今年のお買い物を振り返る「2022年ベストバイ」。23人目は、FASHIONSNAP社長の光山玲央奈。何着も色違いで購入したTシャツから、ハイブランドのスケートボードまで、今年も個性豊かなラインナップに。生地のチョイスや裏地の仕立てなど、ブランドやデザイナーの熱量を感じるアイテム9点を語ります。
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ルイ・ヴィトンのスケートボード
FASHIONSNAP.COM(以下、F):「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のスケートボード……ですよね?
光山玲央奈(以下、光山):そうです、ウィール部分を外して椅子にしました。これが結構大変で。
F:簡単そうに見えますけど(笑)。
光山:トラック部分のボルトで最後の1つがどうしても取れなくて。1ヶ月くらい朝起きたらチャレンジ、帰ってきたらチャレンジというのを繰り返しても取れなかったので、座間(FASHIONSNAP共同創業者)に相談したんです。DIYが大好きな彼なら、なにか妙案があるかと思って。
F:こうやって完成してるってことは、なにか秘策があったんですね!
光山:いえ、なかったです。2人でめちゃくちゃ力を入れて無理やりボルトを回しました(笑)。久しぶりにフィジカルで共同作業した気がします(笑)。
F:取れて良かったです(笑)。デッキで椅子を作るのは初めてですか?
光山:そうですね。スケートボードは乗らないんですが、スケーターが使い古したデッキを椅子にするのを見て「いつか自分でも作ってみよう」って思っていたんです。ただ、なかなかこれだというデッキがなくて。これはヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が急逝して、彼の作品を何か買っておこうとルイ・ヴィトンをチェックした時に、スケートボードが発売されると記者から聞いて発売を待って購入しました。
F:アブローの死去からもう1年が経ちます。
光山:早いですね。素晴らしい才能を持った方でした。ラグジュアリーとストリートの融合を果たしただけでなく、その可能性の航路を拓いたクリエイターでした。
F:これは椅子として使っているんですよね? サイドテーブルみたいな使い方もアリですね。
光山:そうですね。脚の部分の強度がまだそこまで強くないので、椅子というよりもサイドテーブルみたいな感じでもいいですね。なので、完全な椅子にするためにこれからさらにアップデートしていきたいです。ボルトの部分も出っ張りが強いですし。
F:ちなみにお値段は?
光山:40万円くらいでしたかね。今年買った中で一番高いものでした。スケボーとして見ると高いですけど、椅子として見るならコンフォートプライスですね!
F:そうですね……(笑)。
IHNNのローゲージニット
F:韓国・ソウル出身のデザイナーのイン・チソン(Ihn Chisung)さんが手掛ける「IHNN(イン)」のニットです。買ったモノでは初登場ブランドですね。どこが気に入ったんですか?
光山:このほっこりしつつも、クリーンな雰囲気が刺さって買ってしまいました。今、ヘビロテしてます。ダウンをこの上に着ると暑いんですが気に入ってます(笑)。
F:素材はウール95%でカシミア5%の上質感のある素材です。肉厚なローゲージニットですが、見た目とは裏腹に軽いです。
光山:適度にゆとりがあって、着るとさらに軽く感じますね。モックネックっぽいことで、ゆとりはあっても全体的に締まった印象になるのがとても良きです。
F:ハイネックやモックネックは苦手と言ってましたが、これは大丈夫なんですか?
光山:このモックネックは少し横に広がっていて、そこまで窮屈じゃないので気にならないです。基本的に首元が詰まっているネックは、息苦しくなって苦手なんですよね。なのでクルーネックでも、しっかり詰まっている時は、買った瞬間に手で無理やり伸ばしちゃいます。
F:(笑)。これはウィメンズですが、どこで買いましたか?
