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素材作りの農業から商品化までを手掛ける、沖縄発「レキオ」の挑戦

レキオ株式会社 代表 嘉数 義成
レキオ株式会社 代表 嘉数 義成

素材作りの農業から商品化までを手掛ける、沖縄発「レキオ」の挑戦

レキオ株式会社 代表 嘉数 義成
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生まれ育った沖縄でしかできないことを追求しながら「世代を越え受け継がれるモノ作り」をコンセプトに、沖縄発のアパレル事業を展開するLEQUIO(レキオ)。代表の嘉数氏の仕事は、生地や服の染色に使用される植物「琉球藍」を自ら育てることから始まる。素材づくりから徹底してこだわる理由とその先に見えてくるものは何なのか、嘉数氏に話を伺った。

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嘉数 義成(かかず よしなり)さん
1984年沖縄生まれ。沖縄県内のデザイン系専門学校卒業後、フリーで洋服づくりの仕事をしたのち、2009年「レキオ」創業。リゾートファッションの「レキオ」と、バッグ・小物が中心の「メイド・イン・オキュパイド・ジャパン」を展開するほか、2020年にオープンしたリゾートホテル「星のや沖縄」のスタッフ用制服デザインも手掛ける。

―嘉数さんがアパレル業界に入ったきっかけは何だったのでしょう。

もともとファッションには興味がありました。というのも私は身長が184cm、足は30㎝近くあり、学生時代に服に興味を持っても、多感な時期でありながらサイズが大きいため気に入った服のサイズがなかなかなく、日本の既製服では普通に着られるものが少なかったので、米軍の払い下げの店や古着屋に出入りし古着やスニーカーを買っていました。学生時代にファッションデザインを学んでいたことから、在学中から米軍払い下げの古生地やテント地を使ったオリジナル商品を自分で作り、販売していました。その後、2009年にアパレルメーカー「レキオ」を立ち上げました。「レキオ」という社名は、沖縄に来た外国人が「琉球」を「レキオ」と発音していたのが由来です。

―当時から、沖縄でしかできないことへのこだわりをお持ちだったのですね。一方で、数年前からは服の染料となる琉球藍を育てていると伺いましたが、なぜアパレルなのに「農業」に関わっていらっしゃるのでしょう。

元々私の実家は琉球舞踊の道場を開いていた親の影響もあり、幼少期から紅型や芭蕉布、絣(かすり)など沖縄の伝統的な着物を目にする機会がありました。着物も服装の一つでありながら、現代では日常的に着物を着ることはほぼありません。そこで「普段着に身につけられるものに、沖縄ならではの技術や文化を取り入れた何かを作りたい」と思って着目したのが「琉球藍」という植物を使った「藍染め」でした。当初は染色を専門の職人さんに依頼していましたが、職人さんの数も少なく手間の掛かる手法なので、染めの仕事を受けてもらえても仕上がるまでとても時間が掛かったり染めてもらえる量にも制限がありました。そもそも原料である琉球藍の生産量も少なく、ビジネスとして継続するには非常にシビアな現実を知りました。原料も職人も少ないのでは商品が安定的に供給できませんが、琉球藍で染めた服を作る道を諦めきれず、「畑から自分でやろう!」と決意しました。自分よりも幾つも先輩の方々に無理を言ってお願いするよりも、若くて動ける自分が畑に足を踏み入れ立ち上がるべきだと気がついたのです。

―とは言っても服づくりの傍ら、農業に挑戦というのは大変ではなかったですか?

大変でした(苦笑)。農業はまったくの初心者でしたしね。琉球藍は6年前に始めましたが、この原料作り以前の問題として、まず畑となる土地を貸してもらうまでに一苦労。やっと借りた土地が粘土質の赤土の酸性土壌の成分が偏っている土地で、琉球藍を育てるのには不向きなところだったため、まず土づくりから始めなくてはならない状況でした。加えて耕作放棄されて長い土地でした。沖縄は暖かい気候で四季の移り変わりが県外に比べるとあまり無いため、雑草が年中伸び放題。雑草やススキが人の背丈を優に超え、畑は荒れ放題でした。畑づくりに1年かかり、ようやく琉球藍の苗を植える段階になりましたが、「琉球」という暑い地域の夏っぽい名前がつく植物にもかかわらず、何と紫外線にめっぽう弱い(笑)。日光対策用に遮光ネットを張って日陰を作ったと思ったら、今度は台風の突風でネットもろとも吹き飛ばされて、苗が全てダメになってしまったことも…。何せ自然相手なのでコントロールできないことも多く、最後まで無事に育てるまでに時間も手間もかかります。

