廃棄物を掛け合わせて新しい商品に――広島市を中心に複数の専門店を運営するエヌ(中本健吾代表)は、廃棄予定の残布と蜜蝋(みつろう)を加工して作る食品ラップシート(蜜蝋ラップ)の販売を始めた。残布、蜜蝋ともに中国地方の縫製工場や養蜂家で本来捨てられるはずだったものを活用する。取引先ブランドとの協業商品として蜜蝋ラップを販売しながら認知度を上げる。中長期的にはOEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)、自社商品としての販売も視野に入れる。
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(友森克樹)
8月30日~9月1日、同社が運営するセレクトショップ「レフ.」で、パリ在住の瀬谷慶子さんのファッション・ライフスタイルブランド「セヤ」の21年春夏物の展示販売会を開いた。
初日に完売
ここでレフ.とセヤの協業商品として、初めて蜜蝋ラップを販売したところ、30セットが初日で完売した。1セットは大中小の3枚入りで4950円(税込み)。来場者のほとんどが蜜蝋ラップの存在を知らなかったが、セヤの21年春夏物のサンプルを作る際に出た残布を活用して作ったことなどがブランドの愛好者に刺さり、好評だった。
蜜蝋ラップは、サステイナブル(持続可能)な志向の高まりとともに、近年は海外を中心に注目が高まっている。エヌが販売する蜜蝋ラップは、抗菌・防腐だけでなく、特殊加工を施すことによって防虫効果も備える。水洗い可能で、約1年は繰り返し使える。撥水(はっすい)性もあるため、スープなどの液体状のものを注いだり、包んだりできる。
本質的な方法
「クリエイティブな生協」をコンセプトとするレフ.は、アパレルや服飾雑貨だけでなく、生活雑貨や食品なども販売している。13年の開店当初から無農薬レモンを販売しており、これをよりおいしく食べる手段の一つとして、蜂蜜も販売することにした。約7年間、中国地方の様々な養蜂家と仕事をするなか、再利用しきれずに廃棄される蜜蝋の存在を知った。
中本さんはここ数年、アパレルの廃棄問題に関心を持つようになり、ファッションを販売する企業としてサステイナブル活動の必要性を強く感じていた。グリーンウォッシュに終わらない、自身が納得できる本質的な方法を模索するなか、今回の試みに至った。
蜜蝋ラップを作る過程では、蜜蝋を削るなどの力仕事も必要になる。生産能力を上げるために必要な人手は、コロナ禍で福祉的就労の依頼が減り、困っていた中国地方の障害福祉施設に発注して補うことにした。同社をはじめ、縫製工場、養蜂家、障害福祉施設の各方面が利を得る新たな取り組みを実現できたことに「とても清々しい気持ちになれた」という。
今後、蜜蝋ラップをより多く販売していくため、ファッションブランドとの協業を強める。「物やサービスを広める上でファッションというコンテンツが持つ伝播力は非常に強い。ファッションの力を借りて、蜜蝋ラップの認知度を高めていきたい」考えだ。
(繊研新聞本紙20年10月9日付)
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