建築設計や工業デザインなどを手がけている倉田裕之/建築・計画事務所では、20年ほど前からクライアント企業の発注を受けて、木材を加工した収納家具の商品化を行っている。自社でデザインした商品を国内のOEM工場で生産して販売しており、コロナ禍での在宅需要の拡大で売り上げを伸ばしている。
ブランド名を冠した自社通販サイトである「margherita(マルゲリータ)」がメインの販路となっており、そのほか、仮想モールにも出店している。昨今は、外出自粛に伴う自宅内のインテリアや収納品のEC需要が拡大。同社でも、収納棚やテーブル、机、椅子など500~700程度のあらゆる商品を展開しているが、中でも壁面収納である「壁面本棚シリーズ」(画像)がヒット商品となっている。「『壁一面を本棚にする』というキャッチフレーズ自体も実はあるようでなかった。今の時代は物に対する愛着を持っている人達の気持ちに応えられていなかった部分がある。そういった人達に刺さったのでは」(倉田裕之代表)とした。
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元々は、自社で自分たちの書類を片付けるための棚として開発したもの。「商品化後は顧客から『机は付いていないか』など色々なリクエストを受けて、その都度制作していった。ニーズに刺さるものがあるとすぐに商品化している」(同)と説明。同シリーズの中でも「壁一面の本棚」は壁面を床から天井まで最大限に活用できるもので、最大2メートル40センチメートルで、造作家具のような天井まで壁一面を本棚で構成することができる。
また、天井や梁の高さに合わせて本棚の高さを調整することが可能。まずは、受注する際に、設置する場所の高さなどを図ってもらい、写真などとともにサイズデータを受けてから、サイズを調整している。「どうしても天井の高さや部屋の形などに合わせてカスタマイズをしないといけない。高さや幅を縮めるなどの要望は半数近くあり、メールなどでやり取りして調整している」とし、原則、自宅に訪問せずにネットで完結する仕組みとなっている。
平均的な価格帯は10万円前後で、価格面での差別化も図れている。「設計事務所なので、元々、造作家具(つくりつけ家具)はやっていた。リフォームして造作家具を作る際の値ごろ感は分かっているので、その約3分の1~4分の1ぐらいの価格で提供している」(倉田代表)とした。
主な顧客層としては、小学校低学年の子どもがいるファミリー世帯。ちょうど、引っ越しのタイミングに差しかかったり、子どもの就学に合わせて、勉強部屋ではなく、家族の目が届くリビングで勉強や学校の道具を収納したいというニーズがあると見られている。
加えて、コロナ禍でテレワークが増えたことで、会社関係の書類などをまとめて置きたいというケースもあるようだ。
集客に当たってはSNSへの広告出稿のほか、ユーチューブ動画投稿も開始している。年に2回程度、アウトレット商品の案内などのメルマガも配信しているが、開封率は20%近くあるなどロイヤリティーの高い顧客が少なくないようだ。顧客とのやり取りは非常に重視しており、これまでにも購入者からの要望を受けて商品を修正したことは何度もある。一例として、壁面収納の最下段の板が薄く、配送時に破損が発生したことから、もう一枚板をはさんだり、また、切断した板の断面が棚の表面になることから、見栄えを考慮して小口テープを貼るようにするなど、色々なことを行ってきている。
そのほか、購入の後押しとなっているのは自社通販サイトで展開している「事例一覧」。購入者に依頼して、設置から数カ月後の使用状況について写真を撮らせてもらい、サイト内で表示しているものだ。毎月、6件程度、これまでに合計1000件近く掲載している。高額であり、かつ、使用方法も幅広いことから、事例を提示することで、利用イメージを付けやすくしているのだという。
なお、同社のEC事業の売上高は、直近3年間で毎年平均3割近い伸びを記録。とりわけ、壁面収納については、EC事業の半分近い売り上げシェアを占めており、全体と同じような伸び率になっている。2022年6月期のEC事業については1割程度の増収を計画している。
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