「今のままでいいんだろうか」このサイトをご覧になっている人のなかには、きっと一度は自分のキャリアに頭を悩ませた人もいるでしょう。真面目に目の前のことに取り組んでいる人ほど、自分のこの先を想像して不安になってしまうものです。働く環境を変えるために転職を考える人も少なくないと思います。
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キャリアを変えるとき避けては通れないのが面接。みなさんは面接がうまくいく人と、そうでない人の違いはどこにあると思いますか?仕事におけるたくさんの実績でしょうか?それともこれまでの経歴でしょうか?ちょっと意外かもしれませんが、僕は「恥の多さ」にあると考えています。
面接の際に前に踏み出すための心構えとは
こんにちは。恥研究家の中川諒です。僕は普段広告代理店でコピーライティングやコミュニケーションのプランニングを行う傍ら、「恥研究家」として書籍や雑誌などの執筆活動や恥部(ちぶ)というオンラインサロンの部長を務めています。今日はキャリアと恥をテーマにお話ししたいと思います。恥という感情を理解すると、就職や転職の面接も有利に進めることができると考えているからです。
誰しも自分の人生の分岐点とも言える面接の瞬間は緊張してしまうもの。しかし忘れてはいけないことがひとつ。まず大前提として、面接はあなたが「一方的に審査される場」ではないということです。「面接をされる」という心構えでいくと、つい自分の適性を相手に見定められるという気持ちになってしまいます。しかし事実は、面接という場はあなたと会社のマッチングを行う場。その会社があなたに相応しいか、あなたが会社を審査する場でもあるのです。
この心構えがあるかないかで、面接にのぞむわたしたちの姿勢は大きく変わってきます。I’m not good enough. わたしにはまだ早い。自分で自分にそんなラベルを張って、まだ機が熟していないと決めつけてしまうと、自分の心のなかに閉まっていた恥の感情がむくむくと膨れ上がって、いつもなら踏み出せる一歩も怖くて踏み出せなくなってしまいます。
「いい質問」をするためのコツは意外なところに
では大事な面接を、一方的に審査される場ではなく対等に審査をする場にするためにはどうしたらいいのでしょうか?それは質問をすることです。向き合っている会社、向き合っている面接官に対して興味をもって疑問に思ったことを聞いてみるのです。そうすることで、理解が深まるだけでなく、結果的にあなたは前向きで前のめりな人に見えます。積極的に見えるのは、面接の場において悪いことではないはずです。このときに避けなければいけないのが「いい質問をしよう」と思ってしまうことです。
大事な面接で「いい質問」をしようとすることは当たり前では?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも考えてみてください。大事な面接の場面で「いい質問」を思いつく自信が、あなたにありますか?僕にはありません。恥という感情は、理想の自分と現実の自分のギャップによって生まれると僕は考えています。
現実の自分よりも自分を大きく見せようとして、知的な「いい質問」を探し出そうとするとあなたは恥の迷路に迷い込みます。「こんなこと聞いたらバカだと思われるのではないか」「こんなこと聞いたら何も知らないやつだと思われるのではないか」恥の迷路に並ぶ鏡に映ったゆがんだ自分の姿との睨めっこがはじまって、質問そのものができなくなってしまいます。
大体自分が思う「知的ないい質問」には、自分の知識をひけらかそうという不純な動機が含まれるため、相手によっては嫌なやつに見えてしまうこともあります。化けの皮はいつか剥がれます。いい質問をするコツは、いい質問をしようとすることをやめることなのです。
さらに恥は面接を受ける側だけが感じる感情ではありません。面接官にも、面接官としての恥があるのです。会社を代表する立場で会議室に並び、せっかく面接を受けにきてくれた人に「こんな人がいる会社じゃいきたくない」と思われないだろうかと、心の中には不安があるのです。恥と聞くと「若者のもの」というイメージがありますが、年齢や立場があることによって生まれる恥もあります。
むしろ周りから期待される自分の像と現実の自分との乖離が生まれやすいのは、年長者や社会的立場の高い人だったりします。面接の会場で向こう側に座っている先輩にも恥があるということがわかれば、少し肩の力が抜けて面接にのぞめるのではないでしょうか。
失敗談があなたの魅力のアピールにつながる
最後に、面接ではぜひ成功した話よりも失敗したときの話をしてください。自分をアピールするためには、自分の実績や成功を語ろうとする人がいますが、実はそれは逆効果です。成功の基準は環境によって変わるため、話を聞いた相手があなたの素晴らしさを理解できない可能性があります。成功談は自分のおかれている環境を前提になりたっていることが多く、今のあなたの職場や人間関係を知らないと、あなたの成功の難しさも他人には想像しがたいのです。
その一方で、失敗した話は今の組織や環境には関係なく誰もが経験するため、理解してもらいやすいのです。誰もが失敗の経験はあるので、失敗した話は共感してもらいやすいという特徴もあります。人の魅力が現れるのは、成功したときよりも失敗したときなのです。そのエピソードにはあなたの性格や物事に取り組む姿勢が現れるだけでなく、失敗談を話すことで自慢をしない嫌味のない人にあなたを見せてくれます。過去の失敗があなたをチャーミングに見せてくれるのです。
たくさん恥をかける人は、前に進もうとする人です。いま恥ずかしいと感じているとしたら、それは新しいことにチャレンジできている証拠だと考えることもできます。逆を言うと、最近恥を感じていないなと感じる人は自分の安心できるコンフォートゾーンから出ようとしていない、チャレンジしていない人だと捉えることもできます。
恥をたくさんかいている人は、たくさんチャレンジできている人なのです。ぜひ面接官を任されているあなたも、これまでの質問に加えて「今まで恥ずかしかったことを教えてください」と面接にきた人に聞いてみてください。今まで聞けなかったその人の魅力を感じられるエピソードがきっと出てくることと思います。
中川諒さん/恥研究家・コピーライター
1988年生まれ。幼少をエジプトとドイツで過ごし、自分のアイデンティティとは何かという問題に直面する。予備校の模試で偏差値40台を叩き出すが、AO入試(自己推薦)で慶應義塾大学環境情報学部に入学。2011年に大手広告代理店に入社。8年目で社内の転局試験に合格し、念願のクリエイティブ局に異動。その後Googleシドニーとシンガポールにクリエーティブディレクターとして出向し、帰任後、ユニクロ、サントリー、ホンダなどの広告を沢山の人たちに助けてもらいながら制作。2021年に初の著書『いくつになっても恥をかける人になる』(ディスカヴァー21)を出版。インスタグラムでは毎日自撮りを投稿する #自撮り修行 が500日を突破。
Instagram:@ryonotrio
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