多彩な色や柄でウェアとのコーディネートがが楽しめる、ムーンバットのオリジナル「フワクール」
百貨店を主販路とする服飾雑貨メーカーがオリジナルブランドの強化を推し進めている。百貨店ではアイテム集積や平場でライセンスブランドを展開し、ブランドのファンやギフト需要に強い。商戦はコロナ禍による外出自粛などで苦戦していたが、今年は3年ぶりに行動制限が解除され、お出掛けや旅行などの人流増加が追い風となり、晴雨兼用傘や帽子が好調。売り上げを伸ばしている。しかし、地方百貨店の閉店など、売り場の減少傾向は変わらない。ライセンスブランドは引き続き重視しながらも、オリジナルブランドで独自の販路開拓や新規顧客獲得を狙うことで、企業基盤を再構築しようとしている。
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各社共通の戦略
傘やハンカチ、帽子など服飾雑貨のライセンスブランドは百貨店の服飾雑貨で主力商品として販売され、価格帯もオリジナルより高単価となる。ブランドのファンも多く、ブランドならではのカラーリングやデザイン性も消費者を引き付ける要因だ。オリジナルブランドは以前から企画、販売してきたが、百貨店のニーズや売り上げ規模からライセンス重視となっていた。だが、百貨店の売り場そのものが縮小していることで、新規販路開拓やニッチな商品を求める消費者の購買動向の変化に対応するため、オリジナル強化は各社の共通した戦略となっている。
最近のオリジナルブランドの売上高構成比はムーンバットが傘関連5%、スカーフなど首回り40%、帽子50%で、ブルーミング中西は約30%、オーロラ40%、川辺約18%。オーロラは10月末比較で前年比3ポイント向上し、川辺もオリジナルが2%増えている。各社ともまだライセンス比率が高いが、年々オリジナルの構成比を高めている。
ムーンバットの22年4~9月単体の百貨店売上高は、22億4300万円(前年同期比10%増)となったが、4期前との比較では情勢や施策などから約半減となっている。今期は市場の復調傾向や原材料高などによる商品価格アップを受けて、高単価販売に強い百貨店を強化した結果で、「基本戦略は百貨店比率を落としていき、直営店やEC販売の強化は変わらない」(中村卓司会長兼社長)。背景には昨年8月の三田阪急や今年6月の天満屋広島緑井店など地方百貨店の相次ぐ閉店がある。また、10月の小田急百貨店新宿店や来年1月の東急百貨店本店の営業終了も続く。都心部では再開発による営業再開があるが、「以前のような百貨店スタイルではない」こともあり、売り場確保の先行きは見通せない。改装でもライフスタイルやインテリアなど、これまでと違う業種の出店が増えている。
ニッチ市場に向けて
川辺は昨年、オリジナルで抗菌加工を施したバッグなどの「ワープ」やコーヒー愛好家に向けた「コーヒータイム・ウイズ・ヴォーン」など、4ブランドを相次いで立ち上げた。新規の雑貨ショップなどの販路拡大や期間限定店の出店に成果が見られる。また、00年からの「ナチュラルベーシック」は染色をしないカシミヤやシルクなど天然素材使いのスカーフやストールを販売。世の中がまだSDGs(持続可能な開発目標)に注力していない時期から継続的に企画し、22年度グッドデザイン賞を受賞するなど、明確なコンセプトのもとで拡販している。
ムーンバットはこれまでも多くのオリジナルを展開、今春からは日傘「グレイシー」を立ち上げて、春夏も秋冬物も好調だ。機能性に加えて、配色使いなどでファッションとの相性で選べる点が受けている。オーロラはファッションと機能を打ち出した「ビューランス」が人気で、23年春夏物からはさらに若返りを狙いリブランディングする。ブルーミング中西は商品開発プロジェクトを立ち上げ、特に若手社員による多くのアイデアを商品化、推し活グッズ「マイフェイブ」や「かぶるハンカチ」などが好評となっている。
ライセンスは企画に制限が多いため、「ニーズに応えた商品作りができない」ジレンマもある。オリジナルを強化することで、「自分の発想などが企画に反映され、お客様の好反応を見るとモチベーションも上がった」などの声を聞く。一方、オリジナルブランドは認知度の低さや売り上げ規模が小さいなどの課題もある。売り上げ規模が大きい百貨店販路では「まだライセンス商品が人気」だが、確固たる企業基盤作りにはオリジナルが欠かせなくなっている。
古川伸広=本社編集部レディス、服飾雑貨担当
(繊研新聞本紙22年12月5日付)
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