2014年のデビュー以来、高い人気を誇るブランドがマディソンブルーだ。感度の高い女性たちの圧倒的な支持を得ており、現在はメンズも展開する。今回は、営業主任とPRを兼務する高橋 薫さんに、マディソンブルーの仕事の現場、ほかの仕事では得られない魅力について聞いた。
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高橋 薫さん/株式会社マディソンブルー 営業主任/PR
岩手県出身。2004年に専門学校を卒業。若い女性向けのアパレル企業に就職し、販売職や、店長職を経験したのちに上京する。約10年間勤務した後、退職。2014年から約1年間、メゾンのビンテージ専門店に勤務したのち、2015年にマディソンブルーに入社。
社会に出てからずっとアパレルで働いてきた
―マディソンブルーの入社以前から、業界でお仕事をされていますね。経歴を教えてください。
私が社会人になったころは、ギャル文化の全盛期で、若い女性向けのアパレルが人気でした。仙台の専門学校を卒業した後、若い女性向けのアパレル企業に入社しました。2年で仙台のショップの店長、ついで金沢でも新店舗がオープンすることになり2年間店長を経験し、そのあと東京に転勤しました。
―店長への出世が早いですね。そこからは?
東京での最後の職場は東急プラザ表参道原宿の店舗でした。70人くらいスタッフがいる大型店で、最後は副店長を任されたんです。その後退社して、つぎに約1年間、イヴ・サンローラン、クリスチャン ディオールといったメゾンのビンテージを専門に扱うショップで働きました。当時のお取引先でもあり、ご縁があって働くことになったんです。
販売のアルバイトからPRに転身
―マディソンブルー入社までの経緯を教えてください。
当時、ビオトープでディレクターをされていた女性に憧れていて、その方と中山まりこさん(マディソンブルー社長・クリエイティブディレクター)の対談をウェブで読んだんです。それが、(中山)まりこさんを知るきっかけでした。マディソンブルーのこともそこで初めて知り、『今までに見たことないような魅力のあるブランドだな』と思って。ホームページを見るとアルバイトを募集中。当時、仕事を休んでいたので、アルバイトに抵抗がないわけではなかったのですが、それでもと思って応募しました。時期は2015年の夏ごろだったはずです。
―ブランド設立間もないころですよね? 面接で中山さんにお会いになったんですか?
いえ、面接は別の方でした。まりこさんと、きちんとお話ができたのは入社後、1か月経ったころです(笑)。最初は、当時目黒にあった店舗で販売を担当していました。1か月目のまりこさんとの面談で『なにをしたくて入社したの?』と聞かれて、PRと答えました。販売は1対1ですが、PRは1対100にも1対1000にもなる、それがとても魅力的だなと。そうしたら『じゃあ、やってみて』と、話が進んだんです。翌日から、当時PRをしていた方のアシスタントについて、その方がPRを離れたときに私が担当になりました。
―「じゃあ、やってみて」の一言で希望する職種に決まったんですか?!
なんでもかんでもOKではないのでしょうが(笑)。チャレンジしたい意志は買ってくれる会社ですよ。仕事を与えられるのを待っていてはダメで、自分が見つけていかなくてはいけない会社です。そんな社風は当時からあったんでしょうね。
―現在は、営業主任とPRを担当なさっていますね。具体的にお仕事の内容をお聞かせください。
なんでもやっているんです(笑)。営業職では実務よりもイベントの企画・運営、百貨店やショップとのコラボレーションなど商談などを行います。PR業務では、撮影用サンプルのお貸出しの対応、プレスプレビュー(メディア向けの展示や発表)、カタログ製作全般、SNS・ホームページにまつわるあれこれですね。わかりやすくいうと、販売促進にまつわることすべてです。
ブランドの変わった点、変わらない点は?
―6年間ご勤務なさって、ブランドの成長に伴う変化、または変わらないよさをお感じになりますか?
仕事に取り組む会社の姿勢は変わっていないと感じます。営業先とは、今も昔も上下関係がない。お客様との関係も対等であり平等です。これはメディアとのお付き合いも同じです。著名人の方であっても特別扱いをしません。これらの姿勢を変わらず守っているのは、よい点です。まりこさんの勘も変わりませんね。過去6年の間にブランドのターニングポイントがありましたが、その時々で彼女の感性は研ぎ澄まされていました。
―中山さんの変わらない勘の、具体例を知りたいです。
大きなポイントといえば、2017年の現店舗(表参道)への移転です。そこからブランドが大きく変わりました。現店舗は、ハナちゃん(中山さんの愛犬)のお散歩で、たまたま導かれるように通った場所だったそうです。紹介された物件もあったそうですが、理想の場所が見つかって、しかも空いているとわかったことで、予定のタイミングをかなり前倒しして移転となりました。必要に迫られて探すのではなく、偶然出会う。そんなところも勘ですよね。
―反対に、6年間でどんなことが変化しましたか?
エッセンシャルなアイテム(定番アイテム)は変わらないけれど、それ以外の洋服で、ラグジュアリーな方向に舵を切ったことでしょうか。時期は2018年で、一気にインポートの生地を増やすなどしてラインを拡充しました。それが新しいお客様のイメージになると考えていたんです。
―それは、いまから見ればいい変化だったわけですね。
地方の百貨店で行ったポップアップショップの購買動向を聞くと、フリー(リピーターではない顧客層)の方の数が減り、以前はあまりいらっしゃらなかった海外のメゾンブランドでもショッピングをなさるような方が非常に増えていたんです。それは私たちの目標でもあり、変化を強く実感できたんです。以前から、メゾンとのアイテムにもコーディネイトできる提案をしていましたが、なかなか浸透しませんでした。それが、徐々にお客様の意識が変わり、(設立から)7年の時間をかけることで、ようやく提案が伝わってきたと思えました。
社員全員のブランドへのリスペクト
―現在、仕事とはどんな風に向き合っていますか?
