2月23日から3月1日まで行われた2021-22年秋冬ミラノコレクション。コロナ禍が続いておよそ1年が経つが、ファッション界においても状況は一変し、街のあちこちを会場に行われていた華やかな祭典はデジタルファッションウィークと名を変え、パソコンやスマートフォンの画面がランウェイへと様変わりした。
●社会を通して浮かび上がるファッションの流れ
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コロナ禍での長い巣ごもり生活がデザイナーたちにもたらした感情は「外に出たい!着飾りたい!」という気持ちだ。そして困難な時こそ、その先には「夢や希望」が存在するのだ。きらびやかな装飾は着飾るには十分な要素であり、鮮やかな色柄は希望の光のように、強張った心を解してくれるようだ。キルティングやダウン、ファーの暖かなアウターは内から外へ気分が移行したサイン。サスティナビリティや多様性など社会の流れと共存するのもファッションだが、その先の活力を見出すために背中を押してくれるのもファッションだと教えてくれたシーズンだった。
●今シーズンのミラノのトピックス
ミラノのブランド事情としては、「フェンディ」のウイメンズアーティスティックディレクターにキム・ジョーンズが就任。1月に発表されたオートクチュールに続き初めてのレディスコレクションを発表した。かつて「ルイ・ヴィトン」のメンズでは「シュプリーム」とコラボして話題を集め、現在兼任する「ディオール」のメンズでもクチュリエというブランド立ち位置をしっかりキープしつつストリートにも落とし込んでいるが、「フェンディ」ではブランドの原点に立ち返り正統派エレガンスで直球勝負。奇をてらわないデビューシーズンが逆にキムのデザイナーとしてキャパの広さを感じさせた。
その他、シーズンや男女のコレクション発表という枠に囚われずその表現方法を模索している「グッチ」や「ボッテガ・ヴェネタ」が別の発表手段に切り替え、「ジル・サンダー」はパリコレクションへ移行。こうなってくるとデジタルでの発表なのに都市分けして日程を調整する必要があるのか?という議論が交わされそうだが、そこは取りまとめる協会をはじめ様々な事情があるのだろう。今回は協会の示すミラノファッションウィークに則って行われたブランドの中から私的ベスト3を挙げた。
●ベスト1「PRADA」ファーショールの裏面やドレス全面にスパンコールを配して煌びやかなドレスアップスタイルの一方で、グラフィカルなボディスーツをインナーにスーツのレイヤードスタイルで展開された「プラダ」。先シーズンからミウッチャ・プラダと共同デザイナーになったラフ・シモンズとのコンビネーションも2シーズン目にして絶妙な仕上がりだ。ミウッチャのグラマラスで女性的な観点とラフのグラフィカルでミニマルな視点のバランスが程よくて、二人のやりたいことへの折り合いの付け方にも大人のやりとりが垣間見られる。コレクションの後のデザイナー二人を囲んだディスカッションも必見で、彼らの脳内を覗き見ることができるお楽しみ付きだ。次代を読み解く先見性と感性が鋭い二人なので、仲違いしないか不安だが、長く続いてくれることを期待。
●ベスト2「VALENTINO」コロナの影響で国を跨いでの移動が憚られる中、パリから本拠地イタリアに戻ってきたのがピエールパウロ・ピッチョーリによる「ヴァレンティノ」だ。今回のコレクションはミラノの劇場を会場にライブ配信された。ライブならではの編集の許されない緊張感と、生演奏と生歌の声の響きや震えは、リアルタイムでこその心の振動が伝わり、このコレクションは画面越しであってもライブで見ることの大切さを感じさせた。そして圧巻の黒と潔いミニ丈のオンパレード!気品と若々しさ、グラマラスとミニマルが同居する美しいコレクションだ。
●ベスト3「MM6 MAISON MARGIELA」マルジェラグループのラインなのでパリと思われがちですが、ここ数シーズンはミラノで発表している。ジョン・ガリアーノによる「メゾンマルジェラ」がかなりガリアーノによるこのメゾンの解釈になったことでこちらの「エムエム6 メゾン マルジェラ」は創始者マルタンの姿勢を貫いているようだ。逆再生したショー構成はそれにつながるインサイドアウト(裏返し)、アップサイドダウン(逆さま)、バックトゥフロント(前後逆)といったリバース(反転)のアイデアが満載だ。今シーズン他のブランドでも多く見られた逆再生技だったが、さすが御家芸ともいえるデザインには一番フィットした演出。不思議な安心感と共感を覚えた。
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