―染料前の原料調達までで、もうすでに1年半くらい経過していますよね(笑)

はい。一般的なアパレルでは、半年〜1年前(もっと短期スパンで展開するところもあると思いますが)に企画して商品化までいけますが、うちの場合そうはいかない。いま畑で作っているものは、約2年~2年半ほど先に商品化するためには、今植えておかない作ることが出来ないというスケジュールです。

―農業から始めて商品化するまで、そんなに年月がかかるのですね!どういう工程で、どう時間がかかるのか具体的に教えてください。

ざっくりと話すと、まず畑づくりに1年、苗植えから収穫までに半年~9ヶ月、その後、染料を作る工程で1ヶ月。生地から縫製までの段階で2ヶ月。商品化としての完成まで、トータル2年~2年半かかります。ちなみに現在は染料の製造と植え付けを行なっている時期です。

―一般的にアパレル業界にとって「素材」は自分たちで作るものではなくて、仕入れるものですよね。

その流れは多いと思います。たまたま琉球藍という固有の品種を染料に加工していますが、そもそも藍染の染料がどのような工程で作られて染色が可能な状態になるのかなんて知らないデザイナーも沢山いると思います。そこまで知らなくても何となく物が作れてしまう、トレンドとして取り入れられ流行り廃りに影響される物作りはしたくなかった。でも、私は沖縄由来のものにこだわりたかった。原料づくりも染料づくりも大変な作業ですが、「やるからにはすべての工程を沖縄で行えるようになりたい」というを目標を持って取り組んでいます。うちの商品は沖縄で出来ることの可能性を追求したい、という気持ちがあったからこそ、ここまでこだわることができたのだと思います。このような思いから、うちではトレンドをそこまで意識しておらず、あくまでも沖縄という土地から感じる物づくりを形にすべく、日々取り組んでいます。

―沖縄ルーツのモノづくりをされていますが、どの工程が沖縄なのか教えてください。

全ての素材を沖縄で作ることができれば良いのですが、現状はまだ全ての工程を沖縄で作っているわけではありません。生地の調達や縫製は、現状県外の仕入れ先や工場も利用しています。企画から商品化、染色は沖縄です。複雑な服やオーダーメイドの依頼もあり、生地や商品を染める前後の加工も複雑なため、細部まで納得できる仕上がりになるよう弊社アトリエにて手作業で行っている部分も少なくありません。

―最近は、大学と共同で繊維研究も行っていらっしゃるとか。

OIST(沖縄科学技術大学院大学)は沖縄県内にある科学技術研究を行っている大学です。繊維系研究者と共同で、沖縄由来の繊維の素材開発を行っています。まだ研究段階なので詳しくはお話できませんが、沖縄には染織りの伝統工芸が多く残り、素材の調達方法が農業と結びつきの強い自然布が残っています。その繊維を研究し解明することで、沖縄ならではの繊維を基にした産業を作ることが出来ればと考えています。

―そうした数々の活動の先に見えているものは?

現在研究している繊維も含め、何か一つでも沖縄に根付いたものを活かした産業の土台作りができれば、後世に残る沖縄から発信する物事に繋がっていくと考えています。いつか私がいなくなった後でも、物に向き合い作っていく仕組みを残すことで地元の発展につながる役目が少しでも果たせたらと思い、日々取り組んでいます。

―では、それに欠かせないことって何でしょう?

