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新型コロナウイルスという大きな波に飲み込まれた2020年。感染防止の観点から日常の生活行動があらゆる形で制限される中、通販業界は消費活動を支える重要な社会インフラとしての役目を今まで以上に担うこととなった。「通販市場の拡大」は必然の結果であり、本紙が行ったアンケートにおいても圧倒的な大差でトップを獲得。2位以下についてもコロナ禍に伴う業界の変化を指摘する項目が見られている。今年1年間に通販業界で起きた主な出来事を読者と共に振り返ってみる。
「2020年の通販業界10大ニュース」は、今年1年間に通販業界で起きた主な出来事やニュース、トレンドなどを本紙編集部が20項目程度に絞り込み、読者アンケートを受けて独自にランキング化したもの。アンケートは今後の市場動向にとって重要だと思う項目から順番に3つまで受け付けており、合わせてその理由も聞いた。
通販が休業中の店舗の受け皿に
今回、圧倒的な大差で1位となったのが「新型コロナで通販市場拡大」で、2位とは2倍近い156ポイントを獲得している。
感染者数の拡大が次第に顕著となり、4月に緊急事態宣言が発令される頃には、大規模商業施設といった実店舗の多くが「3密」を回避することを目的に、時短営業や休業などを実施。生活用品などの買い物をする場所が限られていき、また、外出を敬遠する傾向も広がっていく中で、通販がその消費の受け皿として機能していった。
とりわけ、仮想モールでの販売が巣ごもり関連商品を中心に好調となったようで、楽天市場では今第2四半期(4~6月)における国内EC流通総額(楽天市場や楽天ブックス、楽天トラベルのほか、オークションやチケット販売、ダウンロードなども含む)が、前年同期比15・2%増の1兆309億円と伸長。「ヤフーショッピング」でも今年上半期(1~6月)は、美容家電や健康器具といった自宅での使用を想定した商品の売れ行きが良かったという。
アンケート回答企業の声を見てみると、「特に緊急事態宣言を機に加速した感がある。この機会に初めて通販を利用したことで、メリット(いつでもどこからでも買える)や不安(品質やサイズなど)の解消により、新たに通販利用者として定着する消費者が増加する」といったものや、「徐々に進んできたECシフトの流れが、コロナの影響による外出自粛によって一気に加速している印象を受ける」、「デジタル活用の進化を加速させるべき要因の一つになった」、「実店舗の消費が低迷する中、通販は今後も伸びると考えられる」、「SNSの活用やキャンペーンの拡充など、より企業としてのブランディング・企画力が試されることになる」という声があった。
社員を守るべく働き方にも変化
2位となったのもコロナ関連の話題で「テレワークなど『働き方改革』が進む」の84ポイント。かねてより、政府主導で進められていた「働き方改革」だが、今回のコロナを機に、一気に各社での取り組みが加速した。テレワークや時差出勤、時短勤務などはその代表例で、通販企業でも多くが取り入れている。
ポーラ・オルビスグループのディセンシア、通販サイト構築サービスなどを提供するGMOペパボのように通販実施企業・関連企業の中でもリモートワークを制度化、恒常化した企業も続出。ジャパネットグループでは、コロナ禍を機に社員に負荷のかからないオフィスの在り方の見直しを進めており、来年にも東京のオフィスに置く経営戦略の部門や新規事業担当部門、媒体制作部門など5割程度の部門を福岡に移転するという。コールセンター業界でも、在宅によるサービス対応が各社で開始されるなど、ウィズコロナに則した新しい働き方の実践が進んだ。
アンケートでは、「働き方とパフォーマンスの両立を重要点として認識している」や、「生活様式が一変し、消費者ニーズの買い方、手段も変わっている。働き方も含めて大きな変化だと感じている」、「働き方の変化から購買行動の変化にも影響している様子。購買ツールや時間帯やSNSの利用拡大などを理解し、それに適した販促手法を実践する必要がある」といった回答があった。
その一方で「受信業務のパート従業員の確保が難しくなり、出勤率も低下している。在宅型の受付外注が活況のようだが品質に不安がある」や、「本社に勤務するスタッフについてはテレワークが進んだものの、物流やCSといった現業についてはラインを止めることができず、今後の課題となっている」、「どこまで浸透するかによって新市場のボリュームが決まる。一部の企業導入や限られた限定的な期間となると、新しい市場は参入価値があるかどうか分からない」といった意見も見られた。
実店舗企業のEC事業強化も
3位にランクインしたのは「実店舗企業がEC強化」。こちらもコロナを起因とする動きで、有店舗小売り企業をはじめ、飲食店やメーカーなど、あらゆる業種でECの販路強化に向けた動きが始まった。
アンケートでは「メーカー各社がECに注力する傾向は顕著で、自社ECとEC小売りの活用を併用しているが、将来的にはナイキやアディダスのようにD2Cに寄せてくる傾向は続くと予測する」や「特に在庫を抱える業態がEC展開を加速している。消費者の選択が広がる以外にも、雇用や働き方の変化が表れている」といった意見が見られた。
中には「これまでも大手企業の通販参入により、競争が激しくなったが、大小さまざまな実店舗企業により、さらに激化すると思う。資本力のある企業の参入は恐怖」、「百貨店など一般的に信頼性の高い企業が本格参入した場合、体力のない小規模通販企業は淘汰されていく可能性もあるのではないか」という意見もあり、今後の競争環境が、より一層激化することを懸念した声も聞かれている。
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