Video by: FASHIONSNAP
今年のスニーカー市場を振り返って
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F:今年のスニーカー市場を振り返って頂きたいと思います。
小島:アディマティックがめちゃめちゃ盛り上がったんですが、正直少し売りすぎた感もあります。そもそも一般層まで届かない靴だと思っているので、好きな人たち向けに長く少量ずつ売っていくビジネスが正しいんだとは思うんです。一年間売って、お休みして5年後くらいにもう一度売り始めるみたいな。でもメーカーさんとしては開発に費用がかかるので、どこかで巻き取らないといけないのでたくさんモデルを作るのもわからなくもないんですが。
F:アディマティックとエア フォース 1が目立っていた印象なので、シルエットとしてはボテっとしたボリュームのあるモデルが人気だった?
小島:古着人気と相まって人気でしたね。アトモスとしては3月にアディマティックを売り始めて、そこからエア フォース 1に流れていった形ですね。ダンクやエア ジョーダン 1も人気だったので、改めて振り返るとバッシュイヤーだったと言ってもいいかもしれません。
F:バッシュ人気は3年くらい続いていますね。
小島:ランニングシューズにも期待したいんですが、ライフスタイルモデルで新しいイノベーションが生まれていないので。新しいトピックとしては、テディによるニューバランスで、違った角度からスニーカーを展開して成功している。ニューバランスが面白いのが、ナイキと争っているイメージがあまりないこと。ナイキとアディダスは、起用するアーティストを見ても、ナイキのトラヴィス・スコット(Travis Scott)とアディダスのYe(カニエ・ウェストから改名)など同じ方向性だと感じますよね。でもニューバランスは、テディやサレへ・ベンバリー(Selehe Bembury)、ジョウンド(JJJJound)、ジョー・フレッシュグッズ(Joe Freshgoods)などもっとファッション層に寄ったアーティストを起用しているので、ジャンルが違うように見えるんですよ。独自の路線からシェアを取っていっていて、Made in U.S.A.のコレクターがちらほら出てきていますが、コレクティブなブランドとしても認識され始めています。コレクティブなブランドというのがスニーカー市場では重要で、そうでないと何足も買ってもらうことが難しいんですよ。1足あれば充分と思われるのではなくて、色が違うだけでも欲しくなってしまう魅力があるかないかが重要だなと。
F:今年はアディダスとYeによる「イージー(YEEZY)」の生産終了がアナウンスされるというビッグニュースもありました。これによってスニーカー業界のパワーバランスが変わることもあり得ますか?
小島:変わると思いますよ。ナイキとアディダスの二大巨頭というのがありましたが、イージーの生産終了によってアディダスは今イレギュラー対応中で難しい状態ですので、ニューバランスを含めた他社はチャンスだと思っているでしょう。イージーも発売する予定だった新モデルもあると思うので、それをどうするかですよね。
F:Yeの名前なしで販売もできるんですかね?
小島:イージーを買っていた層は、Yeが手掛けていたから買っていた人が多いと思います。そうすると、Yeが手掛けていないイージーっぽいスニーカーって、別物扱いになるのではないかなと。初めのうちは話題になって売れるかもしれませんが、モラル的な問題もありますし。結局は誰が手掛けているかが重要なのかとおもいます。あくまで個人的な見解ですが。
そう考えると、「ステューシー(STÜSSY)」だったり、「シュプリーム(Supreme)」は今年トレマイン・エモリー(Tremaine Emory)がクリエイティブディレクターに就任しましたが、ああいった実態があるようでないというか、個人が目立ちすぎていないブランドのほうが色々と上手だなと思ってしまいます。ここ数年はシカゴブームと言われ、Yeや故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)を中心に業界が回っていましたが、現在は空席になってしまっているので新しい人たちが出てくればネクストトレンドとして市場を席巻していくのかなと。
今後のスニーカー市場はどうなるか?
F:シカゴブームの次として、「アシックス スポーツスタイル(ASICS SportStyle)」と協業しているキコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)や、ナイキとコラボしている「ジャックムス(Jacquemus)」などヨーロッパのデザイナーによるスニーカーがさらに注目を集める可能性もあると思いますか?
小島:ヨーロッパの流れは面白いんですが、ヨーロッパの文化とアジアの文化はマス層までマッチしないんですよね。アジアはどうしてもアメリカの文化の影響が強いと思います。
個人的には中国で好調の「リーニン(李寧)」や「アンタ(安踏)」。 日本発の「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」 や「グラウンズ(grounds)」などのブランドも推しています。アジア発のブランドが世界にもっともっと出ていくと面白くなると思いますし、ヨーロッパやアメリカの市場もアジアのマーケットには注目しているので、ネクストマーケットとして中国の次は東南アジアに出店する企業が多いので可能性は大いにあるのではないでしょうか。東南アジアのストリートブランドも勢いがありますしね。
F:2023年注目しているアイテムは?
小島:やはりテック系のスニーカーですかね。あとはメーカーさん各社でアディマティックのような掘り起こし企画をやらせてほしいです。効率は悪いんですが、非効率な物の方が話題になるんですよ。メーカーさん主導で一方的に提案するのではなく、お客さん主導の商品企画というのを考えていきたい。バッシュのコート系スニーカーは人気モデルの数からどうしてもナイキが強すぎるので、他のメーカーさんが戦うには掘り起こし企画が重要になってくると思うんですけどね。
F:「adidas会」の派生として「ニューバランス会」や「アシックス会」なども開催していましたが、「〇〇会」は今後も行っていく?
小島:メーカーさんとタイミングがあえばやっていきたいですね。「〇〇会」を開くと、そのブランドのアイテムをみんな履いてくるので、新鮮な空気感を体験できると思うんです。
1年前くらいに知り合いと集まると皆んなニューバランスを履いているという状況だったんですが、周りが履いていて目にする機会が多いと格好良く見えてきますし、口コミで広まる良いカルチャーの作り方だと思います。メーカーさんが推したい商品をインフルエンサーにシーディングして広めていくのも良いと思いますが、メーカーさんが意図しないトレンドの発生箇所として「〇〇会」が役立てばなと。好調な「アークテリクス(ARC'TERYX)」や「サロモン(SALOMON)」はシーディングをしているイメージがないですし、口コミから広まっていった良い例だと思いますので参考にしていきたいです。
F:スニーカー市場は今後も拡大していくと思いますか?
小島:「スニーカー業界は停滞してブームが終わる」なんてことも言われましたが、2022年はインバウンドが期待できない中でも売上が伸びましたし、まだまだ好調です。インバウンドが戻ってきて表参道や心斎橋の売上が驚異的に上がり、「こんなに売れるんだ」という状況でもありますし、来年も楽しみです。
F:最後に来年の目標を教えてください。
小島:日々同じこと、日々新しいことをやっていきます。
F:創設者の本明秀文さんが商売をする上で大事にしているという言葉ですね。
小島:うちの社訓で、DNAとして刻まれています。驕らずに毎日同じことをやって、新しいことを探す。良い意味でも悪い意味でもアトモスは常に“何かをやっている”と話題性があるショップだと思っているので、売却から1年が経ちましたが僕らが20年以上続けてきたスタイルは変えずに頑張っていきます。
■【スニーカートップセラーに聞く-2022-】
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前編:atmos 小島奉文とmita sneakers 国井栄之が選ぶ今年のベストスニーカー5選
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