神戸市須磨区で地元の地名をプリントしたTシャツがじわじわ広がっている。レディスセレクトショップ、アントワープ須磨板宿店が販売しており、地元愛の強い顧客や近隣の商店主などが購入層。年配客中心の地元市場に若い人が増えるなど、予想外の波及効果も出ている。(古川富雄)
同店が販売しているのは、胸元に「ITAYADO(板宿)CITY」、「SUMA(須磨)CITY」とプリントしたTシャツ。後ろ身頃には神戸の海、山と地元民が熱狂するイカナゴ(つくだ煮にする小魚)の刺繍が入る。白ベースと黒ベースがあり、大人用は男女が使えるよう3サイズ(税込み4290円)で、キッズ用(3850円)もある。今年3月に予約を受けたところ、用意した在庫をはるかに上回る150着を受注した。その後も同店とECで毎月受注し、売れ行きは順調という。インスタライブには商店主が参加することもあった。
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もともと地名プリントのTシャツは19年に始まった「SHIOYA(塩屋)CITY」がきっかけ。これを企画したのは、神戸・塩屋出身で現在東京で活躍するデザイナー、OKANCEさん。このことを知った同店の湯浅由佳子バイヤーが「板宿、須磨バージョンも作ってください」と依頼したところ、快く引き受けてくれ、オリジナルフォントのTシャツが出来上がった。湯浅さんは地元を盛り上げたいという一心だったという。本来は昨年春に販売予定だったが、コロナ禍で1年延びての発売となった。
購入しているのは同店の顧客だけではない。普段は入ってこない男性がTシャツを求めてドアを開けることもあった。板宿は複数の市場、商店街があり、多くの商店主も買いに来てくれた。かまぼこの著名店、黒田蒲鉾の黒田千博板宿本店店長は、自店でもTシャツの存在を宣伝してファンを広げている。「(店がある)市場は年配の人が多いけど、Tシャツのことで会話になったり、若い人が来てくれるようになった」と話す。
生産は九州の工場に依頼している。工場はコロナ禍で仕事が減っており、お礼にとアントワープの刺繍入りキャップを送ってくれた。これがスタッフに好評で、商品化してTシャツを予約した人に紹介すると、税込み4500円にもかかわらず32個が売れた。
コロナ禍でコミュニケーションがとりにくいが、顧客、地元住民や商店関係者、さらには製造業者もつながった取り組みとなった。
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