“中山まりこ”という存在はカリスマです。でも、社員はみんな彼女個人にではなく、ブランドであるマディソンブルーに向き合っています。会社となると、誰もが評価されたいと思うものですよね。でも、社員に共通しているのは、ディレクターである“中山まりこ”から評価されたいのではなく、会社やブランドから評価されたいし、お客様からの評価が自分の評価だと考えている点です。
―社内の雰囲気では、どんなところが特別だと思いますか?
それはマディソンブルーの組織図に表れています。通常は経営者を頂点に、ツリー状に部署が細分化されていますが、マディソンブルーでは円形に組織が描かれているんです。中心に企画があり、そこから生産、販促が直結。その外周に小売りやホールセール(卸し)、ECの販売部門があって、一番外の円はすべてお客様。どの部署もすべてお客様につながっています。
組織関係に上下はなく、隣合わせ、内側・外側の重なりといったつながりを強く持って仕事に取り組むための図式です。強みはお互いに考えを伝えあえる関係性。お客様のダイレクトなご意見も、企画までまりこさんに伝えるようにしています。一般的な組織では、直属の上司を飛び越えて、さらに上に意見を伝えるのはルール違反とされます。マディソンブルーには、それがありません。その代わり、私たちは自覚をもって、言動には責任をもたなくてはいけません。
オフィスと店舗の一体化が生むスピード感
―社員のみなさんにアンケートをとったところ、オフィスと店舗が同じ場所にあることがいい点だと大勢が答えています。印象的だったのが、同じ場所にあることによる“瞬発力”との回答でした。
やらなくてはいけないことも含め、やりたいことがあったとき、すぐにプレゼンができるんです。企画にOKが出れば、すぐに実行するメンバーが決定。現場となるお店が同じ場所ですから、企画の結果は直に見ることができます。このスピード感、瞬発力はすごいと、誰もが感じているはずです。
―なるほど。中山さんもオフィスと店舗が一つの場所にあることのよさを語っていました。働く側にとっても同じ気持ちなんですね。
とにかくクリエイティブディレクターとの物理的な距離がないことで、物事のジャッジが早い! また、まりこさんは仕事とプライベートの境目がなくて、オンオフを問わず、体験のすべてをブランドの提案に生かすことを考えています。彼女は私的なことも開示してくれるし、自分の時間を割いてでも、こちらの意見を聞こうとする姿勢でいてくれる。そうしたスタイルも、私たちがより距離を感じない要因になっています。
―オフィスと店舗が同じ場所にある。それはお客様にとってもブランドの世界をしっかりと受け取れる環境といえそうですね。
一店舗しかない強みだと思います。この店舗はオフィスと、デザイナーが滞在する空間が一体化したものです。洋服は半年以上前に構想したものが、時間をかけて店頭に並びますよね。でも、リリースされたときに、作り手はすでに違うことを考えています。その“今”の気分をダイレクトに聞くことができる、伝えることができるのも、この環境ならでは。コーディネイト一つとっても、いまの気分がわかる。だから、私たちも今の提案を自分に取り入れて、お客様にお伝えすることができます。
―個性的な会社であることがよくわかりました。これまでの経験で、特に思い出深いエピソードを教えてください。
まずは、2018年のチャリティセールです。2018年、豪雨災害でつながりのある工場が被害を受けました。何か私たちにできることをと考え、普段は行わないセールをチャリティとして実施したんです。何十人もの行列が出るほどの混雑にもかかわらず混乱はなく、お客様が会場で上品に丁寧に商品を扱ってくださっていたんです。至らない点もあったのに、温かい言葉もかけていただいて。その様子を見て、私たちはなんてすばらしいお客様に恵まれていたのだろうと、本当に感激しました。
―いいお話ですね! ほかにもエピソードがあればぜひ。
入社してから、2度パリへ出張させてもらったことです。一度目は2018年。現地の人にマディソンブルーのシャツを着てもらい、撮影を行うプロジェクトがありました。それが急に規模が大きくなって人出が必要になり、出発3日前に声を掛けられたんです。スピード感といい、まりこさんらしい決断ですよね(笑)。
次の出張は、2021年6月下旬。マディソンブルーではパリ出店を見据え、現地の物件を契約していました。ところが、世情の急変で物件を解約することになったんです。そして、最後に現地の友人や関係者を招き、解約前の物件でレセプションパーティを開催。まりこさんが、社員を積極的に誘えないなか、私は自ら出張を希望しました。パリはロックダウンが解除されたばかりだったので、当時の日本では考えられない、喜びや熱気に衝撃を受けました。こうして自らダイレクトに、思いを伝える方法が、いまの自分たちの目指す道なのだろうと感じましたね。
入社から6年。高橋さんは過去の経験も生かしながら、大きく飛躍した印象を受ける。マディソンブルーは、きっと彼女にとって、職場以上の、大きな喜びや充実感を得られる存在なのだろう。
現場からのメッセージ
マディソンブルーで働くことに興味を持った方のために、高橋さんにメッセージを寄せてもらった。応募してみたい方は、ぜひ参考にしてほしい。 「与えられるのを待つのではなく、自ら挑戦し続けるチャレンジ精神のある方に向いていると思います」
取材=T.Kawata
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