イギリス本社のほか、パリ、ミラノ、ニューヨーク、上海、香港など世界の主要都市に直営店を展開し、成長を続けるステラ マッカートニー。デザイナーのステラ マッカートニー自身はイギリスの田園で育ち、自然と動物と人が共に生きることをブランドの信念としても貫いてきました。創業以来、皮革や毛皮は一切使われていません。厳選し独自で開発をしている商品素材へのこだわりのほか従業員もサステナビリティについて学ぶことで環境問題等に目を向け、また働く一人ひとりが自身のウェルビーイング(心身の健康)にも関心を持つことが求められます。今回は、ステラ マッカートニージャパンの店舗を統括する4名のマネージャーの方に、働く楽しさと学びの機会についてさまざまな角度からお話を伺いました。
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<プロフィール>
(トップ画像右から)
Commercial Director 森 章光さん
Area Manager 瀧 亜子さん
Area Manager 星加 美晴さん
Assistant Area Manager 鳥本 洋介さん
――まず、ステラ マッカートニーというブランドについてお聞かせください。
森 章光さん(以下、森):2001年にロンドンでデザイナーのステラ マッカートニーが設立したブランドで、ラグジュアリーでありながら、「ベジタリアンカンパニー」としてレザー、フェザー、ファーを使わないことを最も大事にしてきました。例えば、レザーの代わりに「ベジタリアンレザー」と呼んでいる水溶性樹脂を用いた光沢のある素材を使い、ファーのように見える商品には「Fur-Free-Fur」という、ファーを使用しない商品づくりをしています。最近、世の中の動きでもサステナブルが意識されるようになりましたが、ステラ マッカートニーでは創業からずっと、素材の調達や開発に至るまで、環境や動物を犠牲にせず、「サステナブル」でありながら、魅力的な商品を展開することとの両立は不可能ではないことを証明し続けてきました。
―デザイナー自身の思いが強く反映されているのですね。ステラ マッカートニー氏には、どのような印象をもっていますか。
森:イベントやトークショーなど、ステラ本人が日本のお客様に直接、彼女自身の想いや考え、熱意を伝える機会がこれまでにもありました。コロナ禍以前ですと、年に1回くらいの頻度で来日しており、私も会う機会がありました。彼女はとてもフレンドリーで明るく、お客様に対して偉ぶることなく同じ目線で接しますし、非常にオープンマインドと感じました。
―イギリス本社のメンバーとの接点も多いようですね。日本法人は2012年に設立されたとのことですが、現在の店舗展開や社員数、資本関係など規模はどのくらいでしょうか。
森:現在、百貨店を含めフルプライス店が21店舗、アウトレットが2店舗、計23店舗を展開しています。2019年にLVMHグループとパートナーシップとして提携しています。国内の社員は本社が30名弱、店舗が100名~120名ほどで構成されています。エリアマネージャーも私も店舗をよく回るので、社員の顔が覚られるくらいの規模です。実は、ステラ マッカートニーの日本法人ができる以前の代理店だった時代から、日本は高いプレゼンスをもってきました。実際に、認知度とリンクするバッグの売上をみると、現時点では海外拠点に比べて日本の売上は圧倒的に高くなっています。
―早い段階から日本のプレゼンスも高く、バッグの国内売上も好調とは素晴らしいですね。そのステラ マッカートニージャパンにおける仕事内容には、どのようなものがあるのでしょうか。
星加 美晴さん(以下、星加):販売員としての仕事内容は、接客販売、顧客管理、在庫管理など多岐にわたり、店長や副店長になると人材育成もあります。ステラ マッカートニージャパンらしさとして挙げるとすれば、アットホームな雰囲気で互いのつながりが強く、現場と本社の間で活発に意見交換をしやすいところですね。商品やサステナブルに対しての知識は、入社してからトレーニングの機会があります。まず、The Bigger Pictureという新入社員研修があり「サステナブルとは?」という基本のほか、ブランドの歴史やウェルビーイング(心身の健康)、マインドセット(心の持ち方)などを学びます。単に動物を守りましょうということだけではなく、一人ひとりが自分の最善の状態を保ち、そして貢献していくにはどうしたらいいのか、ということを一から勉強できる場所になっています。商品知識については、春夏秋冬の各シーズンの直前に必ず、トレーニングマネージャーから、素材や商品の説明、サステナビリティ素材などについてのトレーニングがあります。
―お客様に対して、商品や素材を大切にしているブランドだということを謳い、伝えなければなりませんからね。接客の現場は、サステナブルについて意識の高い方が多いのですか。働く環境はどのような雰囲気でしょうか。
星加:最初は皆、サステナブルについて興味はあるというくらいです。知ってなければならないわけではないので、働いているうちに興味がわいて自分で調べる人が多いように思います。一人ひとりの個性を大切にしているので、こうじゃないとダメということはあまりないですね。いろんな意見が出て「それいいね」「それ楽しそう」「やってみよう」という雰囲気を大事にするなかで、それぞれが働く楽しさを感じていると思います。
瀧 亜子さん(以下、瀧):働く楽しさを感じられた例を挙げますと、店舗にとって売上予算達成というのは、一番やりがいがあり達成感を味わえるものです。また、立場に関係なく良い意見があればすぐに採用するムードがあるので、自分の提案したことが採用されたときには大きな喜びを感じるスタッフも多くいます。自分の提案したことが実際に店舗内で採用され、皆でアクションを起こした結果、売上成績にもつながり、新しいお客様のご来店にもつながることは大きな達成感を得られます。ここに「やってよかった」「このお店で働くのは楽しい」という意識が生まれているように思います。そのほか、ステラ マッカートニーならではといえば、店舗スタッフが商品の買い付けにも参加しています。
