通販実施企業にとって常に課題となる新規顧客の開拓。各社とも様々な施策を展開し、効果的な新規顧客獲得の方法を模索している。今回はその中から通販専業者による店舗展開などのリアル展開など、成果に結びつきそうな新規顧客開拓策を展開する千趣会、フェリシモ、キューサイ、Koala Sleep Japan(コアラスリープジャパン)の事例についてみていく。
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JR東日本との協業で店舗強化
千趣会は、東日本旅客鉄道(JR東日本)との資本業務提携に伴う連携強化策の一環として、JR東日本グループが展開する駅ナカ、駅ビルなどでの店舗出店を強化している。オフラインでの顧客接点を強め、通販カタログやECではリーチできない顧客層を開拓するほか、顧客の声を吸い上げ、今後の商品開発にもつなげる狙いだ。
中でも、根強いファンが多いディズニーの関連アイテムを開発・販売する「ディズニーファンタジーショップ」の実店舗については、大阪市内に2店舗(クリスタ長堀、大丸梅田店)を構えているが、JR東日本との提携後にJR品川駅構内や青森駅の駅ビルなどでポップアップストアを展開して好評を得たこともあり、10月29日にはJR東京駅京葉線地下八重洲口改札内に常設店舗をオープンした。
当該店舗は京葉線利用者の通行量が多く、日常的に利用してもらいやすい好立地かつ約178平方メートルというJR東日本との協業ならではの広い店舗面積で展開する。
商品ラインアップは生活雑貨やレディース・キッズアパレルのほか、寝具や家具などの大型商品も含めて約270型の品ぞろえでスタートしたほか、12月頃からは、ベルメゾン限定デザインパッケージの菓子類も取り扱うことで、東京土産としても利用できるようにする。
店舗は”家”をイメージし、入り口は屋根の形としたほか、広い店舗スペースを生かして家具から雑貨までをトータルコーディネートしたベッドルームやキッチンルームのコーナーも設けた。
また、同店では通販チャネルとの連携にも取り組む考えで、一環として、JR東日本グループが運営する通販サイト「JREモール」とのOMO施策も推進する。
具体的には、その場で持ち帰れない大型家具や、店頭で気になった商品は手持ちのスマホから専用ウェブアプリ「JREモールマイリストショッピング」で商品についたバーコードをスキャンしてアプリ上の「マイリスト」に保存すれば、帰宅後などに「JREモール」のベルメゾン店で簡単に購入できる仕組みを導入した。
千趣会によると、新店舗はSNSを通じた露出も多く、口コミ効果もあって出だし好調で、売り上げは想定以上で推移しているようだ。
コミュニケーションの場として有効活用
フェリシモでは今春から新機軸の店舗を続々とオープンさせている。「フェリシモ猫部」のレストラン「猫部パーラー」を、スイミージャパンとコラボレーションし、東京・豊洲と大阪・梅田に今年3月、期間限定店としてオープン(豊洲店は予定通り8月31日でコラボを終了)。さらには、「ミッフィー」でおなじみの絵本作家である、ディック・ブルーナの世界観が楽しめるワインバル&カフェレストラン「ディック・ブルーナ テーブル(DBT)」を横浜と神戸にオープンした。猫部のファンやミッフィーのファンが楽しめる仕掛けを存分に施したレストランとして話題を呼んでいる。
同社では、飲食店進出の理由について「(飲食店は)お客様とスタッフ、そしてお客様同士のコミュニケーションの場として、非常に優れている。『フェリシモがレストランを作ったら、こんな店になりました』ということを積極的に発信していきたい」(フェリシモO2O事業部リアルリテールチームの富田浩幸氏)と説明する。
猫部パーラー、DBTともに店内の装飾やメニューなど、さまざまな工夫を施している。通販サイトでは扱っていない、店舗限定商品も人気だ。また、緊急事態宣言解除後は、営業時間が伸びたこともあり、両店とも売り上げは伸びているという。
富田氏は「店で聞けるお客様の声はすごく良いし、とてもうまくいっていると思う。ネット販売はお客様の属性は年代や性別などは分かるが、実際にどんな雰囲気の人たちが来ているのかが良く分かるのが店舗の魅力だ」と語る。
ネット販売との相乗効果については「お客様に案内するインスタグラムやLINEで通販サイトは紹介しているし、そこは意識している。実際には、住んでいる場所が遠くて、なかなか実店舗には来られないというお客様も多いと思うので、ネットで補完していきたい」(富田氏)。店舗への来客・売り上げとともに、関連する商品のネット販売売上高も増え続けているという。
