レッドソールで知られるラグジュアリーブランド「クリスチャン ルブタン」。2022年4月からクリスチャン ルブタン ジャパンのGeneral Managerを務めるフレデリック ジェダさんは、カルティエなどラグジュアリーブランドで要職を歴任され、「新たな挑戦ができる」と感じてクリスチャン ルブタンに入社したといいます。フレデリックさんは会社のどういったところに、チャレンジ意欲がわいたのか。これからどんな企業にしていこうと考えているのか。今の想いを伺いました。
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フレデリック ジェダさん/株式会社クリスチャン ルブタン ジャパン General Manager
2000年に来日。リシュモン・ジャパン(カルティエ)のトラベル リテール マネージャー、ラ・メゾン・デュ・ショコラ・ジャポンのジャパンディレクター、クリストフル ジャパン代表取締役社長を経て、2022年4月から現職に就任。
成長を続けて規模は大きくなりながらも、ファミリー感のある企業風土に魅力を感じた
― まず、フレデリック ジェダさんのこれまでのキャリアについてお伺いできますか?
私は2000年に留学生として来日しました。その後、幸運なことにカルティエで仕事を見つけて、あっという間に時間が経ち、気づいたら10年、20年と日本で仕事をしています。カルティエでは約9年在籍し、主にMDとマーケティング、リテールを担当しました。当時は会社を進化させる計画があり、私は店舗の改装やECなど、さまざまな経験をさせてもらいました。たとえばカルティエで店舗の改装プロジェクトに参加して、心斎橋や銀座の改装計画に携わったり、2008年に日本でオープンしたカルティエ世界初のECサイトの計画にも関わりました。
そして10年後、高級チョコレートのラ・メゾン・デュ・ショコラに転職。社内でもっとも若いマネージャーとして仕事を任されました。ここでは物流や商品で新たなチャレンジをおこない、売上を3倍に伸ばすなど、カルティエ時代とはまた違った点で非常に勉強になりました。その後、フランスのラグジュアリーカトラリーブランドのクリストフル ジャパンに移って4年半ほど仕事をして、2022年4月にクリスチャン ルブタンへ入社しました。
私にとって、クリスチャン ルブタンは初のファッション業界の企業になります。これまではカルティエだったり高級食品やハードアクセサリーといった分野に携わってきたので扱う商品は異なりますが、お客さまのネットワークやカルチャーといったものはそれほど変わらないので気持ちに余裕を持ち、自信を持って入社することができました。
― なぜクリスチャン ルブタンを選ばれたのでしょうか?
ブランドの進化するタイミングにおいて、GMとして日本国内のオペレーションを任される上での“裁量権が大きいこと”こと。本部からの強いポリシーでもありますが、チームに責任を持たせるんです。大手企業だと新しいプロジェクトを立ち上げる際に、Aさん、Bさん、Cさんの許可が必要だとか、3つ上までのリレーションにあたらないと動けないといったことがあると思いますが、逆に小さい会社にはそれが少ない。クリスチャン ルブタンは昨年度、Worldwideで最高記録の売上を作り、大きな規模の会社になりつつありますが、その一方で日常のオペレーションは、ブティックな会社としてファミリーフレンドリーな動き方をしているので、そこが魅力だと思っています。
― 現場での判断が尊重されているのですね。
最近、本社のCEOが来日していろいろなビジネスプランの話をしたのですが、チャレンジングなことでも、日本の組織がしっかりアクションプランを実行に移せばそれを信用してくれ、その方向性でいくべきだと、チームの考えを尊重してくれます。ターゲットを設定したらそれぞれのチームの考え方に任せて、方法まで細かく口を出さないという考え方なんです。だからこそ、イベントやセールスのこと、お客さまのターゲティングといったことは、それぞれの国独自で考えるようになっています。
クリスチャン・ルブタン本人も、人の意見を必ず聞く人です。会社が大きくなっていくと、いろいろルールを作って固めてしまいがちですが、彼は意識してそういったことを止めるようにしています。たとえば店舗スタッフには制服がありません。制服は人の自由さを邪魔してしまうので、「服装は自由」というのがクリスチャン・ルブタン本人の意見です。
