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K-POPアイドルたちを陰で支える"放送スタイリスト"とは?

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BTSの新曲「Dynamite(ダイナマイト)」がビルボードのシングルチャート「ビルボードホット100」で1位を記録したことも最近話題となったが、K-POPのグローバル人気と共にK-POPスター達のファッションアイコンとしての活躍が目立つようになったように感じる。BLACKPINKはメンバーそれぞれが「セリーヌ」「シャネル」「プラダ」「サン ローラン」と言ったビックメゾンのアンバサダーとして選出されている。EXOカイは「GUCCI」、ITZYは「ルイヴィトン」、NCTルーカスは「バーバリー」のファッションショーに招待されるなど、K-POPスター達がフロントロウに並ぶことも増えてきた。今回は、若くして独立し、現在までVIXX、AB6IX、KNK、E’Lastなど数多くのアイドルグループのスタイリングをしてきたキム・ナヨンさんにK-POP業界のスタイリングについて話を聞いた。

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キム・ナヨン
2008年スタイリストとして活動をスタートし、2016年独立。スタイリストの中でも特殊と言われている放送スタイリスト(アイドルのステージ衣装など)として活躍。VIXX、AB6IX、KNK、E’Lastなど数多くの有名アイドルグループのスタイリングを担当している。
Instagram https://www.instagram.com/aranayeon/

―スタイリストになったきっかけは? (いつ、どのようにスタイリストを志望にしましたか?)

子供の頃からテレビ番組に関心があったのですが、テレビ番組に出演するときに芸能人が着ている衣装、特に音楽番組に出る歌手の衣装に注目するようになったんです。

その頃からどのような仕事をするのか悩んで探していたのですが、中学校の時ぐらいに芸能人の衣装を担当する「放送スタイリスト」という職業を知り、無条件にこの職業を選ぶべきだと思ったのと同時に、どうすればスタイリストになれるのかをすぐに調べ始めました。スタイリスト学院があるというのを知ってからは高校3年生まで待ってから、学院に登録して通い始めました。その時は、どんなことよりも刺激的で、楽しくて、辛いとも知らずに通っていたと思います。学院のプログラムをすべて終了し、高校卒業3日後に芸能人のスタイリストという職業に飛び込みました。このようなスタートでしたね。

 ―今までのスタイリストのキャリアについて簡単な紹介をお願いします。

 2008年20歳にスタイリストを開始しました。

最初は俳優の方々を担当するチームに入って、複数の俳優に付いて回ってドラマの現場について学び、放送の仕事に適応する時間を持ちました。

そして、私が当初スタイリストに興味を持つきっかけだった歌手の衣装を学んでみようと歌手のスタイリングチームに移り、女性アイドルグループを手伝うようになりました。このように一つの事だけを学んで一箇所に安住したらいけないような気がして、雑誌、広告を担当するチームにも入って、スタイリングにまつわる仕事について多角的に学ぼうとしていました。もちろん未熟な部分もまだ多かったですが、ある程度私が学べたと思った時に、歌手の衣装を担当するのが自分に最も合い、自分自身も楽しいということを悟って、歌手のスタイリングをするチームに入りました。4年ほど担当している中、2016年に独立をして、そこから現在までアイドル歌手のスタイリング活動を続けています。

 ―スタイリストの基本的な業務内容はどのようなものですか?

 スタイリストはどうしてもその時々のトレンドを把握し、スタイリングをしなくてはいけないので、基本的に雑誌やテレビ番組、コレクションなどを常にチェックしたり、変化し続ける衣装トレンドにどのようなものがあるのか、また写真だけで見るのと実物は異なる場合が多いので、実際にショップに足を運んで素材感やディテールを見たりもします。

それと、テレビ番組や雑誌媒体などで着用する衣装の協賛を受けては返却する仕事を基本とします。歌手の舞台衣装のような場合は、直接購入したり、製作をして着せることがあります。ショップを回りながらコンセプトにふさわしい衣装を購入したり、製作するとなれば常に試案作業を繰り返し、コンセプトに合った生地の素材感とディテールを組み合わせていき、製作を行います。基本的に衣装を準備した後は、芸能人のスケジュールがある日は、一緒に現場について行って直接服をスタイリングします。

 ―レンタルするのではなくデザイナーに衣装製作をお願いすることもあるのですね。

 はい。衣装協賛ではなくデザイナーの方々に衣装製作依頼をする事もたくさんあります。

協賛の場合は、望んでいたような衣装がピッタリくる場合がそんなに多くないので、望むようなスタイルの衣装をデザインしているデザイナーの方に希望のデザインを依頼して制作する場合もあります。

 ―今まで多くのK-POPアーティストのスタイリングを担当していますが、アーティスト毎(アルバム毎)の衣装コンセプトはどのように考えているのですか?

