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【インタビュー】フリーランスPRに聞く、新時代に求められるプレスとは

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時代の変化に伴い、さまざまな仕事のスタイルが変化している。2020年はとくにコロナ禍によってすべての職種が急激な変化を強いられ、それは今後も続いていくと予想される。そんな中ファッション業界におけるプレス職の仕事はどう変化しているのか、そして求められるスキルとは。フリーランスでファッションWEB・PRの仕事に携わるヨシムラミユキ氏に話を伺った。

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ヨシムラミユキさん
大阪府出身。大学卒業後上京し、ファッションブランド数社のプレスとして働いた後、フリーランスPRに。国際中医薬膳師の資格も持つ。現在はサスティナブルシューズブランド『Offen(オッフェン)』のPRに携わる。

―ファッション業界のPRの仕事に携わってから、約20年になるそうですね。そもそもプレス系の仕事に就いたきっかけは何だったのでしょう?

芸術系の大学で映像を学び、卒業後上京しました。私が大学を卒業した20年前は、ファッション業界では店舗での買い物が中心でしたが、買い物のスタイルに通販がプラスされた頃でした。当時は渋谷や原宿のカルチャーも盛んで、初めての仕事は渋谷の古着屋にて販売と、パソコンが得意なら通販業務も、少ない人数だったのでリース業務も任せるね、というところから気がついたら楽しくPR業がスタートしていました。

―会社員としてプレスの仕事をされたのち、フリーになったのはなぜですか?

就職してからの10年間は数社で社員としてブランドPRを担当しました。一番長く勤めたのはセレクトショップのレディースブランドですが、WEBSHOPでの売り上げが実店舗を初めて超えた時代でした。仕事内容も、WEBの世界観も含めてブランディングしていくという大きな変化と充実感がありました。そんな中フリーになったのは、単純にPR以外でやりたいことがあったからなんです。趣味で始めた薬膳を本格的に勉強して資格を取った時期で、薬膳の仕事をしていく!と意気込んでいたのですが、同時に30代に入り自身のライフスタイルを見直した時、ファッションPRの仕事は(当時の)私にはちょっと華やかすぎると悩んでしまい、また違う道を模索していたのかもしれませんね。最初は薬膳の資格(国際中医薬膳師)を取ったらPRの仕事は辞めようとまで思っていましたが、その後もお仕事の依頼をいただいて、フリーでかれこれ10年ほどPRの仕事に関わっています。

―ファッション業界のプレスの仕事って、確かに華やかなイメージがありますよね。ファッションをやるならプレスが憧れ、という人も多いですし。

確かにかつてプレスは人気職だったかもしれませんね。広報だからどの業界でも比較的人気がある職種だと思いますが、とくにファッション業界のプレスはファッショナブルで華やかなイメージですよね。雑誌などマスコミとの接点も多いし、プレス担当がそのブランドの顔としてPRを行うことも多いですから。今は職種にかかわらず、個人としての生き方、ライフスタイルに共感だったり、憧れる対象が多様化していると思います。

―プレスの仕事を始めた20年前は、どのようなやり方で仕事をすすめていたのですか?

インターネットは普及し始めていましたが、毎日人と会うことが基本でした。毎シーズンごとにファッション雑誌の編集部に出向いて情報を交換するのがルーティーン。キャラバンの後、夜はそのままご飯に行ったり、飲み会も仕事のひとつでしたね。楽しかったし、思い出深いコミュニケーションの形でした。

―フリーになってから仕事への想いやスタイルは変化しましたか?

意識も働き方も大きく変わりました。会社員時代はブランドが求める像に自分を合わせていく事もしていました。会社の顔としてプレスの仕事をしているわけですから、会社員として働くうえでは大事なことだと思うんです。でもフリーになってからは、ブランドに自分を全て合わせるのではなく、自分の思考やライフスタイルに合うブランドを探して仕事がしたいと考えるようになりました。一度は辞めようと思っていたPRの仕事を今でも続けられているのは、自分のライフスタイルが変化しながらも、合った仕事や人に出会えたことが大きかったと思います。

―今のライフスタイルに合うブランドとは?

薬膳の学びが深まるにつれ、「身体に良い素材」から「素材自体が良い食材」、ひいては環境問題について考える機会が増えてきたんです。それがきっかけで、ファッションと環境問題との関連性についても調べてみたのですが、ファッション業界が地球環境を汚染しているという事実を知ってすごくショックを受けました。なかでもトレンド消費による使い捨てや、生産背景や工程、輸送などにおける環境負荷の大きさは衝撃的で、何がそうさせているのか「知る」必要があると感じた瞬間でした。一方で、地球環境を守る取り組みをすでに始めているファッションブランドがあることも知りました。既存のブランドも、これからのブランドも真剣に環境問題を考える必要があると思い、そうしたブランドのPRに関わりたいと思うようになりました。その上で環境問題のことを理解していないと、正しく伝えることが出来ないと考えています。

―「正しく伝える力」とは?

ブランドの想いが何で、どこに向かっているのかを理解し、共感したうえで価値を最大化して伝える事だと思います。これは、環境問題云々に関係なく、すべてのブランドのPRを行う上で、プレス職にとって欠かせないスキルです。以前、デニムブランドのPRを担当したことがあったのですが、デニムという生地の歴史、素材、工程や製品へのこだわりをデザイナーさんから教えていただきました。デザインや商品の背景にあるものを「知る」事で理解し、知識として身に付けることで初めて自分の言葉で正しい情報を発信出来ると体感し、今でもベースとなっています。

―なるほど。では、ファッションと環境問題に関する知識はどのように学んでいったのでしょう?

