熟練のタンナーが鞣した国産革素材を使用した、飽きのこないシンプルかつ上質なレザーアイテムの数々。バッグをはじめ、iPhoneケース、ポーチ、アクセサリーをひとつひとつ手作りし、長く愛情をもって使いたいという顧客に届ける。環境やエコにも配慮したものづくりや、ブランドに対する想いについて、デザイナー兼革職人の伊地知真沙子さん・朋子さん姉妹にお話を伺った。
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伊地知 真沙子さん(写真左)伊地知 朋子さん(写真右)
大阪府大阪市の下町に生まれる。ファッションの仕事に憧れ、ともにニューヨークに留学。帰国後、一般企業勤務を経て、革職人である父とともに3人で、レザーブランド「URBAN BOBBY(アーバンボビー)」を立ち上げる。シンプルかつロングライフなものづくりを発信しつづけている。
革が生活の一部に、革とともに育った幼少期
― URBAN BOBBYはどのようなきっかけから生まれたブランドなのでしょう?朋子さん:私が大学に入学した頃から、一緒に仕事がしたいね、と姉と話をしていたんです。ふたりともファッションに興味があったので、やるならファッションかなと。
― 学生時代に起業しようと?
朋子さん:当時はまだ具体的なことは何も考えていませんでした。でもファッションのことは学んでおかないと、と思って大学時代にニューヨークに留学したんです。昼は語学学校に通って、週末はファッションの学校でスタイリングやブランディングを学びました。帰国後、私は大阪のアパレル会社に入り、バイヤーやオリジナルブランドのデザイン、販売などの仕事を2年ほどやりました。独立して自分たちのブランドを立ち上げたいという気持ちは固まっていたので、初めから会社にもそれは伝えていて。退職前には、仕事をしながらブランド立ち上げの準備も行っていました。
― お姉さんの真沙子さんも、URBAN BOBBY立ち上げ前はファッション業界でお仕事をされていたのですか?
真沙子さん:それが、まったくファッションとは関係のない業種で働いていたんです。大学卒業後に就職した会社で担当していたのはOA機器の営業。1年半ほど勤務したのち退職して、妹と入れ違いに私もニューヨークに留学しました。帰国後、外資のアパレルブランドで勤めたことがファッション業界への入り口でした。起業するには資金が必要ですから、妹も私も働きながら起業準備をすすめていました。
― 最初は何となくファッション系で起業という考えから、レザーブランドに絞り込んだのはなぜなのでしょう。
朋子さん:ファッションブランドをやりたいと思ってもコネクションもなく、どうすべきか考えていたところ、すごく身近にファッションに通じる仕事をしている人がいたんです。それが、革職人である父でした。「お父さん、一緒にやらへん?」と言ったら、あっさり「ええよ」って(笑)。そこからURBAN BOBBYが始まったんです。
― お父様が革職人ということは、お二人が子どもの頃から革が身近にあったのですか。
真沙子さん:実家には革を縫うミシンや道具があって、父がそれを使って仕事をする様子をいつも身近で見ていました。私たち姉妹のおもちゃも革。父が渡してくれる余った革を金槌でたたいて星形に抜いたりして遊んでいましたね。父もいろいろなものを作ってくれて。幼稚園バッグもみんなはキルティングなのに、私たちのものは本革でした(笑)。
― お父様がいたからこそできあがったブランドなのですね。
朋子さん:私たちが描いた落書きみたいなデザイン画をもとに、父がサンプルを作ってくれて…すごいなと思っていました。
大好きなニューヨークのテイストをネーミングに込めて
― お二人ともニューヨークに留学されていますが、当時の学びや経験がブランドや商品づくりにもつながっているのですか。
朋子さん:デザインや商品にニューヨークテイストが直接からんでいるわけではありませんが、ネーミングには意識したものがあります。「DELI CASE」や「SUBWAY POUCH」などがそうですね。
在庫破棄はゼロ、エコにもこだわる
― URBAN BOBBYは在庫破棄が過去ゼロだとうかがいました。これはすごいことですよね。
朋子さん:シーズンや流行に関係なく、長く使えるものを作ることを心がけています。レザー小物はシーズンによって変わるものではないし、もともと長く愛用いただけるものなので、長く販売できるんです。
