みとして注目を集めているのが店舗出荷サービスだ。
「ジャドールジュンオンライン」では、顧客の希望する商品がない場合、チャットスタッフに相談すると、在庫のある実店舗で商品を確保し、顧客の自宅に直接配送する「ラクトリ」サービスを21年10月から展開しているが、昨年10月からはこの運用をリアル店舗の欠品時にも広げた。
顧客が来店した店舗に在庫がなくても、倉庫や別の店舗に在庫があれば、そこからダイレクトに届ける。これまではリアル店舗の在庫をいったん倉庫に送ってから出荷していたが、送料も時間もかかるため、より早く、より安く届けるためには店舗出荷の運用が不可欠だった。
ジュンでは店頭欠品時に客注として別の店舗から動かす商品は年間22万点程度、約2億5000万円の経費を使っていた。
同社は約380店舗を構えているが、約230店舗で店舗出荷の運用を始めている。
加えて、「ジャドールジュンオンライン」では、気になる商品を店舗で試着できる「店舗試着取置きサービス」を実装する。3月初めから「ナージー」と「サロン アダム エ ロペ」「ジュンレッド」でテスト運用を開始。3月中には全ブランド、約230店舗に導入する予定だ。
当該サービスは、ECで決済が済んだ商品を希望する店舗に確保。実際の売り上げは試着予約を受けた店舗に計上する。同社では物流コストも上昇している中、基本的に決済されていない商品は移動させない方針という。
4割強の店舗が試着予約に対応
自社ECでの店舗試着予約などで先行しているのがオンワード樫山だ。
同社はOMO戦略を推進中で、自社通販サイト「オンワード・クローゼット」で取り扱うほぼすべての商品を実店舗に取り寄せて試着、購入ができるサービス「クリック&トライ」の対象店舗を広げている。
昨年3月に実施したサービスリニューアルでは、実店舗に取り寄せ可能なアイテムについては自社ECの商品詳細ページに「カートに入れる」ボタンと並んで「店舗試着」ボタンを表示できるようにした。これによって対象商品が分かりやすくなったのに加え、店舗スタッフの負荷も軽減した。
サービス利用者は、「店舗で試着ボタン」をクリック。試着希望店舗を選択して「店舗試着」ボタンを押し、申し込み内容を確認後に「店舗試着を申し込む」ボタンをクリックするだけで申し込みが完了する。
商品の準備ができると案内メールが届き、利用者は商品確保期間の7日間以内の都合の良いタイミングで来店すれば、試着、購入ができる。取り寄せた商品は店頭での決済となる。また、商品確保期間を過ぎるとキャンセル扱いとなる。
オンワード樫山では、昨年11月末時点で全体の41・5%に当たる330店舗に導入を拡大した。
同サービスの予約点数は昨年3~5月の2万5000点、6~8月の2万9000点に対し、9~11月は導入店舗の拡大や利用者の定着などもあって6万6000点に急増。サービス導入店舗の売り上げはコロナ前の2019年度水準に戻し、未導入店舗の売り上げを19ポイント上回るなど、店舗販売を大きく押し上げた。また、同サービス経由の売り上げが30%を占める店舗もあるという。
「クリック&トライ」は取り寄せた店舗で決済するため、EC売り上げにはカウントされないが、「オンワード・クローゼット」の閲覧数や、実店舗と自社ECの両チャネルを併用するクロスユース率が拡大することで、ECの成長にも貢献すると見ており、今後も同サービスの導入店舗を広げていく。
自社通販サイトをオープン化へ
アダストリアは、23年2月期~26年2月期までの4カ年の中期経営計画において、EC売上高を22年2月期の574億円から800億円への拡大を掲げる。目標達成に向けてはまず、自社通販サイト「ドットエスティ」の客数と購買回数のアップを図る考え。一環として、自社ECのオープン化に着手。他社ブランド製品の取り扱いによるカテゴリーの充実やライフスタイル提案の強化を進める。
オープン化に際しては、仕入れ販売ではなく、「ドットエスティ」に外部企業が出店するモール型ビジネスとして新たな収益モデルを目指す。
「ドットエスティ」には昨年1月以降、「サンマルクカフェ」や家電の「シロカ」や美容機器の「ヤーマン」、シンガポールのアパレルブランド「ラブボニート」、ビューティセレクトショップの「フルーツギャザリング」、タビオが展開する「靴下屋」が出店した。
アダストリアは自社ECのスナップコンテンツ「スタッフボード」で、人気スタッフが出店ブランドの商品の利用シーンなどを投稿し、ライフスタイルの中で魅力を伝えることで訴求力を高めている。
昨年11月に出店した「靴下屋」は好調なスタートを切り、初動では9割が自社商品との併売だった。また、初めての取り組みとして、「スタッフボード」を外部企業に開放し、画像を投稿してもらうことで相互送客にトライアルしている。
アダストリアでは、洋服の販売がメインの「ドットエスティ」内で食品や美容機器といったアパレル以外の商品を扱うことで、次の買い物の選択肢のひとつになり得ることから、アクティブ率の向上を期待している。
フォーエバー21はEC化率6割
また、アダストリアのライセンス事業として注目を集めているのが、子会社を通じて展開する米国発のカジュアルファッションブランド「フォーエバー21」の日本再上陸だ。
4月17日に大阪・ららぽーと門真店に常設の1号店を開設するが、これに先駆けて2月21日に「ドットエスティ」での取り扱いを開始したほか、3月17日には「ゾゾタウン」に出店するなど、ECチャネルでの販売にも注力する。
5年後には「フォーエバー21」で売上高100億円を計画。そのうちEC売上高は自社ECを軸に60億円を目指す。実店舗は1年間に3店舗ずつ出店し、5年後に15店舗体制を予定する。初年度の売上高は13億円(ECで10億円)、2年目が26億円(同16億円)、3年目が48億円(同28億円)、4年目は73億円(同44億円)を計画する。
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