春節商戦に向けて受け入れ態勢を整える(松屋銀座本店免税カウンター)
百貨店のインバウンド(訪日外国人)需要が急浮上している。観光などで短期滞在する際の査証(ビザ)の免除や個人旅行解禁といった水際対策の緩和で、訪日客が戻ってきた。ただ、消費をけん引していた中国からの訪日客はまばらで、コロナ禍前の水準への回復はもう少し時間がかかりそうだ。
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11月の免税売上高は、大丸松坂屋百貨店が前年同月比7.4倍、三越伊勢丹が6.6倍、高島屋が4.2倍、そごう・西武が2倍だった。三越伊勢丹は19年比でも3%減の水準まで回復した。大都市圏の店舗を中心にビジネス客だけでなく、個人客の購入者が増えている。コロナ禍前の「19年対比で約1割減の水準まで戻した」(松屋銀座本店)という。
■円安で高額品動く
円安が追い風となり、ラグジュアリーブランドや宝飾品、時計など高額品を買い求める個人旅行客が急増した。伊勢丹新宿本店は11月の免税売上高が、ピークだった18年度の水準を上回った。香港、台湾、韓国など東アジアの顧客の買い上げが大幅に増えて、中国からの訪日客の落ち込みを補った。ラグジュアリーブランドや時計・宝飾品など高額品が売れており、衣料品でもモード系デザイナーブランドが大きく伸びた。国内客と同様に「ここにしかない商品を目的買いしている」(伊勢丹新宿本店)と限定・先行品の売れ行きが良い。
■中国からはまばら
22年度の免税売上高は三越伊勢丹ホールディングスが220億円を見込む。ピークだった18年度760億円の約3割の水準にとどまる。高島屋は上期(22年3~8月)に83億円の実績、下期に90億円、大丸松坂屋百貨店は上期に50億円、下期に120億円の見通し。
コロナ禍前の水準に復活するまでに至っていないのは、中国からの訪日客の消費が戻らず、効果が限定的なため。中国政府は、ゼロコロナ政策を緩和するにしても、当面は海外への渡航を制限し、国内の消費回復を最優先することが想定される。「コロナ前の水準に戻るのは23年度以降となるだろう」(高島屋)という。
一方で、需要のピークとなる春節(中華圏の旧正月、23年1月22日)商戦に向けて「受け入れ態勢をしっかり整える」(松屋銀座本店)という。免税カウンターの拡張のほか、訪日客向けの優待クーポンの導入が相次ぐ。三越伊勢丹は海外の富裕層からのニーズを掘り起こそうと、10月に海外外商の専門チームを立ち上げた。当面は「中国以外の顧客と個でつながる」戦略を強める考えだ。
(繊研新聞本紙22年12月9日付)
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