会社がファミリーと近い存在であることも、私は気に入っています。先日、本部のパリに行った際も、皆さん本当にフレンドリーで。「あなたがこの会社で成長するために、どんなサポートが必要ですか?」と毎日のように聞かれました。上から指示命令されるという感じが一切なくて、そこがすばらしいと思います。
社員と対話を重ね、アイデアを出し合っていきたい
― クリスチャン ルブタンが大切にしている価値観について教えてください。
クリスチャン ルブタンのバリューは4つ。まずは“ハピネス”。この会社では、みんな幸せを感じながら仕事をするようにしています。それからお互いのことを考え、責任を持つ。デッドラインを守りながら仕事を進めるなど、自分がハッピーでいるだけではなく、会社として仕事がスムーズにできようにしていきましょう、としています。もう1つが“パッション”。これは私たちがチェックする必要もないくらい、皆さん熱い思いを抱いて入社していると思います。あとは“インスピレーション”。クリスチャン・ルブタンは人との出会い、旅行、自然が大好きで、この3つからインスピレーションを受けてデザインをしているんですよ。最後は“down to earth”、日本語でいうと“現実的”とか“堅実な”という意味で、現実的に進めていきましょう、ということです。接客の動きやお客さまへのおもてなしなどのサービスを充実させる。また“上から目線は禁止”という意味もあります。人の意見は大事なので、どのレイヤーの人からでも良い考えが出てくると、なるべくそれを実施していきましょう、といったことが、社内では盛んにやりとりされています。
私自身、距離感が近いフレンドリーな会社が好きなので、できるだけ社員の皆さんと直接話し合って意思決定するようにしています。自分自身で皆さんの仕事をしっかり理解するためにも、社員のひとり一人の業務を知りたいと思っています。またその人の希望や考え方も聞いて、その点が会社への成長にもつながるところがあれば、是非活かしていただきたいです。私はそういった可能性を見つけるのが好きなんです。さらに人を良し悪しで判断したくはありません。それよりもアイデアの話をしたいですし、それが一番大事だと思っています。
もう1つが信頼。これが何よりも重要です。私としては新しい社員が入社したら、初日からすぐに信頼してミッションをお任せしたいと考えています。ご本人が責任を持って達成していく方法をいろいろ考えて、自分で進めることができれば進んでもらい、何かネックがあったり、手伝いが必要という要望があれば、都度サポートをしていきたいです。数年前からアメリカ企業の考え方の一つとして、「マネジメントは、チームが成功するようにサポートしなくてはいけない」というフィロソフィーがあるのですが、私はその考え方に共感していて、ぜひ実践してみたいと思っています。
クリスチャン ルブタンでは、本部からもローカルからもたくさんの仕事があり、やりがいに溢れています。それから毎週新しい商品が出るので、「次の商品はどんなものだろう」と毎回お店に行く時はワクワクしますね。自分のファッションも、変わっていくきっかけになるでしょう。
― 社会貢献活動も行われていると伺っていますが、具体的にどのような取り組みを行っていますか?
これまであまり外部への情報発信はしていなかったのですが、ダイバーシティ&インクルージョンが浸透していて、ボランティア活動をおこなう社員を応援しています。先日は、趣味で写真を撮っているパリ本社の社員が、「外見では分からない障害を持っている社員を理解する」というテーマで写真を撮影していて、パリ、イタリア、香港、日本、そしてニューヨークと世界中のショールームを回ったんです。スタッフがそういった社会のための活動をしていて「協力してほしい」という要望があれば、会社が全面的に応援します。それは金銭面の支援だけではなく、写真だったらフレームにして印刷して、社内に宣伝するといったことも行っています。
外部研修では行われない、経営やマネジメントに関する学びの場を提供
― フレデリックさんはクリスチャン ルブタンをどのような会社にしたいですか?