衣装コンセプトについては、どうしても最初はアーティストの会社(事務所)の方でお考えになったアルバムごとのコンセプトがありますので、私たちは会議を通して伝えられたその内容(コンセプト)に合わせて衣装コンセプトに関する提案を戻します。そのように何度も会議を繰り返し、そのアルバムに最も適した服のコンセプトが整理ができたら、そこから進行し始めます。

 ―J-POPアイドルとは明らかにスタイリングが異なるように感じます。アイドルスタイリングをするとき、最も重要視するポイントは何でしょうか。

個人的には、トレンドを反映することもとても重要ですが、どうしてもアイドルという性質上、ご覧になっているファンの方々が本当に多いので、ファンの方々のニーズを満たすようなスタイリングをすることも間違いなく必要であると考えています。衣装のフィット感も本当に大切にしていますね。そのためにアーティストの身体的特徴をよく把握して反映しようとします。そして舞台の振り付けや曲のスタイルを反映して、衣装にポイントを与えようともします。

舞台衣装のような場合は、製作工程が多ければ多いほど、生地やディテールで間違った選択をするとクオリティが低くなる場合がしばしばあるのですが、私はその部分に最大限気を使ってコンセプトに合った生地やディテール、舞台で照明を受けたときにどの程度カラー感がきれいに見えるのかなど、生地の色までかなり細かく見る方です。同じカラーであっても微妙に差異が出るからです。一見似たように見えるカラーであっても、最適なカラーを合わせようと物凄く気を使っています。そうする事で、服をはるかに高級に見せることが出来るし、そのように細かいディテールに拘ろうとする部分が私の長所だと思う部分でもあります。

―韓国のアイドルは音楽番組が多い中、CDジャケットで着用した衣装だけではなく毎回異なる衣装を着ているので最初に見たときは驚きました。活動期間中にどれくらい衣装を準備しているのでしょうか。

アルバムジャケット、ミュージックビデオ撮影時の衣装は私達も音楽番組に出る時に活用します。どうしてもジャケットやMVで見せた衣装が、そのアルバムのコンセプトを最もよく示している衣装でもあるため活用します。ですが、音楽番組が週に5〜6回ほどあるので、どうしても同じ衣装のみをずっと着ることがコンディション的に難しいので、一つのアルバム活動量と状況に応じて衣装を追加したり、アルバムジャケットとミュージックビデオ撮影で着た衣装を活用したりしますね。

 ―激しいダンスを踊る舞台衣装や雑誌の撮影で準備する衣装は異なると思うのですが、舞台衣装の場合どのような点に気を使っていますか?

舞台衣装の場合には、どうしても振付が激しかったりするとスパンデックス(Spandex)素材(=ポリウレタン弾性繊維の名称、伸び縮みに強い)でなければ着るのが難しい場合が多いので、できる限り全てスパンデックス素材の生地を使用しています。

そして、番組ごとに服のカラーの見え方が異なるため、そこにも気を使います。あとは、激しいダンスや熱い照明のために汗が出るのは当然ですが、できるだけ汗が目立たない生地を使うとか、厚手の生地を最大限に避けて使おうとしています。

厚手の生地を使えば服がカチッと揃って美しく見える時もありますが、このように激しいダンスを踊ったりする舞台ではむしろ重苦しかったり不便に見えて欠点になることがあり、適切な厚みの生地を使うようにしています。

 ―衣装アイテムの情報は、どのように収集しますか?可能な限り最新のルックから選ぶなどアパレル業界の流行も積極的に導入しようと意識していますか?

どうしてもトレンドを反映しないというのは難しいと思います。

もちろんアーティストたちが着るものが最終的にトレンドとなる場合も多いですが、私の場合は、自分だけのスタイルをそのままスタイリングするのも好きです。周りの状況やどのような撮影かによってトレンドを反映して、そのスタイルに合ったブランドやアイテムを見つけて活用する方です。

 ―昔はメンバー全員でお揃いの衣装が多かったのに比べ、最近は同じグループ内でも別々の衣装を着ていることが増えたように感じます。このような業界全体の変化は何でしょうか?

