ゲームは次世代におけるコミュニケーションの空間
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eスポーツの市場の盛況など、どんどん拡大するゲーム業界。若い世代のユーザーがゲーム空間に求めているのは、ゲームそのものだけではなく「交流の場」。パンデミックを経て、飛躍的にその「場」へのニーズが高まりました。今年2023年にはゲームの市場は2千億ドルを超えると予想されています。
オンラインで国境を問わず一瞬でエクスペリエンスをシェアできるゲーム環境。SNSとはまた別の、性別や体型など実際の自身の身体に捉われない、自由な自己表現ができる新しい形の交流の形が定着しつつあります。
ハイブランドとゲームとのコラボは実店舗依存脱却の糸口となるか?
ブランドとゲームの双方にとって、コラボの取り組みは新たな顧客層を開拓できるという大きなメリットがあります。加えてファッション業界側からすると実店舗の依存を軽減できる可能性があるという点も注目すべきポイントです。
パンデミック以降、ブランドの実店舗販売への依存からの脱却は大きな課題となっています。その点ゲームの世界におけるファッションのカルチャーの構築、ないしデジタルアイテムの販売は、店舗はおろかプロダクトを生産し保管するための実空間を必要としません。
ゲームの世界におけるファッションカルチャーの構築は、フィジカルな製品を抱えることによるコストや環境負荷を大幅に削減しながら、新たなる形のプロダクトの在り方を創るための取り組みでもあるのです。
前回は「Gran Turismo 7」× 「Dior」、「Louis Vuitton」 × 「League of Legends」、「Balenciaga」 × 「Fortnite」の3つのゲームについてご紹介しました。今回は2022年に発表され注目を集めたゲームをさらにご紹介していきます。
POLO RALPH LAUREN x FORTNITE
Polo Ralph Lauren(ポロ ラルフ ローレン)は2022年はじめに“phygital(フィジタル)”ファッションコレクションを発表しました。タイトルが表すのは、これがブランドにとって現実世界とデジタル空間をつなげる取り組みであるということ。
フォートナイトのゲーム内にラルフローレンらしいクラフトマンシップを細かく再現したシグネチャーを先行発表し、ゲーム内の服装を現実に再現したファッションアイテムものちの11月に販売。
また、ゲーム内に「ポロ スタジアムコレクション」を設置し、メタバース向けにアレンジされたアイテムをオンライン上で販売しました。
ローンチ時にはTwitchでライブ配信するなどゲームコミュニティに向けたイベントを開催するほか、ラグジュアリーブランドとして初めてフォートナイトにてプレイヤートーナメントを共同開催するなど、意欲的なアプローチを見せました。
フォートナイトは2021年にはBalenciagaとコラボしたことは以前にも記事で取り上げましたが、大人気ゲームであるだけに今後も新しいコラボの取り組みが期待できそうですね。
Burberry x Minecraft
Burberry(バーバリー)は「マイクラ」としておなじみ、Minecraft(マインクラフト)とスペシャルコラボレーションを発表し注目を集めました。
マインクラフト内に「Burberry: Freedom to Go Beyond」というアドベンチャーゲームを設置。コラボカプセルコレクションも発表し、物理とデジタル両面でバーバリーの世界を構築しました。
トーマス・バーバリーのTBモノグラムをかたどった迷路など、風景もストーリーラインもBurberryのために特別制作されたもの。自然の素晴らしさへの感謝の気持ちを表現した世界観が広がります。
オンラインショップではゲーム内のキャラクタースキンとして、アバターに着せることができるトレンチコートなどのカプセルコレクションが発売されました。
同時期にMicrosoft社製のゲーム機「XBOX」とも関連コラボを超展開。Burberry x Minecraftのための特別デザインのゲーム機を限定生産するなど、Burberryの本気度が伺えます。
Gucci x Roblox
GucciはNFTを使えるメタバースゲーム空間を構築できるオンラインゲームのプラットフォーム、Roblox(ロブロックス)内にバーチャルワールド「グッチタウン」をオープン。
ロブロックスは日本ではまだ認知度が高くはありませんが、マインクラフトと並び世界的に定評のあるオンラインゲームです。ユーザー自身がゲームを作成できるほか、独自のデジタル通貨「Robux」を使用することができます。
グッチタウンでは、GUCCIにインスパイアされた競技アリーナや、アートを制作できる「Creative Corner」を展開。バーチャル展示スペースでGUCCIのヴィンテージアイテムやコラボアイテムの新作を見せるほか、ゲーム内のショップでは最新のテクノロジーを用いたアバター用の服などのデジタルアイテムの販売も。
また、グッチタウンは仮想通貨「GG Gem」を得ることができるメタバース空間となっているのも特徴。通貨を用いてアイテムを購入できるだけでなく、ゲームをプレイすることで通貨を得ることもできる仕組みになっています。
バーチャルバッグは発売当初の価格からみるみる市場価値が上がり、今では現物のバッグよりはるかに高い値段で取引されているのだとか。
Nikeも2021にRoblox内にバーチャルワールド「NIKELAND」をオープンし、その存在をバーチャル空間で強くアピールすることに成功しています。
GUCCIは2021年にも、同Roblox内にフィレンツェで開催されたGUCCIの生誕100周年を記念する現実の展示「グッチ ガーデン」のバーチャルワールドを同時展開しました。このイベントで2週間で2000万人以上の訪問者を生み出すなど、精力的にバーチャル空間での取り組みを続けています。
BULGARI x ZEPETO
イタリアのジュエリーブランドBULGARI(ブルガリ)が、自分の思い描いたアバターを作れるアプリ、ZEPETO(ゼペット)で「BULGARI サンセット・イン・済州(チェジュ)島」をモチーフにした単独のバーチャルワールドを8月31日にオープンし、オフラインとメタバースの体験を同時に提供しました。
インスタグラムで話題のゼペットは、自分の思い描いたアバターを作れるアプリ。手持ちの写真と合成でき、インスタグラムとの親和性が極めて高いアプリです。
ゼペットで公開されたBULGARIのワールドは、実際に済州島で開催された「BULGARI サンセット・イン・済州(チェジュ)島」のポップアップストアとカフェをすべてバーチャルで体験することができるという内容。
ユーザーはゲームのクエストをクリアすることで、アバターが着用できるブルガリリゾートコレクションとジュエリーアイテムを受け取ることができるという内容。
BLACKPINKのLISAが、ブルガリワールドでバーチャルのライブイベントを開催したことでも大きく話題を集めました。
リアルとバーチャルの世界のシームレス化に向けて
どの取り組みもバーチャルな世界観とリアルな空間につながりを持たせるところに特徴が見られますね。
マインクラフトやRoblox(ロブロックス)など、プログラミングの知識を要するゲームをプレイすることはクリエイティブかつ論理的な思考力を学ぶことができるとされ、教育の現場でも取り入れられるなど、ますますゲーム業界の状況はポジティブに。
さらに、2022年6月17日には米Meta社がアバターのためのデジタルアパレルショップ「Meta Avatars Store」のローンチを発表。BalenciagaやTHOM BROWNE、PRADAも提携したデジタルウエアが登場しました(日本含むアジア太平洋諸国でのサービス開始は同年12月12日)。
アバターワードローブに対するニーズをはじめヴァーチャル空間を介した世界観は、今後もファッションなどあらゆる領域を横断しながら、つながり、拡張していくでしょう。
文:ミカタ エリ
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