私自身はルーティーンが苦手で、新しいことにチャレンジしたいタイプです。学ぶのが好きなので未知のものに熱中していくんです。人生で選択の場面が出てくると、おそらく難しい方を選んでいくでしょう。それに自分の人生において、5~7年おきくらいで大きなチャレンジをすると楽しいと思うんです。結局、学びは学校で終わるものではなく社会人になってからとか、社会人になって数年後に気づくことも多い。学校の次に成長する場は、会社でしょう。だからこそ、チームメンバーから「これを学びたい」という希望があれば、それをサポートしたいと考えています。
皆が成長したら、新しいアイデアなどが出てきますよね。そういったことから会社が進化していくので、将来を見据えても非常に良いことだと思います。私は皆がフレンドリーでにぎやか、そしてお互いに信頼しているという環境が好きで、会社もそういった雰囲気にしていきたいですね。相手が幸せを感じるために、何ができるかを考えるのが楽しいんです。
―現在どのような課題があるとお考えですか?
今は靴のブランドとして広く知られていますが、実はスモールレザーグッズ、バッグ、ベルトや香水、さらにメンズの新作もたくさん出していてスニーカーも手掛けています。でも正直、靴以外はあまり知られていません。だからこそ2つの大きなミッションがあり、まだあまり知られていないカテゴリーの知名度をアップしていくこと。さらに来年、再来年に出る新しいカテゴリーを、日本市場にどのように浸透させていくか、です。
特に新しいカテゴリーは、社内でも誰も経験したことがないものなので、それをどうしていくかが課題です。
私はスタッフが入社する時に必ず面談を行いますが、その際、「この人はオープンマインドがあるか」「学ぶことが好きか」「人の意見をしっかり聞くことができるか」「責任をもって自分でチャレンジをしていく気持ちがあるか」といった点を見るようにしています。たとえ経験がなくても、素養があって、クリスチャン ルブタンの仕事に興味のある人であれば、ぜひお話をしたいと考えています。異業界や異業種の方だと、逆に既存のものとは違う、新たなアイデアをもたらしてくれることも多いので、そのあたりも期待しています。
― 直近で考えられている新しい施策はありますか?
今、私たちのストアは銀座、青山、六本木ヒルズ、そして各百貨店にありますが、Z世代といった将来のお客さまにブランド紹介を行う必要があります。そのため渋谷や裏原、キャットストリートのようなところに定期的にポップアップショップを出して、通常のベストセラーではなく、新しいものを紹介していくことも考えています。
お客様の層を広げていくためには、いろいろなところにアンテナをはって、どのような人がターゲットになるか、そのターゲットにどうやってアプローチしたらいいのかといったことに、日ごろから敏感である必要があります。そういったアイデアをお店のスタッフから引きあげたいと思っているので、これから店舗スタッフと本社のスタッフがさらにディスカッションを行い、新しいアイデアを実現していきたい。まさにクリスチャン ルブタンはそういった新たな開拓ができる、チャレンジングなフェーズにいる会社だと思っています。
― 社員教育については、どのようなトレーニングを実施していますか?
社員に「PLのことが分からないから学びたい」とか「マネージャーになるのにどうすればいいですか?」といったような質問を受けることがあります。自分も30代の時には実は知りたかったことなので、いい質問だと思いますね。おそらく外部研修でPLは学べると思いますが、経営の仕方とか、マネージャーになるのにどうすればいいかといったことは教えてもらえないでしょう。それならば現実の数字でいろいろ一緒に学べた方がいいと思います。私は、会議の資料を準備する際には、必ず中長期プランと宿題も出すようにしています。。スタッフたちに、マネージャーになるのに半年時間をかけて考えていきましょう、というスタンスで彼らが自主的に学び成長してくれることに期待しています。
今後も日本の社員にとって何が必要なのかをピンポイントでフィードバックを聞いて、どの部門にはどういったトレーニングが必要になっていくのかを考えたうえで、こちらからアクションプランを出していく予定です。過去のスキルアップのトレーニングも平行して、その中でそれぞれがどういったキャリアを積んでいきたいのか。それには何が足りないか、マネージメントトレーニングなのか、ファシリテーショントレーニングなのか、英語なのかを分析し、いろいろなスキルアップの場を提供していきたいと思っています。
変革期を迎える「クリスチャン ルブタン ジャパン」では、新しい仲間を募集しています。上記の考えに共感され、一緒に会社を盛り上げていただける方、新たなるチャレンジをしていきたい方を求めています。ご興味がある方はこちらからご応募ください!
文:キャベトンコ
撮影:Takuma Funaba
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