【上海支局】マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な問題となるなか、180日で生分解率95%というポリエステルが中国で注目されている。オーストラリアの化学繊維メーカー、インティミティが開発した生分解ポリエステル「CELYS」(セリス)だ。薬品を使わずに堆肥(たいひ)化分解が可能で、短繊維から市場に投入する。すでに22年春夏向けのテキスタイルへの採用が始まり、毛紡績大手の江蘇丹毛紡織服装は10月のインターテキスタイル上海で新開発の生地を見せる。
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セリスは、ポリエステルを重合する際に第3成分の親水性モノマーを配合し、ポリエステルは親水性となり微生物に分解されるのが特徴。セリスを使った服などを廃棄しても、工業堆肥の条件下で好気性微生物により、二酸化炭素、水、バイオマスに完全分解されるという。
国際的に認可された工業堆肥標準は「180日で90%以上生分解」だが、セリスは「147日で90%超」のデータがあり、「180日で95%以上生分解」の水準まで得られた。微生物による生分解後の残留物は肥料として土に戻り、土壌中の動植物に与えても無害という結果も、ドイツの検査試験会社テュフラインランドから認証されたという。同社はセリスを「画期的な新型ポリエステル」として打ち出す。
すでに開発した短繊維は、風合いは綿に近く、吸湿速乾性があり、ピリング防止に優れ、カチオン染色も可能。水分率は1.6~1.8%(一般的な普通のポリエステルは0.4%)のため応用範囲も広く、Tシャツや下着、デニム、シャツ、スーツ、セーターなど日常着から、スポーツウェア、縫い糸などにも使える。
江蘇丹毛紡織服装がインターテキスタイル上海で見せるのは、セリスの短繊維を使ったスーツ地やシャツ地。ウール混などを打ち出す。
インティミティは15年に設立した繊維メーカー。約5年をかけて20年末にセリスを開発したという。
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