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岡山の小さな村から世界一を目指すデザイン会社「nottuo」代表 鈴木宏平にインタビュー

岡山の小さな村から世界一を目指すデザイン会社「nottuo」代表 鈴木宏平にインタビュー

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岡山県・西粟倉村(にしあわくらそん)と東京・両国の2拠点で事業を展開するデザイン会社、nottuo(ノッツォ)株式会社。2011年に東京からわずか1500人弱の人口の村に本社を移転した、まさにローカルベンチャーの先駆けともいえる同社は、全国の中小企業クライアントに向けてブランディングデザイン、空間設計デザインなどを手掛けるブランディングデザインファームだ。「デザイン経営」の外部パートナーとして、あらゆるクライアントの業況改善を手掛けてこられた代表取締役CCOの鈴木宏平氏に、東京から西粟倉村に移住したきっかけやビジネス上のメリット、事業内容や今後の展望についてお話を伺った。

鈴木宏平さん
nottuo株式会社 代表取締役 Chief Creative Officer

武蔵野美術大学建築学科卒。在学中よりデザインユニットの活動を始め、プーマとのコラボプロジェクトを手掛けるなどを経て独立。東京でプロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、webデザイナーを経て、2011年より岡山県・西粟倉村に拠点を移しブランディングデザインを開始する。2015年に法人化し、2018年より東京オフィスも開設し、現在は2拠点で中小企業のブランディングデザインを提供している。

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―nottuo株式会社の本社は岡山県・西粟倉村にあると聞きました。

はい。もともと東京に本社を構えていましたが、子育ての為に実家がある仙台に移住しようとていたタイミングで東日本大震災が起き、実家が津波の被害に遭いました。どうしようかと悩んでいたタイミングでたまたまツイッターに投稿されていた「移住者募集」という言葉が目に入り、それをきっかけに岡山県の西粟倉村に移住しました。そして同時に本社の拠点も西粟倉村に移すことに決めました。

―西粟倉村はどのような村ですか?

岡山県の最北東端に位置する、人口1500人弱の小さな村です。面積の95%が山林で、全国的には林業再生で有名です。私も移住するまでは知らなかったのですが、実は“地方創生” “ローカルベンチャー”という言葉の発祥となっている地で、海外でもよく知られています。人口の約10%が移住者と言われ、私の周りにも西粟倉村に移住をして起業されている事業者がたくさんいます。

―移住をしてメリットに感じたことはありますか。

一番は、地元住民の方々が移住者に対してとてもオープンマインドで、すぐに受け入れてくれたことですね。そして、なんといっても土地代や家賃などの固定費が破格だというところも大きかったです。小屋付きの平屋を借りて、その小屋を本社として構えています。また、メディア露出の点でも東京と比較すると非常にしやすく、例えば東京でやっていて埋もれてしまうことでも、西粟倉村でやっているということで1つのニュースになります。お陰様で多くのメディアに取り上げていただき、販促費も抑えられます。小さな村でやっているということを面白がっていただけるのは、地方ならではの良さですね。

あとは、物事を集中して考えたり、作業に没頭するときにも田舎の方が静かで、結果良いものが出来上がります。

―nuttuo株式会社の事業について教えてください。

中小企業クライアントに向けてブランディングデザインと空間設計デザインをメインで提供しています。クライアントは岡山近県と東京がメインですが、岩手、宮城など全国各地から依頼をいただくこともあります。事業内容としては、企業のロゴマークから制服、パッケージデザイン、webサイトのデザインや店舗設計など多岐にわたる商品をデザインしています。

クライアントの声をすくい上げ、一緒につくり上げるプロセスを大事にしているので、コンセプトづくりから細かいディテールの部分まで、しっかり話し合いの時間を設けています。加えて、クライアントワークだけでは実現できない、自分たちがつくりたいものをつくり発信する“drill project(ドリルプロジェクト)”というプロジェクトも同時に進行しています。

―drill projectとはどのような取り組みなのでしょうか。

クライアントの「デザイン経営」をサポートし、業況を良くしていく手段として、ブランディングデザインを提供していますが、クライアントワークはもちろんクライアントありきですので、ある程度要望を汲み取った上でつくっていくものです。そことは別に、シンプルに私たちがデザイナーとしてひらめいたアイデアや発見を世の中に出していく枠を用意したいと思ったのをきっかけに、drill projectをスタートさせました。直近だと食器や家具をつくっているのですが、逆にdrill projectで築いた関係性やアイデアがクライアントワークに活きる場面も多々あります。

―drill projectという名前の由来は?

ドリルには2つの意味が込められていて、1つは工具のドリル。一般常識や固定概念を覆すようなものづくりや仕組みなどをつくることによって風穴を開けるという意味からきました。もう1つは、漢字ドリルや算数ドリルのドリルです。このドリルには反復して練習をしていくという意味が込められていて、単発で終わるのではなく思いついたことを反復してやっていこうという決意を示しています。

―実際に貴社のアイテムを購入できる場所はありますか?

11月14日にショールーム兼店舗を岡山県西粟倉村にある本社1階にオープンします。当社が開発したプロダクトや、クライアントワークでデザインした商品を一堂にお披露目できる場所が前々から欲しかったので、やっとの思いでカタチにすることができ、とてもワクワクしています。このような実店舗を構えるのも実験のうちのひとつでもあります。フルリノベーションしたオフィスを実際に見てもらえるのは当社のブランディングとしても良いんじゃないかなと思います。これも物価が安い岡山だからできるメリットでもありますね。リノベーションの際に必要な木材なども村で取れたものを使用し、工事は地元の大工さんに頼んだりと、少しでも村に貢献できるよう意識して取り組みました。

―nottuoの事業は制服なども手がけられていますが、アパレル出身の人材が活躍できるチャンスは?

当社のクライアントでは飲食店や宿泊施設などで制服や部屋着といった服飾の開発を行うこともあります。今、新しい旅館をつくるプロジェクトが進行しているので、客人用の部屋着やスタッフの制服をつくる際にその能力を発揮するチャンスがあると思います。また、drill projectでも、オリジナルグッズの開発の可能性もあるので、アパレルでの経験を活かし両軸で活躍できるのではないかと思っています。

―最後に今後の展望をお聞かせください。

新型コロナウィルスを機に、私も一経営者として“会社のこれから”を見つめ直し、nottuoのミッション、ヴィジョン、バリューも一新しました。今描いているヴィジョンとしては、“世界一かっこいい田舎のデザイン会社”を目指しています。以前は僕自身が「大都市でないとデザインの仕事は成立しないのでは」とずっと思っていたのですが、全然そんなことはない。それをnottuoの事業によって体現していきたいです。ビジネスがさらに軌道に乗ったとしても、これからもずっとこの小さな村を本拠地にして活動していきたいです。

drill projectで制作した食器や家具は10月27日(火)~11月3日(火・祝)まで表参道ヒルズB3階にて行われる“DESIGNART TOKYO 2020”にて展示販売中、是非足を運んでみては。

text:野村紗矢

■DESIGNART TOKYO 2020/Instagram:designart_tokyo
期間:2020年10月23日(金)〜11月3日(火・祝)
開催エリア:表参道/外苑前原宿・明治神宮前/渋谷/代官山/六本木/新宿/銀座
※drill projectの作品は表参道ヒルズ会場にて展示

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