伊東ワコール社長
ワコールホールディングス(HD)は気候変動課題の解決に向け、本格始動した。国内事業における温室効果ガスの自社排出量ゼロ化、ワコール単体の製品廃棄(現状1%)のゼロ化、環境配慮型衣料素材の使用比率50%(10%)を柱とする「環境目標2030」を設定。何よりも「環境問題を経営の中核に据える」(伊東知康ワコール社長)ことを鮮明に打ち出した。
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国内の事業所・工場・流通センターのCO2(二酸化炭素)排出量は、6500トン(ピーチ・ジョン・トリーカ除く)に過ぎず、ソーラーパネル活用などで自社排出量を無くしていく予定。
対して、サプライチェーンにおける排出量(スコープ3)は、全体の98%、33万トンと大きい。中でも「購入した製品・サービス」は30万トンと圧倒的であり、削減には素材メーカーなどとの緊密な連携が必要となる。
今期中に目標や削減プロセスを議論し、来年4月からの新中計で数値目標を開示する計画だ。伊東社長は、「早めに当社の姿勢を明確にすることで、様々な取引先と目標を共有しながら、どういう形で取り組みを進めていけるのか、議論を促進したい」と強調する。
業界の課題である廃棄問題に関しては同社は模範企業。創業期から「総生産・総在庫・総販売」の仕組みを作り、廃棄1%を達成しているが、もう一段のレベルアップを行い、ゼロ化を目指す。さらに、生地や部材での廃棄材料削減に向けた取り組みも加速する方針だ。
環境配慮型素材の活用強化は、材料のリユース、リサイクルを含めた目標となる。同時に、「本当の意味での環境配慮型素材とは何か、品質を含めた定義作りも進めていく」方針。当面、商品面では、七彩の100%植物由来のトルソー「ビオトルソー」、有機栽培綿やマニラ麻を原料とした和紙などを使ったインナーで9月から発売した新商品「ナチュレクチュール」、22年春夏物から直営店中心に発売予定で、再生可能なナイロン・ポリウレタンを使った回収・再資源型ノンワイヤブラ「ルーピング」などの拡販を進めていく。
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