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【2022年ベストバイ】繊研新聞 小笠原拓郎が今年買って良かったモノ

Video by: FASHIONSNAP

Scye ハイゲージニット

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グレーのニット

小笠原:今年で言うと、機能的でクオリティコントロールできているものを良く買いました。この「サイ(Scye)」のセーターはすごく素材がいいんですよね。「エクストラファインウール」という素材を使用していて、メリノウールならではの高い保温力を備えています。

F:サイはこの企画では2018年以来の登場ですね。

小笠原:サイはパターンも優れていますから定期的に買います。あとロストバゲージでサイのシルクカシミヤのクルーネック2色と、細番手のニットがトランクと共に紛失してしまったので、今シーズン追加で購入してよかったなと(笑)。

F:ベーシックなデザインが多いサイですが、どんなアイテムと合わせているんですか?

小笠原:スーツの中にも着られるしジーンズでも合う。まあ何にでも合わせられますよね。

F:話は変わるんですが、そのスマホケース意外ですね(笑)。

ロッツォ・ハグベアのスマートフォン

夢の国で買ったスマートフォンケース

小笠原:これね(笑)。この間、娘と夢の国に行った時に買いました。ちょうどケースがバキバキになっていたから「では」という感じで。

F:スマホケースはファッションブランドで探したりはしない?

小笠原:探さないですね。いやだよ、ブランドロゴ全開のケースなんて(笑)。

F:確かに小笠原さんがロゴ全開だと嫌ですね(笑)。ちなみにこれは娘さんのセレクトですか?

小笠原:いや、自分で決めました。ディズニーのキャラクターの中でも色々あるじゃない?その中でも50オーバーのおじさんが持っても許されそうなやつはどれかと選んだものです。

F:ちなみにそのキャラ悪役ですが知ってますか?(笑)

小笠原:知ってる知ってる(笑)。

F:話を戻しますが、来年もサイのアイテムは購入する予定ですか?

小笠原:スーツを作りたいなと考えています。ミック・ジャガー(Mick Jagger)が結婚式で着ていたスリーピースがあるんですけど、形がすごくかっこいいんですね。1971年の話なんだけど、そのスーツがイヴ・サン=ローラン(Yves Saint-Laurent)だったのかトミー・ナッター(Tommy Nutter)という伝説のテーラーかどちらが作ったのかって論争がずっとあって。あ、ちなみにファッション業界にいるならトミー・ナッターのことは絶対知らないといけないと思う。で、トミー・ナッターのパートナーのカッターをやっていたエドワード・セクストン(Edward Sexton)が「あれは我々が作った」という風に近年言っているんだよね。サンローランだってその当時は言われていたんだけど、ここ最近はやっぱりトミー・ナッターだったんじゃないかと言われていて。ショルダーラインとか着丈のバランスが本当にかっこよくて、そのスーツを作りたいなとずっと思っているんです。それを宮ちゃん(サイのパタンナー宮原秀晃)もわかっているので、是非形にしたいなと。

インタビューに応える男性

F:宮原さんは写真を見ただけでパターンを引けちゃうんですかね?

小笠原:大体は引けると思いますよ。高い技術力を持っていますから。

F:ではそのスーツが来年この企画に出ることを楽しみにしています!

今年を振り返って

F:今年はコロナになって初めて海外コレクションに参加したそうですが、久しぶりに見てどうでしたか?

小笠原:先ほども少し話しましたが、コロナ禍ということもあって全体的に新しいものではなく継続的なアイテムを出すブランドが多かった印象です。でもその中でギャルソンも良かったですが、9月に見た「ザ・ロウ(THE ROW)」と「ジル サンダー(JIL SANDER)」は流石でしたね。両ブランドともテーラーリングという今のトレンドをきっちりと押さえながらも、別格のプロダクトクオリティを感じさせてくれました。 ジル サンダーはメンズとウィメンズの両方を見せたのですが、そこにはダイバーシティの要素もありマスキュリンの代名詞ともいえるテーラーリングを軸にしながら新しいエレガンスとノンシャランな抜け感が貫かれていました。

 ザ・ロウも同じく、テーラーリングが軸なのですが、ここのテーラーリングは本当にクオリティが高かった。そして袖付けの部分をカットして袖を外して着たり、ボタンを使ってシェイプを変えたりと、新しいアイデアにも満ちていた。美しいテーラーリングと白いコットンのハーフパンツの組み合わせが今でも目に焼き付いています。

F:改めてパリコレのラインナップを見てみると、日本のブランドが本当に増えたなという印象です。

小笠原:そうですね。素直に日本のデザイナーは頑張っていたと思います。キディルもそうだし、「サルバム(sulvam)」も「カラー(kolor)」も「ダブレット(doublet)」も「ターク(TAAKK)」も。特に今のパリのメンズは日本のブランドが支えている感がありますよね。日本のブランドが核だと思います。

インタビューに応える男性

F:面白いブランドはありましたか?