ファッションや他産業の環境問題と言っても幅は広く、さらにサスティナブルやSDGs、関連するキーワードの繋がりを紐解き理解するにはガイドラインが必要だと思っている時に、一般社団法人エシカル協会が開催している「エシカル・コンシェルジュ講座」の受講を勧められました。調べればいくらでも情報を得られる時代ですが、その情報が正しいのかを選別する力が求められますよね。「エシカル・コンシェルジュ」は私が知りたかった事を各専門家の方々がわかりやすく解説してくださり(フェアトレード、オーガニック、サスティナビリティ、動物福祉、リサイクル、環境再生型農業、自然エネルギー、エシカル金融、SDGs等が講座内容)、「エシカル・コンシェルジュとは小さなことでも行動に移す実践者のことを指します」とある通り、私の環境問題へのはじめの一歩に寄り添ってくれました。地球温暖化は現実として起こっていること。モヤモヤの正体がわからなくて悩んで出た答えは「まずは知る事、そして行動」。エシカル・コンシェルジュで得た知識をPRの仕事に活かしたいと思うようになりました。

―今担当されている『Offen(オッフェン)』のPRにも、そうした専門知識が役立っている、と。

確かに総合的なエシカルの知識がなければオッフェンのPRは難しかったと思います。特にオッフェンは2021春夏デビューのブランドで、使用済みのペットボトルを原料にした再生繊維で作られた靴なのですが、製造工程や運輸方法も含め、SDGs12番にある「つくる責任、つかう責任」を考えるチームとして、循環型社会への一歩を踏み出したばかりです。打ち出し方も含め、デザイナーと密に話をする機会も多かったですし、エシカル理解度が同じでないと進まないこともあったと思います。そして「オッフェン」とはドイツ語で開放的な(オープン)という意味なのですが、履き心地はまるで素足のような解放感があり、滑りにくいのにデザイン性が高いという、地球環境に優しいというだけではない、現代の女性が必要としている条件と心を満たしてくれるシューズ、というのもお伝えしておきたいですね。

―Offen(オッフェン)オフィス新設にもこだわりがあるとか。

ブランドのローンチが2021年2月上旬なので、2020年の12月は開設作業に時間を費やしました。ブランドの方にはプレスルーム(オフィス)を開設するにあたって、全てのものをエシカル購入しましょうと提案させていただきました。例えば電気は自然再生エネルギーを選択する。家電などは購入するメーカーがどこまで環境に配慮されたものかなどを調査検討。メルカリ、ジモティなどの二次流通サービスを中心に可能な限りリサイクル品で取り揃えました。その他パソコンは「ピープルポート」という会社の中古の電子機器をリユース・リサイクルして新しく生まれ変わったパソコンを購入、観葉植物のグリーンも廃棄予定のものをいただいてきたりしました。従来のオフィス開設と違い、必要なものをデザイン重視で揃えて「これで良し」ではなく、デザインも良く環境に優しいものを選ぶ。時間はかかりましたが、まだまだ現役で使えるものばかり。地球にも優しい開放感溢れるエシカルなプレスルームを体験していただけると思います。

―自分のライフスタイルや嗜好とブランドが同じベクトルを向いていると、よりPR力が増すとお考えですか?

そうですね。自分のライフスタイルをPRに活かせるということは、ブランドが求めているニーズにすでにマッチしている状態なのかなと思います。実際オッフェンの職場では若い方でもコンポストに興味があったり、少しでも環境問題に関りたいと考える方が集まってきていますし、一緒に働いていく仲間としての採用基準となっていたりしますしね。仕事とライフスタイルなんて一致するの?と思われる方もいらっしゃると思いますが、私自身も薬膳という個人的に興味があった学びがプレス職としての私の個性になり、その個性を活かしたPR活動ができるようになったと感じています。

―自分の興味も仕事に活かせると、より意欲的に仕事ができますよね。

みなさんも自分の興味があることは熱量が違いますよね。今の仕事に関係ないと思えるようなことでも好きで継続していると活かせるタイミングがあったりするので、切り離すのではなく、自身のライフスタイルとの共通点を見出していくというのは仕事に意欲的になれるというひとつのポイントですね。

―コミュニケーションに関してはいかがでしょう。

コロナ禍によってもっとも変化したのがコミュニケーションのスタイルです。かつては人と直接会ってコミュニケーションを取っていましたが、今やメールやSNSが中心となりました。さらにそうした流れがコロナ禍によって加速。リモートワークですから、電話しても編集部に人がいないという想像もできなかった状況になっていますしね。それでもPRを始めてからずっと変わらないのは、人との繋がりを大切にする事ですね。コミュニケーションの手段が時代と共に変わっても、人が好き、良いものを人に伝えたいという想いは変わっていません。お世話になった方々に今助けられていたりもしますので、感謝の気持ちを忘れずにいたいですね。

―最後にエシカルプレスについてどう思われますか?

 私たちは300年前の産業革命以来の大きな変革期を生きている世代です。世界が一斉にサステナビリティに向かっていき、パラダイムシフトの渦中にいます。SDGsの目標を達成するためにも、2030年までには誰ひとり取り残さず「エシカル」な暮らしになることが、グローバルスタンダードになります。その上で、「エシカルプレス」=「当たり前」になるよう、今私たちができることは試行錯誤ながらも正しい知識をもって最短距離で新たなロールモデルを作っていくこと。プレスの得意技は高い能力でコミュニケーションしていくことですので、有識者からの情報をキャッチして咀嚼し、誰にとっても伝わりやすい言語で、サステナビリティを広めていくエバンジェリストとなることだと確信しています。

【Offen Brand Information】
公式HP : https://offen-gallery.com/
Instagram : @offen-gallery

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