本紙姉妹誌の「月刊ネット販売」で実施した売上高調査「ネット販売白書」では、2020年度のネット販売実施企業上位300社の合計売上高は6兆1443億円となり、前年調査の4兆8042億円と比べて27・9%増加した。コロナ禍の影響でEC化が加速。前年に引き続き、アマゾンジャパンが2位以下を大きく引き離す結果となった。(9月25日発売の「月刊ネット販売」10月号「第21回ネット販売白書」に300社の売上高ランキングと商材別市場解説を掲載)
300社の内、左表では上位30社までを掲載。30社の中で増収となったのが23社で、その内21社が2桁増収となり、減収企業は1社のみだった。アマゾン以外では、家電量販店企業のEC事業の躍進が目立っている。
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ランキングの上位企業を見ると、トップとなったアマゾンジャパンでは、昨年4月から玄関先や車庫など顧客が事前に指定した場所に商品を配達する、いわゆる「置き配」について、都内を含む30都道府県で標準の配送方法として採用したほか、スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションと組んで、ライフの商品を受注後最短2時間で配送するサービスの展開エリアを拡充。コロナ禍で増え続ける受注、配送、ニーズに効率的に対応する施策などが奏功した。
2位のヨドバシカメラについては、前年比60・3%増の2221億円となり、上位30社の中で最も伸び率が大きくなった。通販サイトでは日用品や食料品、飲料なども多数取り扱っているほか、購入額によらない送料無料、追加料金なしでの注文当日の配達、追加料金なしで最短2時間30分以内に届ける「ヨドバシエクストリーム」が他社との差別化の鍵となり、大幅な増収につながったとみられている。
3位は同じく家電量販店ジャンルから、ビックカメラがランクイン。同37%増の1487億円となった。ビックカメラ単体では同51・6%増。特に下期は前年同期比67・2%増と好調だった。グループであるコジマのネット販売は前期比35・8%増となった。通販サイトでは、同社が編集したカテゴリーごとに商品の特徴や使い方をまとめた特集ページを強化。商品の販売の後押しとなっているほか、検索流入にも貢献しているという。
家電量販店の躍進が目立つ
ジャンル別に見ると、「家電」では今回、躍進が目立った家電量販店企業から、上新電機が全体の8位にランクイン。「楽天市場」店舗を対象にした「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」において、同社店舗が4年ぶりに総合グランプリに選ばれるなど好調だった。そのほか、ヤマダデンキもトップ10入りを果たしている。また、エクスプライスについては同20%超の増収で全体21位となった。
総合・日用品は全体的に成長
「総合・日用品」ジャンルではアマゾンジャパンに次いでDINOS CORPORATIONや千趣会、ジュピターショップチャンネルなどが続いている。EC市場が全体的にコロナ禍による巣ごもり消費増を受けて成長しているが、特に生活に密着した様々な商材を展開し、日常的に利用されている総合EC事業者が受けた恩恵は大きかったようだ。
また、全体17位のアスクルが運営する「LOHACO(ロハコ)」については、ソフトバンクが携帯電話利用者向けに行う販促キャンペーン「サイバーサンデー」やヤフーの大型販促セール「超PayPay祭」などグループ企業の販促施策を活用して売り上げを伸ばしている。
ZOZOの首位が続く衣料品
前年に引き続き、「衣料品」ではZOZOがトップとなった。21年1月の年始セールや3月のコスメ専門売り場「ゾゾコスメ」開始時のテレビCM効果などで新規顧客の開拓に成功。サイト訪問者に対するレコメンド戦略を磨いてきた成果もあり、「ゾゾタウン」の年間購入者数は前年比121万人増の948万人に拡大している。
次点のユニクロも、同29・3%増の1076億円となり、EC事業で同社初となる1000億円の大台を突破。特に下期は緊急事態宣言による実店舗の休業などを受けて、前年同期比54・7%増と大幅に伸長。通販サイト刷新をはじめ、デジタル広告やテレビCMでECに関する情報発信を強化したことに加え、アプリ会員の特別限定価格を開始したことで新規顧客数が大幅に増加し、売り上げを押し上げた。
