浅野勝三社長
デザイナーブランドODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業のサンエース(岐阜市)の物作りを支えるため、12年にスタートした縫製企業のサンワーク(同)。縫製工場としては立ち上げて10年と歴史は浅いが、技術力に定評がある。来春までにラボを立ち上げるなど、未来に向けた投資を進める。
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■個性ある100枚を
オーダーは非常に多く、9月までは工場が埋まっている。毎日電話やメールで問い合わせがあるが受けられず、断っている状況だ。コロナ禍前は日本人13人、技能実習生が12人いたが、今は日本人は変わっていないものの、実習生は8人になった。仕事はあっても工員が少なく、縫うのが難しい。無理して受けると品質に影響するので、キャパシティーを超えた仕事は受けないようにしている。
工賃は発注元と同じ目線で交渉できる環境になってきた。当社は定番品はほとんど縫わないので、昨年との単純比較はできないが正当な工賃を提示し、一定理解を示してくれる環境になっている。
日本で大量の物作りはもう難しいと思う。1000枚ではなく、ニッチかもしれないが、100枚の個性的な服をピンポイントで本当に欲しい人に届ける時代。高い技術を武器に、小ロットで自己表現が可能なこだわりの服を作る。それが国内縫製業の生き残る道になると思っている。実用衣料はコロナ禍が終息すると、また海外に戻ってしまう可能性が大いにある。
■メタバース研究のラボ
数年前から構想はあったが、今年から本格的に設備投資して、ラボとスタジオを作る計画だ。
ラボでは3D・CAD(コンピューターによる設計)ソフト「CLO」など設備・システムを導入し、メタバースの研究、アバター作成などを考えている。そうすることで、現在取引しているブランドの世界をバーチャル上で表現するお手伝いが出来るかもしれない。ブランドを立ち上げたいインフルエンサーがいれば、バーチャル上のファッションショー開催をサポート出来る可能性もある。そうした提案の先に縫製もある。そんな時代が来るかもしれない。
さらにファッション専門学校の学生が気軽に集まり、アバターを制作出来る環境としても活用出来るかと思っている。
眼鏡でVR(仮想現実)が体験出来る時代も近いという。テクノロジーが発展する中で、ファッション業界、縫製業界のゲームチェンジの可能性がある。我々はゲームチェンジャーを目指したい。
わが社の理念は「服を通して社会に感動を伝える」。5年後、10年後を見据えて動いている。縫製関係の業界団体の中で私は「ニッチでも良い。お山の大将を目指そう」と話している。強みを磨き、同業他社と切磋琢磨(せっさたくま)し、そして生き残っていきたい。
(繊研新聞本紙22年7月6日/森田雄也)
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