デフレで小売価格が上がらず、炸裂な価格競争と上がらない年収を嘆いて「デフレスパイラルの元凶は『ユニクロ(UNIQLO)』にあり」と叫ぶ経済学者(同志社大学大学院・浜矩子教授)がいたが、インフレになったらなったで、「生活が苦しい」と悲鳴をあげるのだから、経済政策というのはなんとも難しいものだ。いまや日本のアパレル市場(9兆円)の10%を占める存在である「ユニクロ」は、商品数の約20%を値上げする。主力のフリースは1990円から2990円へ50%、また「ウルトラライトダウン」は5990円から6990円へ16.7%それぞれ値上げする。これでも買ってくれるという自信があるのだろう。さすがにトップブランドである。
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ところで、この円安が原因の値上げはどこまで行くのだろうか。例えば「ユニクロ」製品の80%が生産されている中国では1元=15円(2020年7月31日)だったものが現在1元=20円(2022年9月13日)。単純にこの中国元のレートだけでも13.3%の上昇ということになる。中国の工場から日本に入ってくるアパレル製品はこの円と中国元のレートだけで13.3%仕入値が上昇していることになる。これに加えてポリエステル製品なら原油価格、コットン製品ならその綿花の価格上昇が加味される。例えば原油価格はさまざまな指標があるが2020年4月には1バーレル16ドル〜23ドルが、2022年9月には1バーレル114ドル〜120ドルでこの間は一貫して上昇している。簡単に言って8倍程度になっている。綿花相場は2020年4月当時1kg=1.40ドルだったものが現在1kg=2.74ドルとほぼ2倍になっている。現在のアパレル価格の20%程度の上昇は当然と言っていい。しかし、消費者はその値段で買ってくれるのかという不安は残る。
問題はこれからだろう。まず原油と綿花高騰の原因となったロシアのウクライナ侵攻は長期化が確実であと1〜2年はこの状況が続きそうで、原油と綿花は高止まりが続いていくだろう。
一方、円安については、日銀の金利政策が(黒田東彦総裁の任期は2023年4月8日まで)現在のゼロ金利政策を続けている限りでは、景気浮揚の策で金利引き下げを8月22日に発表した中国を除けば、欧米の中央銀行は基本的にインフレ抑制のための金利引き上げ傾向にあるので、少なくともドル円、ドルユーロに関しては黒田退任まではもう少し円安が進むのではないだろうか。一部投資機関では1ドル=150円の予想が出始めているが、まんざら大ボラでもなさそうだ。FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ抑制のためにもう一段の金利引き上げを考えているとすれば、これは1ドル=150円に加えて日米の株バブルが弾けるということもあり得そうではある。
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