まず「地域を知ること」だと思います。自分たちが生まれ育った土地の伝統文化や技術や受け継がれてきた分野が何かを学び、それらを継承するには何が必要かという問題意識と、実行に移すチャレンジ精神ですね。ゼロから始めるには勇気が入りますが、継続することで必ず何かにつながっていくのではないかと信じています。

―そうした取り組みは、沖縄だけに限定されるものではないかもしれませんね。

まさに、その通りです。たまたま私は沖縄出身なので沖縄の地にこだわったモノづくりをしていますが、日本全国に、その地域の伝統や文化として根付いている「その地でしかできないもの」があります。たとえば染料を例に挙げると、徳島県で生産されている「蒅」(すくも)はタデ科の染料の元となる植物を刈り取り乾燥させ、数ヶ月間かけて発酵させる製造方法で作られています。一方、沖縄の琉球藍は沈殿法と呼ばれる熱帯地域特有のまったく異なる製造方法で作られます。地域が変われば同じ「藍」でも植物の品種や製法が全く異なるように、その土地の気候や商環境によって変化し、長い年月をかけて文化として浸透していった事柄にはその土地ならではの技術や技法が数多くあります。染料に限らず、このような事例は日本全国にたくさんありますから、新しい発見や勉強になることも沢山あります。取り組んでいる人たちが互いに交流や情報交換をしながら何か新しいことができればおもしろいと思いますし、それによって自分の立ち位置を再確認し活動を良い方向に進める事ができると考えています。その地に伝わる文化や伝統、歴史を掘り起こしてみると可能性が見えてきますし、場合によってはその土地で失われかけている技法や技術が全く新しい可能性を秘めている事もあるかもしれません。ゼロから始めるとなるとかなりの覚悟を持って臨まねばなりませんが、完成したものを目にすると感動するのです。弊社商品もそうですが、単なる既製品や大量生産のそれとはまったく違う。なぜなら作り手のこだわりや明確な想いが商品に強く込められていますから。

―「レキオ」の商品はどこで買えますか。

ウェブサイトからも購入可能ですし、実店舗では沖縄県内にあるリッツ・カールトンやブセナテラスをはじめとする、10カ所ほどのリゾートホテルでご覧になれます。その土地から生まれたブランドをその土地で購入いただくのも素敵な体験だと思いますし、「沖縄の息吹を感じさせてくれるリゾートウエアを着るためにまた沖縄に行ってみよう」そんな気持ちで着ていただけたら、作り手としてこれほど嬉しいことはありません。

―沖縄県外に販路を拡大するご予定は?

今のところまだご縁がありませんが、大歓迎です!うちの取り組みや商品に共感して頂き、「リゾートに行く時はレキオの服を着ていこう」と選択肢に加えていただければ嬉しいですね。

―最後にメッセージがあればお願いします。

全国各地で私と同じような取り組みをされていらっしゃる方々と繋がり、交流したいと願っています。その地域の文化や歴史を掘り起こせば、色々な可能性が見出せ、その地域でしか発信できない物事があります。そういった方々と出会い、繋がりを持ち、意見交換ができれば、相互の地元活性化にも貢献できるのではないかと。もし私の取り組みや、日本のモノづくりに少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひ一度沖縄へお越し頂きたいと思います。私のいるところは田舎で若者が全然いませんが、若い世代の方々でものづくりにご関心がある方に沖縄を知って頂ける機会や、将来何かのご縁でご一緒できるキッカケづくりになればうれしいです。

LEQUIO(レキオ)
LEQUIOとは沖縄にのこる外国語で大航海時代に琉球の事を、 渡来人が「LEQUIO」(レキオ)と呼んでいたことから由来しています。 その昔、琉球は小さな島国でありながらも荒波を渡り、他の国との交流を持ち、 色々な国の文化の影響を受け、独自の文化を築き伝えてました。 LEQUIOでは先人の技術や思想への敬意を表し「世代を越え受け継がれるモノ作り」をコンセプトに、 異国の地と貿易をして栄えた先人達と同じように文化、技術、美意識を今の時代のやり方で伝えていく。 日本には昔から「御下がり」と言われる文化があります、親から子へ代々と繋げ受け渡していく物事には、 物を大切にする事だけではなく時代を超えて受け継がれ伝わっていくメッセージがあります。 生活の中に溶け込む物、自由で美しく世代が変わっても伝えていける物を生み出す事を目指しLEQUIO は進んでいきます。

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