― 使用する革にもこだわりをお持ちですよね。
朋子さん:国産の革のみを使用しています。しかも原皮は食肉の副産物で、廃棄されるものを熟練のタンナーさんに加工していただいています。主に兵庫県の姫路市とたつの市の業者さんにお願いしているのですが、日本のタンナーさんの技術は素晴らしいんですよ。環境への配慮も世界トップクラスの基準をクリアしています。原皮を鞣す際は水もたくさん使うのですが、排水処理された水もとてもきれいで。
― 廃棄されるものを再利用して加工し、排水処理にも気を配る。環境にも徹底して配慮した商品づくりを行っていらっしゃるのですね。
真沙子さん:本革なので長く使えることも結果的にエコだと思います。また、バッグを作る際に残った革は小物づくりに活用するなど、タンナーさんが手間暇かけて加工してくださった革をできるだけ余らせることがないように工夫しています。
家族で作り上げる手仕事のあたたかさと上質さ
― 自分たちだけでやる、というのもこだわりのひとつですか。
真沙子さん:父と私たち姉妹の3人の完全家族経営でやっていることは、ブランド立ち上げ以降変わっていません。レザーの仕入れから始まって、裁断、サンプルおこし、製作、販売まですべて3人で行います。特別加工部分だけは外注することもありますが、基本的な作業はすべて3人でこなしますし、製作は完全に手作業です。
― ワンストップ、家族経営のメリットは何でしょう。
真沙子さん:商品の細かい部分までどうやって作ったのかが把握できることでしょうか。外からは見えない部分の細やかなこだわりやつくりもすべてわかっています。だから万が一商品にトラブルが生じてしまったときのメンテナンスもスムーズにできるんです。外注してしまうと、いくら細かく打ち合わせしていても、どう作られたのかが見えづらくなってしまいますから。すべて手づくりなので大量生産はできません。でもだからこそこだわりを持って、いいもの、納得のいくものが作れることで、商品にも自信が持てます。
― 販売方法も限られているのですね。
真沙子さん:オンライン販売と、ポップアップストアのみで販売しています。これからも自分たちのペースで、ひとつひとつ丁寧に作っていきたいと思っています。
― 製作数が少ないから価値もあり、何より大人気ですよね。
真沙子さん:リピーターのお客様も多くて、本当にありがたいことだと思っています。サンプルづくりは父の仕事なのですが、年齢的にも無理はさせられません。先のことも考えながら、父の技術を継承できるように私たちも日々学びたいと思っています。
― ゆくゆくはお二人のお子様たちが継いでくれるかもしれませんね。
朋子さん:子どもたちはまだ小さいのでそれはわからないですね。でも私たちの子どもは、お腹にいるときから加工作業で使う金槌の音を聞いていたからなのか、寝ているときに金槌の音がしても起きないんですよ(笑)。
変わらないブランドへの想いと、ブレないものづくり
― これからどのようなブランドに育てていきたいですか。
真沙子さん:一人ひとりのお客様のことを想いながら丁寧に作ってお届けする、というスタンスが変わることはないと思います。一方で、私たちのライフスタイルの変化によって機能性などへのこだわり、つまり自分たちが作りたい商品像も少しずつ変わっています。そうした変化も大切にしながら、ともに成長できるブランドにしていけたら。
― 今後何かチャレンジしたいことはありますか。
真沙子さん:ポップアップストアで販売を行っていますが、その際にワークショップもやりたいな、と思っています。お客様は私たちと同じくらいのママ世代の方も多いので、お子様にもキットをお渡しして、簡単な小物などを一緒に作れたら楽しいかな、と。まだ予定はありませんが、いつか実現させたいと思っています。
― それは楽しそうですね。決まりましたらぜひNESTBOWLで告知をさせてください。本日はありがとうございました。
公式HP:https://urbanbobby.com/
真沙子さん:@masako_urbanbobby
朋子さん:@tomoko_urbanbobby
文:伊藤郁世
撮影: WACOH
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