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「すべては子どものために」ファミリアの70年 -vol.3- ライフスタイル企業へ

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 「お前はええな、在庫持たなくていいから」。米国に住む息子、岡崎忠彦(03年入社、現社長)を訪ねた社長の岡崎晴彦は、こうつぶやいた。積極的な出店政策の最中のバブル崩壊。在庫も有利子負債も膨らんでいた。普段は弱みを一切見せない晴彦が、グラフィックデザイナーとして働く忠彦にふと見せた横顔だった。07年、副社長の神田四郎が新社長に就任。晴彦は代表権を持つ会長となったが、08年に66歳の若さでこの世を去る。日に日に悪くなる経済状況。しかし、坂野惇子ら4人の女性に始まる企業の歴史と伝統は、良くも悪くもイメージとして固定化し、思い切った経営計画がやりづらくなっていた。そして11年、忠彦が社長に就任する。創業者の孫でアート畑の出身。「ボンボンのアーティストが社長とは、いよいよ終わりか」。そう思った人も少なからずいたことだろう。

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ファミリアらしさ禁止

 凝り固まったファミリアに「爆弾を落としたかった」と忠彦。禁じたのは「ファミリアらしい」という言葉だ。新しいことを始めようとしても、誰かの「らしくない」の一言で変化が妨げられていた。それでいて、「ファミリアらしい」とは何かを問うても各自イメージがばらばら。そこから手を打たなければならなかった。まずはカタログを一新することから始めた。広告代理店が主導になって進めていたが、00年冬物から自分たちでハンドリングするようになる。忠彦は外部ディレクターとして海外から一流のスタイリスト、カメラマンを呼んだ。伝統的なファミリアチェックのドレスにチェックのタイツをコーディネートしたり、モデルにジャンプ、ケーキを素手で持つなどやんちゃなポージングを指示したり。十八番の上品なイメージを壊しかねない表現に、ファミリアのスタッフからは悲鳴が上がったが、商品部長はゴーサインを出した。こうして新しいイメージが世にお目見えする。

 肝心の商品も、サイズ別の企画チームがそれぞれの「ファミリアらしさ」を形にしていたため、統一感がなかった。そこで00年、忠彦の師匠であるグラフィックデザイナー、八木保にシーズンコンセプトの組み立てを依頼。シーズンテーマ、テーマのネーミング、使用するカラーの提案を受け、それを元に企画チームが議論を重ねて商品に落とし込むことで伝えたいメッセージが明確になった。この取り組みは現在も続いている。

 「なんちゃってデザイン集団だった」と忠彦は当時を振り返る。CI(コーポレートアイデンティティー)、デザインを理解していない社員が大半で、商品、販促物、店舗設計どれをとっても筋が通っていなかった。自分たちだけでやるのを美点としていたが、プロには簡単にまねできないノウハウがある。そうして、小山薫堂や中川政七(現社外取締役)など、その道のプロとの仕事が増えていく。

深いサービス開発

 忠彦の改革は続く。複数あった社内ブランドを廃止し、モノブランド化へ。12年にはセールを撤廃し、ファミリアの価値復権に努めた。人事制度も年功序列を廃止、成果を評価する組織へと変えた。そして16年、かねてからの望みだったオフィス移転を実行する。

 旧オフィスは、グレーの無機質なデスクを並べた、典型的な日本の会社。役員と話をするためにはゴミ箱の上に座らなければいけないほど雑多な空間だった。忠彦は八木から「オフィスは商売道具」と教え込まれ、企業姿勢を体現した空間で仕事をしていたため、ファミリアのオフィスはただただ「汚い」の一言だった。新オフィスは賃貸ビルの一角、旧オフィスの半分以下の面積に集約。オリジナルのデスクに海外の一流品の椅子を揃え、全体が見渡せるオープンな環境を整えた。新オフィス誕生により、会社の考え方、目指すべき方向性が社員の目にも見えてくる。そして神戸本店のリニューアルにつながっていく。

新オフィスはアートを随所に飾ったオープンな環境

 18年9月、神戸本店を神戸市・旧居留地に移転オープンした。店舗デザインは、現代美術家の名和晃平に依頼。服の販売だけでなく、デザイナーやパタンナーの作業風景を見たり、物作りを体感できるアトリエ、食育の観点や妊娠中も安心して使えるレストランとカフェ、小児科のクリニックを併設した。子どもや妊産婦向けのワークショップの場も設けるなど、「子どもの可能性をクリエイトする」という新たな企業理念を形にしたものだ。「顧客体験を豊かにするには、商品だけでなく深いサービスが必要」と忠彦。今はワークショップや、セイバンと共同経営するプリスクールを通して、独自の「ファミリアメソッド」を蓄積している最中だ。「サービスは人材も含めて開発費がかかる。1日も早くマネタイズすることが課題」という。

神戸本店では、妊娠から2歳までの「フォー・ザ・ファースト・1000デイズ」というコンセプトを入り口で表現

 忠彦には忘れられない一場面がある。99年、ファミリアの英文のロゴタイプを大文字から小文字に刷新するかどうか議論していた時のこと。その場にいたほとんどの社員が反対していたが、通りがかった当時名誉会長の坂野惇子が「私、これ好きよ」となんの気負いもなく発言した。好きなものは好き、その率直な姿に心を打たれた。ファミリアはもともと、女性4人が子供に本当に良いものをと思って始めたブランド。改めて原点に立ち返り、それをぶらさずにコンテンツを蓄積していけば唯一無二のものが築き上げられる。忠彦はそう確信する。「創業者と創業家は違う。創業者コンプレックスはもちろんある」。しかし社長に就任したこの9年間で、様々な改革を実行してきた。組織はスリム化し、役員も若返り、社員は今や20代が全体の4割を占める。100年企業を目指した第二の創業が幕を開けた。

(繊研新聞本紙20年4月6日付:敬称略)

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