以前は、グループであれば、どうしても同じ衣装を着ることで調和をとり、同じグループだということを目立たせて一目でパッと目につくようにしていた部分があると思います。

ところが、最近は、カラーや、生地のパターン、ファッションアイテムなどでポイントを合わせて、全員異なったスタイリングをすることでメンバー別に個性を生かそうとする方向に変わってきました。今ではグループであることを見せながらも、それぞれ違うスタイリングでありながら共通するポイントを与えてうまく調和をとるようなスタイリングがトレンドになったようです。人はみんな異なるため、メンバーごとの特性もみんな異なるということを前提に、それぞれが目立つようスタイリングしています。

―同じグループ内で個性を出すだけではなく、アイドルグループが乱立する中で、他のグループとの違いを出すために工夫することもありますか?

 他のグループは意識したりしません。

最近は沢山のアイドルグループがありますが、各グループの特性がそれぞれ異なるので、私は私たちのだけのコンセプトに合わせようと考えます。どのようなスタイリングであっても、最大限ハイクオリティでコンセプトをうまく表現できるようにスタイリングするのが私の考えです。

 ―今までの「コンセプトドル」という異名を持つほど独創的なコンセプトを持ったVIXXの衣装を数多く担当してきましたよね。「コンセプトドル」だからこそ、通常の衣装よりも苦労したり、気を使った部分もありましたか?

 やはりコンセプトドルという異名がつくほどコンセプトを沢山考えながら作業していますね。与えられたコンセプトが明確にあったものは、その分準備する過程で何をすべきか、より明確に考えて表現することができるので、より楽しく、やりがいを感じる仕事でした。

―スタイリングするとき、各ブランドから、協賛やタイアップを狙って、そのためのアイテムを導入することもありますか?(例えば、今回GUCCIのアイテムを印象的に使用して、次のタイアップを狙うなど)

どうしても協賛というものは宣伝を目的としてはいますが、とあるブランドの綺麗な服を身に着けてメディアに露出したところ、スタイリングが良くて結果的に広報効果が生まれて、そのような良い効果が出る場合もあったりします。

 ―韓国アイドルの空港ファッションは、よくファッションブランドの広報資料としても機能していますが、空港ファッションはある程度スタイリングされていますか?ブランドで提供されたアイテムを身に付ける場合もあるのでしょうか?

 空港ファッションが、ある瞬間からトレンドイシューになってスタイリストが協賛を受けてスタイリングをしていくことが多くなりました。(アイドル自身に)協賛が入っている場合もありますし、我々が直接協賛を受けて進行する場合もあって。現在は空港ファッションというもの自体がイシュー化されていて、何を着ているかに大衆の関心が向けられるので、どうしても気を使います。アーティスト個人の私服を着ることもちょくちょくあって、無条件に協賛進行をして着るとか、無条件にアーティスト個人の私服を着るということではなく、状況に応じて進行していますね。

 ―KPOPのアイドルグループの人気確立するにあたり、ますます<ファッション>の重要度が高まっていると感じています。長い間KPOPファッションシーンをサポートした立場で、この状況をどのように考えますか。

KPOP自体の認知度が上がるにつれてKPOPアイドルグループが着用しているスタイリングやファッションアイテムなどが目につくようになって、それが流行になったりイシューになるようになりましたね。KPOPアイドルのスタイリングをする者として、より誇りを持って、一つ一つのスタイリングにも気を使うようになりました。

 ―スタイリストとして幸せを感じる瞬間、大変だった瞬間はどんな時ですか?

 準備する過程では大変な部分もありますが、準備をすべて終えてスタイリングをして、その結果良い反応を得られた時、充足感とやりがいを胸いっぱいに感じるので、その前にあった大変なことは本当に覚えていないほど幸福感を感じますね。

 ―これまで数多くのスタイリングをしてきたと思いますが、過去のスタイリングの中から、特に気に入った衣装はなんですか?

 やはりVIXXのスタイリングが本当に気に入っていますね。毎回様々なコンセプトがありましたし、そのコンセプトをうまく消化して表現できる事も多かったです。時間が流れて、今再びその衣装と現在のスタイルを比較しても顔負けしないほど満足するスタイリングでした。

 ―NESTBOWL読者のほとんどがファッション業界を目指す若者です。ファッションを目指す若者たちにメッセージをお願いします。

誰もが言うことだと思いますが、本当にファッションには「こうしなければならない〜!」というものがないです。本当に正解があるものではないと思います。

もちろん、その時々でシーズン毎にトレンドが変わっていますが、そのトレンドに縛られて追うことに忙しくなるよりも、そのトレンドを反映しつつも自分だけのスタイルを作り上げることもできますからね。それから人々が、とあるファッションスタイルを見ただけで誰かを連想する時があるでしょう。そのような出来事を見てわかるように、結果的に「私」自体を表現することができるのがファッションだと思います。

text:ERINAM

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