2022年もあとわずか。先日、「SHIBUYA109lab.トレンド大賞2022」を発表しました。「ファッション部門」や「カフェ・グルメ部門」をはじめとした全9部門を設け、シブヤ109ラボ独自ネットワークに所属するアラウンド20(15~24歳)564人の女性を対象にアンケートを実施。トレンド大賞の結果からは、その年の若者の消費の傾向が見えてきます。
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お出かけ消費が復活
特に印象的だったのは、お出かけにまつわるトレンドが復活したことです。昨年はコロナ禍の影響も大きく、トレンドも全体的に慎ましく、家で手作りするものや、クローズドな環境で楽しまれる消費が特徴でした。これに対して今年のトレンドは、ここ数年思うように楽しめなかったお出かけのための消費の復活がみられています。
たとえば、「コスメ・スキンケア部門」では、昨年はスキンケアアイテムが中心でしたが、今年はメイクやヘアケアアイテムが多くランクインしました。また、「体験部門」のノミネート項目まで読み込むと、「花火大会」や「屋形船」など、昔から楽しまれているイベントも挙げられています。彼らがコロナ禍で抑圧されていた外出をどれだけ待ち望んでいたのかが伝わってきて、ぐっとくるものがありました。
彼らの行動範囲は広がったものの、深く狭いコミュニティーを重視する傾向は、昨年と変わらないポイントです。コロナ禍を経てコミュニティーに対する考え方が変化したことで、仲の良い友達との時間を優先する実態が多くみられています。
そのため、トレンドにおいても、浅く広く同世代と共有するよりも、深く狭いコミュニティー内で楽しめるものを重視しています。
ストリートから量産系へ
共通の関心事やカルチャー、好きな世界観を持つ者同士で構成されるゆるいコミュニティーである〝界隈(かいわい)〟ごとに異なるトレンドが存在し、一つの界隈で熱量が高く、トレンドになったものが他の〝界隈〟に伝播(でんぱ)し、大きなムーブメントとなるのがZ世代のトレンドの生まれ方の特徴です。
その象徴がファッション部門の「アームカバー」です。アームカバーは「Y2Kスタイル」には欠かせないアイテムとして、最初はストリート界隈で取り入れられていました。その後、夏ごろからレース素材やメッシュ素材のアイテムが登場したことで、「量産系」と呼ばれるガーリーなファッションテイストにも取り入れやすくなり、アームカバーを楽しむ〝界隈〟が広がったのです。社会の価値観が細分化多様化し、「マス」がなくなった今、まずは小さいけれど熱量の高い特定の〝界隈〟を抑えることが、大きなトレンドの創出につながります。
●長田麻衣(おさだ・まい) シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標は若者のリアルをテーマにした書籍を出版すること。
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