©Nacása & Partners Inc.
4月上旬に、ラグジュアリーブランド企業の2021年通期決算が発表になった。ラグジュアリーブランドのコングロマリット企業であるLVMHとケリング、およびエルメス・インターナショナル3社の決算である。いずれもコロナ禍前の2019年のレベルを売上高、営業利益ともに軽々と超えてしまっているのが凄いところ。
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2019年12月期と2021年12月期を比較してみた。1ユーロ=135円で計算した円ベースの比較だ。
LVMH
・売上高:8兆6690億円(+20.0%)
・営業利益:2兆3153億円(+14.9%)
・営業利益率:27.0%
ケリング
・売上高:2兆3820億円(+11.0%)
・営業利益:6772億円(+5.0%)
・営業利益率:28.0%
エルメス・インターナショナル
・売上高:1兆2125億円(+30.0%)
・営業利益:4765億円(+15.1%)
・営業利益率:39.0%
3社を比較してみると業界最大手LVMHは8兆円企業にして営業利益がトヨタ自動車のそれ(2021年3月期:売上収益27兆2145億円、営業利益2兆1977億円)を上回るのだから素晴らしいパフォーマンスだ。ライバル視されているケリングでは、営業利益の伸び率が+5.0%と今ひとつだが、LVMHの27.0%を上回る営業利益率28.0%が光る。
上記2社を大きく上回るパフォーマンスを達成しているのは、エルメス・インターナショナルだ。
2019年比で+30%の売上高の増加率も凄まじいが、やはり2019年比で営業利益が15.1%の増加率そして何よりも驚きなのが39.0%の営業利益率だ。100万円のハンドバッグを売ったら39万円の利益があるということで、まさに究極の利益率と言っていいのではないか。受注生産に近い生産・販売体制になっていることが見てとれる。マルチラグジュアリーブランドコングロマリットLVMHを率いるベルナール・アルノーはブランドの買収によってLVMH帝国を築き上げて来たが、本当に欲しかったブランドは、「シャネル」と「エルメス」だと言われている。未上場のシャネルはともかく失敗したが上場している「エルメス」買収を仕掛けたのも十分に理解できる。
「そんなに儲かっているのだったら、価格を下げたらどうか?」という声が聞こえて来るだろうが、値上げしても買ってくれる客がほとんどなのだから、値下げする必要などあるはずがない。
ラグジュアリーブランドの基本的な考え方は、「我々の製品はただの消費財ではない。これは文化なのだ。末長く守らなければならない文化なのだ。またそれを国家が援助して守ってくれるわけではない。守るのも我々である限り、儲かるときに儲けておかなければならない。それが我々が利益を最大限追求する理由だ」というものである。これは、LVMHのベルナール・アルノーCEO、ケリングのフランソワ・アンリ・ピノーCEO、エルメス・インターナショナルのアクセル・デュマロCEOが語ったわけではないが、消費財ではなく文化財であることがラグジュアリーブランドの存在原理であることは、この三者は百も承知のことであろう。そうした存在原理に支えられた成長は簡単には止まらないように見える。
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