小笠原:この間思ったので言うとミラノの「マリアーノ(MAGLIANO)」はちょっと変わっているなって思いましたね。

F:イタリア人デザイナーのルカ・マリアーノ(Luca Magliano )が手掛けるブランドですね。

小笠原:昔のおじさんが穿くようなシルエットのパンツとかを出しているんだけど、そのバランスの感覚がちょっと変わっていて。変な毒気があるんですよ。それでこの人面白いなと思って、取り上げたいから写真を送ってと伝えたんですが全然送ってこない(笑)。

F:メディアあるあるですね(笑)。PRも入ってないんですかね?

小笠原:この間から日本のPRは長坂君(長坂啓太郎)のSakas PRになって、セールスはDiptricsがやることになったみたいです。Diptricsに「写真送ってよ」と言っても「全然マリアーノチームが捕まらないんです......」という感じで(笑)。

F:先ほどの中章さんの話にも通じるんですが、ラグジュアリーブランドのコングロマリット化が進んだため、LVMHなど資本力のある企業の存在感が日に日に強くなっています。業界として不健全な部分もあるのではないかなと。

小笠原:不健全なところは昔からありますからね。それこそ出禁にされたブランドもありますしね(笑)。でもこの間思ったのが、ラグジュアリーブランドの功罪というか、罪もあるけれど功績もあると思っていて。エルメスが京都でクラフトマンシップにフォーカスした「エルメス・イン・ザ・メイキング」展をやったでしょ。あとこの間「シャネル(CHANEL)」がアフリカでショーを開いたのを見ても思ったんだけど、やっぱりそういうラグジュアリーの代表格と言われるようなブランド、会社っていうのは自分たちのクリエイションを支える職人をちゃんと雇用して、技を後世に伝えていくための学校を作ったりといった投資をしていますよね。そういう形でクラフトマンシップを残そうという考えがあるわけです。

 一方でこの間、日本のものづくりのクオリティが落ちていっているというか。「もう高齢になったので廃業します」という工場があったりと、生産が難しくなってきている。あと今年の象徴的なことでもありますが、中国がゼロコロナ政策を堅持していたじゃないですか。その結果ロックダウンとなってしまった。そうすると中国で生産していたサンプルが送られてこないとか、納期に間に合わないみたいなことがいっぱい起こったんですよね。それで大手アパレルで中国生産を一部日本に戻す動きが結構あったんですが、その影響で日本の工場がパンクしてしまっている現状がある。パンクするとじゃあ工場は何を選ぶかというと、効率の良いものを選ぶんですよ。要は面倒臭い縫製仕様じゃなくて、簡単で工賃が高いものを選ぶ。なぜなら量をこなせて工賃が高ければその分売上は伸びるから。だからこだわったものづくりをしているデザイナーズブランドの服を縫う場所が圧迫されていっているんです。そういう視点を踏まえると、プロダクトクオリティを守るためにラグジュアリーの会社が先回りして、職人を守ろうとしているアクションは評価できると思うんですよ。

F:工場の話は確かにそうですね。今年は、国内デザイナーから工場に縫製を断られて困っていると相談されることが多かったです。

小笠原:問題は山積しています。工賃の問題、仕事量の問題、高齢化の問題、そして中国からの技能実習生が工場を支えていた部分は確かにあったんですが、それももう戻ってこないでしょうし。現場ではさまざまな問題が複合的に起こっているんですよね。

F:いくらデザイナーに才能があったとしても、新しいものが生み出せない国内環境になりはじめているのが今。

小笠原:加えて原料も高くなってきているので、今までと同じものを作ろうとしたとしても今までの価格では作れなくなっている。日本の賃金は上がっていないわけだから、値上げすれば良いという問題でもないですからね。

F:我々メディアが解決し得る問題でしょうか?