―楽しそうですね。それができるブランドは少なそうです。
瀧:セレクションが出てきた時点で、サイズ展開や色などの希望を店舗からバイヤーへダイレクトにリクエストできる機会があります。シーズンごとに年4回、各店舗の意見をバイイングに色濃く反映できるのは楽しく、また自分でリクエストを入れた商品には思いも強くなるものです。
―販売スタッフの声が反映されると、スタッフのモチベーション向上につながりますね。業務を支える福利厚生の面で、ステラ マッカートニーらしさを感じられる取り組みはどんなものがありますか。
鳥本 洋介さん(以下、鳥本):まず「ヨガ」があります。会社理念の「サステナブル」には、物、自然、食べ物、動物だけでなく、従業員のウェルビーイング(心身の健康)やマインドフルネスという視点も含まれています。任意参加ですが、月に1回ヨガの先生をお招きして、ヨガとメディテーション(瞑想)で心身を整える機会が用意されています。新型コロナ以前は、ヨガの先生をオフィススペースへお招きして実施していましたが、今はオンラインで、店舗で働くスタッフや早朝に来られない人も参加できるようになりました。また、先ほどご紹介した「The Bigger Picture」という新人研修で、今年はヨガとメディテーションを体験できる時間も新たに設けられ、参加者からはとても好評でした。皆それぞれに忙しく、まだデジタルやテクノロジーに囲まれている生活のなかで、あらためて頭と心をクリアにし、身体もリラックスすることで、本来の自分の柔らかな気持ちを取り戻せる効果があるように思います。
二つめは、「ミートフリーマンデー」です。これは地球環境に配慮して、ベジタリアンメニューを食べる月に1回の日で、元ビートルズのポール・マッカートニーが、娘のステラと共に提唱し続けている活動です。畜産に起因する温室効果ガスや、余剰生産となった食料廃棄問題等を背景としています。ベジタリアンを強制するのではなく、その背景にある問題意識を知り学ぶためのものです。ランチ代は会社から補助が出るので、気軽な気持ちで楽しみながら参加できます。本社では現在、表参道エリアにあるビーガンレストランと提携しています。店舗では、それぞれその地域のビーガンレストランを検索したり、可能な範囲で「ミートフリーマンデー」を実施しています。
もうひとつは、ビーチ・クリーニングです。これは不定期の開催ですが、2019年の夏はイギリスではロンドンを横断するテムズ川の清掃、日本では江の島での海岸のごみ拾い運動に参加しました。お子さん連れで家族一緒に楽しく活動する人もいたようです。入社後のトレーニングにおいて、地球に害を及ぼす海洋ごみをなくすためにプラスチックを使わないようにしましょうという話をしています。この取り組みもミートフリーマンデーと同様、こういう活動や団体があることを社員に知ってもらうきっかけのひとつです。今後、会社が大きくなるにつれて、これら以外にも活動が増えていけばいいなと思っています。
―周知していくことで、このようなサステナブルな取り組みに興味ある人が増えるといいですね。最後に、お話いただいたようなステラ マッカートニーの環境で、どういったキャリアを積んでいけるのか、どこを目指していけばいいのか、そのための研修やトレーニングにはどんなものがあるかについて、教えていただけますでしょうか。
星加:私たち自身がそうなのですが、セールスアソシエイトとして入社し、店長を6~7年経験したところで日本法人が設立されて、今までになかったエリアマネージャーというポジションに着任したというキャリアアップ例があります。入社した時点では、ゆくゆくはエリアマネージャーになりたいと思っていたわけではなく、会社がどんどん大きくなるにつれ、さまざまなポジションができて仲間が増えて、という感じでした。会社や組織が成長し、変革していく段階では、現時点では存在しないポジションが作られるような可能性もあると思います。そのときが来て、いつ声がかかっても良いように準備していくことが大事ですね。研修やセッションのチャンスは、国内にもありますし、海外の同僚と一緒に受けたり海外のマネージャーが提供してくれものもあります。それをキャリアアップの機会としてとらえることもできます。
―キャリアアップに生かすチャンスは常にあり、それをどうとらえるかということですね。実体験に基づいて、ステラ マッカートニーで働いていて良かったなと思えることをお聞かせください。
星加:周りの人があたたかく、多少失敗したり間違えたりしても笑って許してもらえるところがありますね。何でもやってみたらという社風で、アドバイスをもらったり、道を示していただいたりすることはあっても、怒られるとか怖いとか思うことはまったくないことが入社して良かった点です。もちろん、成功したときには一緒にものすごく喜んでもらえる雰囲気があります。上司と部下の距離が近くわいわい言える環境なので、人と接することが好きな方には合っていると思います。
瀧:周りの人のことを考えられる人が集まっている会社だと思います。お客様やチームのことを本気で考えているやさしい人が多いと感じています。その中で、エリアマネージャーの仕事もそうですが、挑戦する機会があるという風潮は入ってよかったなと思います。
―ありがとうございました。
ベジタリアンカンパニーの理念、ブランドの商品に込められた想い、従業員が働く環境づくりやキャリアアップなど、様々な角度からお話いただいた内容は、一人ひとりが自己成長に責任を持ち続け、企業活動と社会活動の関連性に意識を持つ、ということにつながっていました。創業当時から「サステナブル」を意識してきたステラ マッカートニーが目指す次のステージに期待が高まります。
Stella McCartney
英国出身のステラ・マッカートニーによって創設されたラグジュアリーブランド。
地球環境に配慮したベジタリアンカンパニーとして、レザーやファーを使わない製品を展開。
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