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多くの有名デザイナーを生み出したロンドンのファッション名門校「セントラル・セント・マーチンズ(通称:セントマ)」はどんなところ?校内にお邪魔して日本人学生5名にインタビューを実施し、前編と後編に分けて授業の内容や学費、将来など学校での学びについて本音を語ってもらいました。
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参加者プロフィール
中澤氷名子
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中澤 氷名子(2年ファッション・プリント科)
具志堅 幸太(3年ファッション・ニット科)
谷本 和美(3年ファッション・プリント科)
児玉 耀(1年ファッション・ニット科)
富永 航(ファッション・プリント科 卒業)
児玉 耀:BAの1年生です。僕は日本の4年制大学を卒業してからロンドンに来ました。中学生の頃からファッションには興味があったのですが、親からは「大学は出なさい」と言われていたので進学しました。ファッションの制作が出来そうな文化系の大学に入ったのですが面白くなくて。入学してすぐ辞めたいと思っていたのですが、大学にファッションサークルがあり、学業とやりくりをして余った時間を全て課外活動に注ぎました。1年先輩で仲の良かった東京ニューエイジのショーにも出た「ケイスケ ヨシダ」 の吉田圭佑君が通ってたことが縁で「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」の山縣良和さんが主宰する「ここのがっこう」に大学在学中通っていました。そこで山縣さんが出たセントマや坂部三樹郎さんが出たアントワープのことを知り、それまであまり感じたことなかった「面白い」とか「かっこいい」ファッションを知って、モヤモヤしてた気持ちが開けたというか。その後日本の大学を卒業して自分でポートフォリオを作ってセントマに応募し今に至ります。(ここで制作作業のため退席)
セントマの教育とは?
学校について。良いところと悪いところを教えて下さい。
中澤:悪いところ。特に何も教えてくれないところかな(笑)。
谷本:でも先生とか全力でサポートしてくれる よね。
具志堅:何も教えてくれないってことは、逆に言うと自分でどうにか形にしないといけない。僕が何もしていなかったら先生も何もしてくれない。でもやっただけのことをチューターやテクニシャンにぶつけたら同じ勢いで返してくれる。そのやりとりは楽しい。
富永:テクニシャンていう人たちがすごく助けてくれる。技術的なことはその人たちが全てサポートしてくれる。
谷本:自分たちのガーメントを実際に縫ってくれたりもするから、そこまで技術がない学生でも学校でやっていけるよね。
※チューター:専任のアドバイザー、約30人の生徒に1人の割合でつく。
※テクニシャン:技術者。技術を教えてくれたり、実際に縫製をしてくれるなど制作作業をサポートしてくれる。
縫製やパターンなどの実技を教えてくれるような授業はありますか?講義系の授業は?
谷本:ちょっとだけある。学科によって違うと思うけど。
具志堅:ニットはほぼゼロ。ニットを編むのは専用のテクニシャンがいて、その人に1年生の時から何でも聞いていて「こうゆうのやりたいんだけど」って教えてもらう感じかな。
谷本:いわゆる大学のレクチャーみたいな授業もあるにはあって、1〜2年制の時はレポートを提出するコースもあるけど、基本的にファッションの授業っていうのはない。
具志堅:ニットもない。週に2回、デザインの先生とチュートリアルするだけ。 レクチャー式の授業は英語が難しかったから全然行かなかった(笑)。 成績は良いに越したことはことはないけど、先生によっても評価が違うからそこばかり気にしてもね。共通して言えることは、完成品もそうだけどその作品ができるまでのプロセスが重要視されて成績に反映されるってことかな。
ロンドンを選んだ理由
ロンドンで勉強しようと思ったのはなぜですか?デザイナーも都市によって違うと感じる?
具志堅:若さとクリエイティビティを感じたからかな。
富永:そうだね。若いデザイナーを政府やブリティッシュ・カウンシルみたいな機関がプッシュしてくれる。日本にはあまりない動きかも。
具志堅:パリは電車で一時間くらい。地理的には近いけどファッションの捉え方がすごく違う。ロンドンでファッションというと「自由」。何着てもいい。パリでファッションと言うと一概には言えないけど、ファーのコート着て革のバッグ持って、朝出勤前にカフェでエスプレッソ飲んで、っていうハイソサエティの嗜むものっていう感じがまだする。ロンドンは、お金がなくても楽しんでいる感じ。ユース・カルチャーやストリートとも密接なのも関係しているからかな。
富永:デザイナーに関して言うと、パリはメゾンブランドが多いから、若い人はやりにくいと思う。パリでやっている若手だと「ジャックムス(JACQUEMUS)」くらい?
日本との教育の違いは?
日本と海外でのファッション教育の違いで気づいたところは?
谷本:アイデアとやりたいことが伝われば形になっていく。あと人から好かれれば。
具志堅:不公平かもしれないけど、ある意味そこも才能だよね。
谷本:日本だと0から10まで自分でやらないといけない。技術にしてもみんな同じ程度の質を目指すことが求められるよね。
具志堅:今の話で思い出したんだけど、高校3年生の時に文化服装で「楽しく書こうファッションデザイン画」っていう高校生向けの2日間のコースを受講して、3〜4時間かけて8頭身ボディを1体描いた記憶がある(笑)。先生が黒板に描いたものをみんなが1画1画フォローする形式の授業だったんだけど、ちょっと無理だなって。セントマ来て初めてアート系の授業を取った時に、絵の具とか紙が目の前にあって「好きなように描いちゃって」って言われて。それが違いを表しているなのかな、って思いましたけどね。
谷本:「自由に描いて」って言われた時に「どうしよう」ってフラストレーションを感じる人は手取り足取り教えてくれる日本の学校の方が合ってるかもしれない。
中澤:そのやり方の方が合っているっていう人もいるだろうしね。
富永:そう考えると自分のことをよくわかっていて選ばないといけないよね。
谷本:でも難しくない?若い時点で自分を客観視するって。
>>【後編に続く】海外で感じる言葉の壁、卒業後の将来、日本のファッションについて
■セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アーツ・アンド・デザイン
(Central Saint Martins College of Arts and Design)
1854年設立。英国国立の6カレッジからなるロンドン芸術大学(University of the Arts London)に所属しており、現在約750名(うち留学生約半数)の生徒が通う英国で最大の芸術学校。
これまでにアレキサンダー・マックイーン、ジョン・ガリアーノ、ステラ・マッカトニーなどのデザイナーを輩出。今年、ファッションウェブ媒体の「ビジネス・オブ・ファッション」が発表した世界のファッションスクールランキングでBAプログラム(学士課程)の総合ランキングで1位、MAプログラム(修士課程)では2位にランクインしている。
>>公式サイト
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