小笠原:どうなんだろう。難しいなっていうのが正直なところですかね。話はさっきのエルメスの展覧会に戻りますが、エルメスが高齢者しかいない過疎化した村に産業を持ち込んで、雇用を増やし、その結果若い職人たちの家族が移り住み、村が共同体として機能していくというようなストーリーの映像が流れていたんですよね。エルメスがクラフトマンシップというものを通じてやっていることってその規模感で、素直にすごいなと思うわけですよ。一方、日本だと誰がやるべきなんだろうと。日本にもそういう過疎化した村がいっぱいあるわけですが、経済産業省などの行政が旗を振るべきことなのか、それとも企業が先導的な役割を果たせるものなのか。難しいですよね。

F:日本にはラグジュアリーブランドはないですからね。先導的な役割を担う企業ってどこなんだろうと思ってしまいます。

小笠原:そうですね。ただ全てとは言いませんが日本の職人は優秀で、世界に売っていける日本の生地屋さんはあるんです。それこそラグジュアリーブランドが使っているけど、黒のギャバジンならここというのが日本にあるわけで。得意なことに特化していけるところは、まだまだ伸び代があると思います。

F:コロナ禍におけるファッションクリエイションのマンネリ化はデザイナーの才能のせいにしがちですが、あまりに近視眼的すぎるということですね。

小笠原:ただコロナも落ち着き始めたので、次の2023年秋冬コレクションからは変わると思いますよ。次変わらないとね、私多分耐えられないと思う(笑)。

F:期待ですね(笑)。あと2022年はファッション業界に大きなトピックがありました。日本だと三宅一生さん森英恵さんの訃報だったり。

小笠原:「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」と繊研新聞って結構激しいやりとりをした過去があるんですよ。それは私がまだ若い頃で直接関係してはないのだけれど、一生さんが怒って繊研新聞に招待状が来なくなって。

F:いわゆる出禁ですね。

小笠原:当時の私の先輩記者が書いたことだけど、要はパリコレクションに出ている以上、新しいデザインを追求するべきだろっていうものでした。何シーズンも「プリーツ プリーズ(PLEATS PLEASE)」を続けることに対しての問題提起だったんだけど、一生さんがそれに怒ってしまい抗議しにきて。今は招待状を送って頂けるので所謂過去の話ですが。プリーツ プリーズにはプロダクトデザインとファッションデザインの両面があると思うけれど、恐らくイッセイ ミヤケは例えば「リーバイス(Levi's®)」の501®のような普遍的なプロダクトデザインの一つとなり得ると考えてあれを作っていたと思う。一方でパリコレクションで発表するなら「ファッションデザインを追求しましょうよ」という違う意見も当然あって然るべき。だからプロダクトデザインとしての側面と、新しいファッションの在り方としてのファッションデザインの側面というのは、一生さんがお亡くなりになったとき、当時のことを思い出しながら考えたりしましたね。

F:海外で言うと「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」がブランド終了、「グッチ(GUCCI)」のアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)がクリエイティブ・ディレクターを退任などが大きなトピックスとしてありますね。

小笠原:ミケーレに関していうと、就任してからずっと自分のデザイン哲学とかフィロソフィーをショーで表現してきたわけだけど、服としての新しいデザインが毎シーズンボンボン出ていたかというとそうじゃない。ただその背景にある考え方、前回で言うと双子のモデルを使って多様性についてすごく考えさせられましたが、やっぱり背景にある今の時代に必要な哲学みたいなのを提示することは面白いけれど、服としての新しさに関しては彼の中でやりきったんだろうなとも思えて。このタイミングで退任したというのはそういうことなのかなと。

F:グッチは次誰がやるんですかね。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズも決まっていませんが。

小笠原:決まんないね。というか決められないんじゃないかな(笑)。とにかく、次のシーズンは何か面白いことが起きるだろうという期待があるので、皮切りとなる1月のメンズコレクションを楽しみに、年の瀬を過ごそうと思います。

小笠原拓郎
1966年愛知県生まれ。1992年にファッション業界紙の繊研新聞社に入社。1995年から欧州メンズコレクション、2002年から欧州、NYウィメンズコレクションの取材を担当し、20年以上にわたり世界中のファッションを取材執筆している。

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