Image by: FASHIONSNAP
資生堂が、今年からスタートする3ヶ年の中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を発表した。まずは、前期までで課題が残った、日本事業の成長性回復に取り組み、2023年から3年間の抜本的な改革により、2025年に同事業で500億円を超えるコア営業利益を実現する。また長期的な成長を目指し、3ヶ年累計1000億円超を追加投資する「ブランド」強化をはじめ、「イノベーション」、「人財」の3つ重点領域への投資を強化。同期間において持続的な売上成長と収益性を向上させるための改革を実行し、”Personal Skin Beauty & Wellness Company”の事業基盤を構築。コア営業利益率で2025年までに12%、2027年までに15%を目指す。
前期までの中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」では、スキンビューティーブランドの育成、デジタルを活用した事業モデルへの転換・組織構築、他社との協業によるイノベーション強化などを推進。パーソナルケア事業や「ベアミネラル(bareMinerals)」「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」「バクサム(BUXOM)」、ヘアのプロフェッショナル事業、「ドルチェ&ガッバーナ ビューティー(Dolce&Gabbana Beauty)」といったブランド譲渡や事業売却の痛みを伴う改革を進めてきた。一方で、那須工場、大阪茨城工場、福岡久留米工場の3つの国内新工場が竣工。安定的で持続的な生産体制を強化し、将来に備えた戦略投資も行った。
ADVERTISING
魚谷雅彦 代表取締役会長CEOは「計画していた構造改革は全てやり切った。欧米での収益改善を達成でき、スキンビューティの売上比率が7割まで拡大。ビルド・バック・ベターの体制を構築した」と振り返り、次の3ヶ年を「抜本的な経営改革の期間」と位置付けた。売上高では2023年は1兆円規模を目指し、2025年に2022年との比較で年平均成長率8%増、2027年に同6%増を目標に掲げる。コア営業利益率は2023年は同6%増、2025年に同12%増、2027年に同15%増を目指す。
具体的な投資強化として、ブランドに対しては1000億円超を投資。全地域での強化ブランドとして「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」「ナーズ(NARS)」「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」を据え、リニューアル後好調な「エリクシール(ELIXIR)」などアジア地域での成長が見込まれるブランド、欧州の売上をけん引するフレグランス、「バウム(BAUM)」や「エフェクティム(EFFECTIM)」「ウレ(Ulé)」といった地域特性にフォーカスした戦略ブランドに加え、メイクアップの開拓余地のあるメンズブランドなどを総合的に強化する。
イノベーション面では、売上高比率3%を研究開発費として拠出し、各地域の研究所に投資。昨年稼働した福岡久留米工場で導入した最先端のIoT技術やオペレーションの横展開も視野に入れているという。
人財では引き続き「ピープル・ファースト」の考えを推進。今秋、グローバルな人財開発センター「Shiseido Future University」を銀座に開設予定で、魚谷会長CEOが初代学長を務める。ダイバーシティ&インクルージョンを加速させ、日本国内で女性管理職比率を2030年よりも早期に50%達成を目指す。また、多様な人財の活躍と企業成長の関係を研究する「資生堂D&Iラボ」を発足し、2023年から本格的な実証研究に着手する。
さらにコスト構造の改革も実行。日本市場ではスキンビューティー売上比率拡大による収益性改善、サステナブルな社会に向けた返品・偏在在庫縮減、物流費見直し、グローバルシステム導入によるビジネス改革プロジェクト「FOCUS」の推進、人員体制の最適化検討に加える一方で、成長期待チャネルには投資を集中し、潜在顧客の獲得を目指す。藤原憲太郎 代表取締役社長COOは、「コスト構造改革は今後の持続的な成長ための最重要項目。抜本的な改革も視野に入れて、資生堂ジャパンの直川(社長CEO)と協力して進めていく」とコメントした。
中国においては「先が読みにくい」としながらも、これまでトラフィック創出や大型プロモーションに注力していたが、ブランド体験の強化やライン全体への理解促進、中国専用商品の開発、CRM強化などを推進。メディカルビューティや敏感肌対応、インナービューティといった新領域の展開にも着手する。米国ではナーズ、SHISEIDO、ドランク エレファントをコアブランドとして継続強化し、欧州ではウレや「ガリネー(Gallinée)」を活用した新スキンケア領域を開拓し、将来的にグローバルブランドへと育てる。
加えてサステナビリティ関連では、新たな取り組みとして、プラスチック製容器の新循環プロジェクト「BeauRing」の実証実験を開始。ポーラ・オルビスホールディングスの「ポーラ(POLA)」の参画が決定し、今後他社協業も強める考えだ。このほか、2025年までに全てのプラスチック製容器を100%サステナブルな仕様に切り替え、水消費量は2026年までに2014年比で40%削減などの目標も掲げる。
なお、同日発表した2022年12月期連結業績では、売上高が前期比5.7%増(実質ベースで同0.9%増)の1兆673億5500万円、コア営業利益が同20.6%増の513億4000万円、営業利益が同53.7%減の465億7200万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同27.1%減の342億200万円だった。国内化粧品市場は、行動制限の緩和や外出機会の増加により緩やかに回復。海外市場は、中国で上海や海南島を中心としたロックダウンによる影響を受け、厳しい市場環境が継続したが、欧米では経済活動の再会が本格化し、消費が回復基調となったことで化粧品市場も全カテゴリーで成長した。
2023年12月期連結業績は、売上高が前期比6.3%減の1兆円、コア営業利益が同16.9%増の600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同18.1%減の280億円を見込む。
ADVERTISING
TAGS
記事のタグ
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境