写真:左からオンワードホールディングス、TSIホールディングス、三陽商会の本社ビル
かつては5大大手総合アパレルと呼ばれ、百貨店へのアパレル卸しを中核事業にしてきたアパレルメーカーも、レナウンが2020年に消滅し、東京スタイルもサンエーインターナショナル(現TSIホールディングス)との経営統合を経て消滅し、ルックホールディングス(旧レナウンルック)もインポーター&アパレルへの業態転換が進んでいて、現在は2月決算の3社だけになってしまった。その3社の第2四半期決算(2022年3月1日〜2022年8月31日)が出揃った。
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まず最大手のオンワードホールディングスから。
・売上高:821億6600万円(+1.7%)
・営業利益:1億9300万円(前年−32億9480万円)
・経常利益:6億5400万円(前年−28億6200万円)
・親会社株主に帰属する四半期純利益:4億7600万円(−93.6%)
親会社株主に帰属する四半期純利益が大幅に減少しているのは、前年に固定資産売却益が170億89000万円あったためだ。本業に関してはやっと「どん底」から脱出したという印象だ。通期の営業利益予想は41億円、経常利益は43億円という水準。1738億円という売上高予想に対して、売上高営業利益水準はわずか2.3%という水準だ。とは言え、この41億円という営業利益も簡単に達成できる数字ではない。「寒い冬」を前提にした秋冬商戦の活況は期待できるが、インバウンド需要は全く影響がないので、コロナ禍再拡大などということになればすぐに吹っ飛んでしまう水準の利益であり予断は許されない。かつて同社の経営陣は「年商売上高2000億円&営業利益100億円が最低目標」と言っていたものだが、営業利益100億円の大台に乗る日は来るのだろうか。
TSIホールディングスの第2四半期決算は:
・売上高:720億8700万円(+11.3%)
・営業利益:5億8800万円(−48.1%)
・経常利益:18億9200万円(−5.5%)
・親会社株主に帰属する四半期純利益:(+19.0%)
利益はいずれも前年を下回っているが、期初に予想した営業利益−9億8500万円、経常利益−5億2000万円、親会社株主に帰属する四半期純利益−2億4000万円を大きく上回る数字だ。上野商会の吸収合併の完了、今年9月の本社移転などの経費増を予想して第2四半期の赤字予想を行っていたのだが、予想を上回る好業績だったために前年には及ばなかったものの黒字確保。これにより第2四半期発表と同時に前期決算及び第1四半期発表時の通期業績予想の上方修正を行った。
・売上高:1573億5000万円→1540億円
・営業利益:15億→18億円
・経常利益:24億→33億円
・親会社株主に帰属する四半期純利益:15億円→24億円
大手3社の中では、百貨店売上高比率は9.8%とダントツに小さく、EC売上高比率は28.0%(いずれも2022年2月期)、とダントツに高いために、コロナ禍によるどん底からの回復が最も早かったのが同社だ。最大手オンワードホールディングスを射程に入れているであろう。低次元の争いではあるが、両社の首位争いが注目される。
三陽商会の第2四半期決算は依然として赤字が続いた。
・売上高:254億6400万円(収益認識に関する会計変更のため前と比較できず。ちなみに前年売上高は164億3600万円)
・営業利益:−3億1700万円(前年−20億3300万円)
・経常利益:−1億4100万円(同−18億7600万円)
・親会社株主に帰属する四半期純利益:−2億4600万円(同−19億1000万円)
しかし、この決算発表の翌日10月7日に株価は上昇して今年の年初来高値である1114円をマークしているのだ。なぜかと言えば、この決算発表時に期末業績の上方修正(前期決算発表時及び第1四半期決算発表時の業績予想は同じ)を行ったからだ。それによると、
・売上高:560億円→566億円
・営業利益:12億円→16億円
・経常利益:11億4000万円→17億5000万円
・親会社株主に帰属する四半期純利益:9億円→14億4000万円
・配当:40円→50円
わずかな上方修正と増配であって、大騒ぎするようなことではない。むしろ第2四半期でも「公約」している黒字化がなされていないことを失望すべきだと思うのだが、この決算発表前日の10月5日に発表された同社の9月店頭発売実績において、全社ベースで前年比+28%の好調ぶりが評価されたのではないだろうか。前年比−21%のセレクト業態「ラブレス(LOVELESS)」を除いて全てのブランド、全てのチャネルでプラスをマーク。とくに「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」の同+52%、「マッキントッシュ フィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」の同+36%、百貨店チャネルの同+31%が際立った。
いずれにしても、今期7期連続営業赤字なら大江伸治社長の進退問題になるだろう。どんなことをしてでも今期の黒字は達成しなければならない。
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