消費者庁の「ステルスマーケティング検討会」は、景品表示法の指定告示(5条3号)で、ステルスマーケティング(ステマ)を規制する方針で概ね意見が一致した。さまざまな類型があるステマを告示で包括的に規制しつつ、運用基準で問題事例を具体的に示し、事業者の予見可能性を確保する。法執行では、景表法第29条の調査権限(報告徴収、立入検査)を有効活用することで実態把握に努め、実効性を確保する。
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現行法でもステマにより行われた表示が「優良・有利誤認」(5条1号、同2号)にあたる場合、広告主を対象に規制できる。ただ、広告であることを”隠す行為”自体は規制できない。指定告示は、「優良・有利誤認」にあたらないものの、消費者に誤認を生じさせる表示を規制できる。
例えば「原産国表示」はイタリア製をフランス製と偽る表示を優良性を評価せず規制できる。17年、玩具販売のボーネルンドが実際は中国製であるにもかかわらず、製造国と異なる国名や国旗を表示して処分を受けた。
ステマには、事業者自身が第三者を装う「なりすまし型」、第三者への利益提供を通じて表示させる「利益提供秘匿型」がある。形態も不正レビューやインフルエンサー投稿、アフィリエイト広告などさまざまだ。各手法の問題の背景や取引関係が異なることから、これを広く包含する形で告示による規制を行う。
一方、運用基準で問題事例等を具体的に示し事業者の予見可能性を確保する。また、技術進展に伴う新たな手法の台頭を受けて後追いにならず迅速に追加・修正を行いやすい建付けにする。
運用基準では、「広告である旨や関係性の明示」についても示すとみられる。これについては、「広告」等と一律で特定の文言を指定する意見と、一定の幅を持たせるべきとの意見が分かれている。
指定告示とした場合、課徴金の対象にならない。制裁効果が強すぎると情報発信を委縮させ、結果的に消費者が有益な情報も得られなくなるとの考えから、将来的な課題とする方針。
また、調査においては、「優良誤認」を対象とする不実証広告規制も適用外になる。法執行の実効性確保では、広告主だけでなく、広告代理店やインフルエンサーなど関係者を含め調査が行える景表法第29条の調査権限を活用することで実態把握を進める考え。虚偽報告や調査拒否は、1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金など罰則規定がある。
このほか、官民連携の体制構築による対応、消費者からの相談・申告窓口の設置により実効性確保を求める意見もあった。
ただ、ステマ規制の立法根拠は、これを題材とした学術研究による問題点の指摘、インフルエンサーの5割超が「悪いこと」と認識しているなどとする消費者庁調査にとどまる。
問題事例は、アクガレージとアシストに対する措置命令(昨年11月)など現行の「優良誤認」で処理が可能なもので、”広告であることを隠すこと”自体を対象にした実際の被害や問題の把握は進んでいない。
委員からも「広告を隠す行為自体を問題として規制することに繰り返し言及しているが、米国の規制では『商品に対するポジティブなメッセージを広告でないかのように装い発信することで消費者の合理的選択を阻害する』ことが強調されている。規制根拠をどのような観点から把握するか検討が必要」と指摘された。
「広告主と受託者の関係性の明示」についても、これを隠すことを規制する場合、景表法が不当表示として規制する「商品・役務に関する事項」に該当するか、消費者庁に説明を求める指摘もあった。
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