「ケール」の魅力発信へ販路拡大
キューサイは、主力青汁の原料に使う「ケール」の認知に向け、業務用卸や流通専用商品の開発、コラボレーション商品の展開などで魅力発信に努めている。
2019年に「青汁事業」から「ケール事業」への転換を発表。ケール配合の化粧品を展開するなど、青汁にとどまらないケールの魅力を発信する。ケールを配合したスイーツやパンだけでなく、自社開発のレトルトカレーなども販売する。青汁の主要顧客層は中高齢層、化粧品ブランド「コラリッチ」は60代以降の女性層が中心であることから、20~40代への認知、顧客基盤の若返りを進める狙いもある。
販路開拓に向け、18年には法人営業課を立ち上げ、外食産業向けの業務用商品の展開を強化している。商品は、ホテルやレストラン、居酒屋、空港ラウンジのサーバーや保育園などに提供。約300店舗に導入し、年間約200万杯相当を販売する(昨年2月時点)。訪日外国人への対応を見据え「ヴィーガン認証」も取得している。
昨年には、青汁の流通専用商品を開発。スーパーやドラッグストアへの卸販売を始めている。販路拡大でケールの認知を高め、新規顧客との接点にする。
新型コロナウイルスの感染拡大で健康意識が高まる中、企業に福利厚生や健康経営の一環としてケール青汁を社員食堂に導入することなども提案している。導入では、社員食堂における設置に適したディスペンサー、温かい青汁も提供できる給茶機、省スペースで手軽に導入できるスティックタイプのケール青汁など、企業のニーズに応じた提案を行っている。
宿泊施設やリアルの場で試用体験
独自開発のマットレス「コアラマットレス」などのネット販売を行うKoala Sleep Japan(コアラスリープジャパン)では様々な”場所”でマットレスをはじめとした商品を試すことができるオフライン施策で新規顧客獲得や認知向上につなげている。
同社ではホテルと組んで、同社のマットレスなどを試すことができる専用宿泊プランを展開。直近では10月、東京・新宿のホテル「京王プラザホテル」に同社が販売するマットレス「NewコアラマットレスBREEZ」と枕「コアラピロー」を試すことができるプランの提供を始めている。京王プラザホテルが同日から販売を開始した「ココロとカラダを整える」をテーマに、ヨガ体験や健康的な食事などを提供する来年3月末までの秋冬限定の宿泊プラン「セルフリセット旅」(宿泊料金は1万4000円~)で実施したものでマットレスと枕は全3室に提供している。
このほか、昨年11月に大阪市内、今年2月には名古屋市のホテルと組んでそれぞれ同社のマットレスなどを試すことができる専用プランを展開するなど同様の取り組みを行っている。
宿泊時の寝具として試してもらう取り組みとしては11月から、新たに東京・奥多摩のグランピング施設「Circus Outdoor TOKYO」の全部屋(テント)にマットレス「Newコアラマットレス」を提供している。シティホテルとは異なるアウトドアフィールドの宿泊施設での試用は宿泊者にとっても一味違う体験となるようで、新規顧客獲得に期待しているようだ。
同社ではこのほか、リアルイベントも実施。7月1~31日までの期間、東京・表参道に同社の寝具を試すことができるショールーム「コアラショールーム」を開設した。主力のマットレス「コアラマットレス」のほか、枕「コアラピロー」、ベッド台「コアラベッドフレーム」など寝具のほか、「コアラダイニングテーブル」「コアラワークデスク」「コアラソファー」など同社が近年、日本でも販売を本格化させた家具なども店内で試すことができるものだ。
また、11月6日から2日間、東京・六本木の商業施設「東京ミッドタウン」内のスペースにマットレスを試用することなどができるイベント「コアラ・ラ・ランド♪」を開設。「Newコアラマットレス」に実際に横になって、寝心地や機能性を体験できたり、同マットレスの特長である振動吸収力をPRするためにウェブ動画で配信して話題となった同マットレスの上で飛び跳ねてもマットレスの隅に置いたワイングラスが倒れない様子を捉えた「ワイングラスチャレンジ」を実際に行えるものだ。
なお、11月7日には女優のすみれさんを招いて、「Newコアラマットレス」を実際に試用したり、「ワイングラスチャレンジ」の体験などを行なうプロモーション活動を実施し、認知度アップを図る取り組みも行っている。
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