■ツイッター、フェイスブックを運営するメタに続き、アマゾンも大量解雇する計画が報じられた。景気後退懸念が強まる中で先週、明暗を分けた大手チェーンストアの決算が発表された。
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チェーンストア最大手のウォルマートが15日に発表した第3四半期(8~10月期)では既存店・売上高前年同期比が市場予想を上回る8.2%の上昇となった。
通期見通しも上方修正したこともあり、その日の同社の株価は前日の138.37ドルから147.60ドルと6.7%も上昇した。
医療用鎮痛薬オピオイド訴訟に絡む和解金関連費用として33億ドルを計上し赤字決算となったもののウォルマートの株価は1日で5%以上も上昇した。
一方、ターゲットが16日に発表した第3四半期(8~10月期)では既存店ベースが2.7%の増加になった。
年末商戦に見込まれる大幅な値下げや店舗で盗難が相次いでいることなどを挙げ、増加していることなど第4四半期の営業利益率予想も約半分の水準に引き下げた。
これでターゲットの株価は決算発表前日の179.57ドルから155.47ドルと13.4%も落ち込んだ。決算発表時には一時的に約17%も暴落していたのだ。
ウォルマートの店舗数は国内に4,700ヶ所以上あり、ターゲットは1900店以上と両社には大きな開きがあるため単純には比較できない。
急激なインフレが経済を後退させている局面では、ウォルマートとターゲットの商品構成の違いで決算の成否を分けたといえる。
ウォルマートの売上に占める食品売上は56%も占める。ターゲットのそれは20%程度となる。節約志向となった消費者がウォルマートに殺到し、生鮮品等を含む食料品を買い漁っていることが読み取れる。
また客層の違いも景気後退前に両社を分けたとも言えるだろう。調査会社グローバルデータによるとウォルマート客の世帯平均年収は62,000ドルとなり、ターゲットは79,000ドルと見ている。
ウォルマートによると年収10万ドル以上の顧客のが75%増加したとしており、トレードダウンにより富裕層が買い物に来る傾向となっている。
見方を変えれば経済の冷え込みを前にしてターゲット客がウォルマートにやってきているのだ。
グローバルデータによるとパンデミック以前、ウォルマートでの衝動購入は全体の12%に対してターゲットでは21%に達している。
リセッション前になれば財布の紐は固くなりターゲットでの衝動が少なくなり、ウォルマートより決算が影響を受けやすくなる。
IT大手が世界的大流行中に人員採用を進めすぎたようにターゲットも若干、プライベートブランドを拡大しすぎたかもしれない。
Eコマースで急進させるためターゲットでしか買えないプライベートブランド(PB)を増やしたのだ。
ターゲットのPBには食品の「グッド&ギャザー(Good & Gather)」、子供服の「キャット&ジャック(Cat & Jack)」、ベビーブランドの「クラウド・アイランド(Cloud Island)」、レディースの「ア・ニュー・デー(A New Day)」、アクティブウェアPB「ジョイラボ(JoyLab)」などをローンチした。
家具カテゴリーでも最小限(ミニマル)の物で暮らすミニマリストに向けたホームブランド「メイド・バイ・デザイン(Made by Design)」やエスニック・ヒュージョン系ホームPB「オパールハウス(Opalhouse)」、1950年代~1960年代にインスパイアされたホームファーニッシングPB「プロジェクト62(Project 62)」などもある。
収納PBの「ブライトルーム(Brightroom)」、保存料などの添加物を含まないペットフードPB「カインドフル(Kindfull)」もある。
また巣ごもり需要でスポーツウェアやヨガウェアの売上が伸び、ローンチから1年で10億ドルビジネスに成長したフラッグシップでアスレジェー・ブランドの「オール・イン・モーション(All in Motion)」もある。
キャット&ジャックやグッド&ギャザー、パーソナルケア&ビューティ・ブランドの「アップ&アップ(Up&Up)」、家具を含むホームファーニッシング・ブランドの「スレスホールド(Threshold)」は年間20億ドル以上を稼ぎ出す旗艦ブランドになっているのだ。
洗練されたデザイン性などが寄与し、PBの売上高は前年比で18%の増加となっていた。オリジナルブランドを2年前の43件から、実に50件近くにも増やしたことで景気低迷前には重荷になっているのだ。
ターゲットはここ数年、優良ブランドの誘致による店舗内店舗も行っていた。ウォルト・ディズニーと提携した「ディズニーストア・アット・ターゲット(Disney store at Target)」を2年前から導入し、計画ではすでに65ヶ所で営業。
750平方フィート(約20坪)となるミニ・ディズニーストアはターゲットの子供服や玩具売場の近くに設置している。アイテム数は450アイテムで約100品目はディズニーストア専売商品となるのだ。
価格帯は2~200ドルで大半の商品は20ドル以下となっている。
アップルのショップ・イン・ショップと同様にディズニーストアも拡大している。全米に1,000店舗以上を展開するコスメ専門チェーンのアルタビューティー(Ulta Beauty)と提携したショップ・イン・ショップを年内中に250ヶ所追加ともある。
アルタビューティのショップ・イン・ショップを最大800ヶ所を目指して拡大中だ。40年ぶりのインフレとなっている中、自分で自由に使える手取り収入の可処分所得も目減り中ではショップ・イン・ショップでの買い物の少なくなるのだ。
支出のプライオリティが変化する現在、ターゲットにとっては難しい舵取りとなっているのだ。
トップ画像:ウォルマート・ネイバーフッドマーケット。ネットスーパーでピッカーが忙しく生鮮品をピッキングしていた。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤は流通コンサルタントでもあり、日常的にチェーンストア等で買い物をする生活者でもあります。生活してみないことには、わからないこともあります。カーブサイド・ピックアップもその一つです。微妙なことですがウォルマートのネットスーパーが以前に比べて盛況になっていることもわかります。なぜそう思うのかというとピッカーが増えている以前にちょっと不便に思えるからです。実際に注文しようとするとこれまでは当日の結構はやい時間帯でも受け取りができました。2~3時間も遅くなっているのです。当社の流通DX&オムニチャネル・ワークショップではネットスーパー注文をします。朝講を使って午前9時までにタブレットから生鮮品などを注文し、その日の正午ぐらいには受け取れていました。今では午後2時以降となっています。感謝祭前ということもあるかもしれませんが、それにしてもウォルマートのネットスーパーは繁盛している印象です。ウォルマートの決算では食品が牽引し富裕層来店の客層トレードダウンが起きています。
ターゲット客がウォルマートのネットスーパーで買い物しているのでしょう。カーブサイド・ピックアップでは店内に入ることもないので、客層を嫌う人も買い物できますから...
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