オイシックスが食品初の大台に
「食品」分野は多くの企業が好調な業績を挙げている。全体で6位となったオイシックス・ラ・大地が同ジャンルでの首位を獲得。売上高は同40・9%増の1000億円で、食品専門の企業として初めて大台に乗せた。緊急事態宣言発令に伴う外出自粛の影響で顧客ニーズが急増し、食品宅配全3事業とも新規顧客の獲得増、さらに1人当たりの購入額を伸ばしている。
次点は432億円のイトーヨーカ堂だが、前年比では4・3%の減収。メインとなるネットスーパーが前の期に比べ10・1%減となったことが響いた。ネットスーパーは構造改革で実店舗閉店に伴うものとしている。また、グループ会社で弁当などの宅配業務のセブン・ミールサービスも上位に入っている。
化粧品や健食上位30位逃す
「化粧品」と「健食」ジャンルについては、全体でトップ30入りした企業はなかった。まず、「化粧品」は調査企業の中ではオルビスがトップを獲得。そのほかファンケルや資生堂が続いている。
当期の化粧品ジャンルは、店頭市場においてこれまで成長をけん引したインバウンド需要が大きく減少。テレワークの拡大や外出自粛、また、マスクの着用機会の増加により肌悩み、スキンケア習慣も変化した。越境ECなど、海外戦略を積極化する企業も増えている。
そして「健食」については調査企業中でトップとなったのがファンケル。次いで、ニコリオ、ファビウスという順になっている。
健食ジャンルはこの数年、ECが主戦場となる中、マーケティングでは「定期縛りを背景とする強力なオファー訴求」、広告クリエイティブでは「コンプレックスの刺激する表現」など、インパクトの強い広告戦略が奏功。だが、市場では、20年7月の「ステラ漢方事件」を一つの契機として変化の兆しが見られており、行政の執行強化の方針等を受けて、多くのプラットフォーマーは広告適正化に舵を切っている。
◇表の見方
調査は2021年7~8月、通販・通教実施企業約1000社に対して行った。無回答の企業に関しては本誌や姉妹紙「週刊通販新聞」の取材データや公表資料、民間信用調査を基に本誌推定値(「※」)を算出。社名横の「受」は受注比率から算出した売上高を示す。
BtoCでもデジタルコンテンツやチケット販売、宿泊予約、金融などの非物販に加え、オフィス用品などBtoBも調査対象から外した。
対象決算期‥「前期実績」は20年6月~21年5月に迎えた決算期、「今期見込み」は21年6月~22年5月に迎える決算期。増減率は前の期の数値が判明していない企業や変則決算のため比較できない場合については掲載していない。
表内項目の「EC化率」は原則、総通販売上高に占めるネット販売売上高の占有率。一部、総売上高に占めるネット販売売上高の占有率となる。表中、企業名横の「◎」は次の理由による。
(1)アマゾンジャパンは物販以外のその他事業を含むアマゾンの日本における売上高(3)ビックカメラはコジマ、ソフマップを含むグループにおけるネット販売売上高の合計(4)ZOZOは会計上の売上高で、商品取扱高(流通総額)は4194億3800万円(6)オイシックス・ラ・大地は一部カタログなどの売り上げを含む(11)DINOSCORPORATIONは3月1日にディノス・セシールから社名変更した(13)マウスコンピューターは店舗売上などを含む(15)アダストリアはモール経由を含めた全EC売り上げで、うち自社ECは約280億円(18)ベイクルーズは他社ECを含めた全EC事業の売上高で、うち自社通販サイト「ベイクルーズストア」の売上高は約391億円(20)キタムラは宅配売上と店舗受取売上を合算した「EC関与売上」の推定値(21)エクスプライスは4月1日、MOAから社名変更(22)イトーヨーカ堂はネットスーパーなどの売上高(23)オンワードホールディングスは外部モールを含めた全EC売上高で、うちグループの自社EC売上高は約357億円(24)TSIホールディングスは外部モールを含めた全EC売上高で、うちグループの自社EC売上高は約179億円(25)ワールドはグループEC売上高の合計(28)ユナイテッドアローズは外部モールを含めた全EC売上高で、うち自社EC売上高は約102億円
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