光山:伊勢丹のリ・スタイルです。時々覗くんですが、そこで見つけました。初めは、ウィメンズでもLサイズだったら着られるかな、と思って店員さんに聞いたら「ウィメンズのフリーサイズしか展開していない」とのことだったので諦めたんです。でも、だんだんと「フリーサイズなら着られるんじゃないか」とか自分の中で買う理由を探し始めたので、とりあえず試着してみたら全然着られたので即買いました(笑)。
F:フリーサイズならみんな着られる説ですね(笑)。最近のオーバーシルエットのおかげでウィメンズのアイテムも着られるのが増えましたよね。
光山:そうですね。着られる服の選択肢が増えることは嬉しいんですが、最近はみんなそうなっちゃって、同じように見えてしまうこともありますよね。だからこそ、デザイナーの力量が問われるというか。
F:同じようで同じじゃない部分を出せるかということですね。
光山:軸となる部分があるかどうかかな、と思います。このニットのエルボーパッチ部分だけ網目が天竺になっていて、インというブランドが何を大切にしているのかが何気ない部分で見えるんですよね。ああ、デザイナーは、素材や細かいデザインまでしっかり力を入れているんだなとか。
F:ちなみにインさんは、BFGU(文化ファッション大学院大学)出身です。前回、前々回と登場した「ポステレガント(POSTELEGANT)」のデザイナーの中田優也さんと同じ出身ですね。
光山:全然違う方向性だけど、何か共通した雰囲気を感じるのはそのせいなんですかね(笑)。
CFCLのGARTER Tシャツ
F:いっぱい買いましたね(笑)。
光山:実はこれ以外に黒をあと3枚買いました(笑)。
F:夏は、ほぼこれを着ていましたしね。光山さんは「ヴァレンティノ(Valentino)」のダブルフェイススタッズTをずっと着ていましたけど、廃盤になってしまい次のTシャツをどうするか、ずっと悩んでいましたよね。これに出会った経緯は?
光山:「CFCL」デザイナーの高橋(悠介)くんのパートナーとは昔から友人で、今年の誕生日にモックネックのタイプを1枚プレゼントしてもらったんです。初めて着たんですが、それが本当にとても良くできていて。モックネック以外もあるのかなって思って、サイトを見てみたらクルーネックがあったのでまとめて買いました。
F:それにしても買いすぎですね(笑)。
光山:そうですね(笑)。それだけ良かったってことです。
F:コンテンポラリーを掲げるブランドは多いですが、光山さんはあまり手を出していないような気がします。それこそ「テアトラ(TEATORA)」ぐらいしか思い浮かびませんが。
光山:本当に同じような服が多くて、正直つまらないんですよね。それこそ、同じデザインで同じ機能、ロゴも似てて、最近は売り方も同じで。今の時代には合っているんでしょうけど、なんだか熱量を感じなくて。テアトラのように細部まで拘ったブランドは稀な気がします。
F:CFCLも「Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)」の頭文字をとったブランドですが、他とはどう違うと感じますか?
光山:例えばこのアイテムだと、縫い代がないTシャツだけなら他にもありますが、袖にセンタークリースが入っていて構築的にシルエットを作っているんですよね。巷でよくあるコンテンポラリーだけに着目したブランドなら、ここにクリースは入れないんじゃないのかな。生地もよく見るとスラブっぽくムラになっていて、どことなくエスニック感がありますし。CFCLは、コンテンポラリーという言葉に対しての姿勢が違う気がしますね。
F:と言いますと?
光山:コンテンポラリーと銘打っているブランドの多くは、マーケットインの発想なんですよね。自分の周りを見渡して、その範囲で生活する人たちにフォーカスした服を提供しているというか。都心で暮らしてて、クリエイティブな仕事に就いている人たちに囲まれていたら、「ブラックでナイロンで、スニーカーに合わせられるように」みたいなデザインになっちゃいますよね。でも、CFCLはプロダクトアウト的というか。
F:それが他にはない感じだったりするんですね。
光山:コンテンポラリーと一言で言っても、国や場所、文化などで同時並行的に様々に存在しているわけじゃないですか。それを一つだけ抜き出して「コンテンポラリーです」と言われても説得力ないですよね。CFCLは一つ一つを精査して、その中に生き続けている文化だったり表現だったりを取り入れることで、本当のコンテンポラリーを作り上げようとしている姿勢を感じるんですよね。ドレスをリリースしているところに、すごくそれを感じますね。
F:「POTTERY」シリーズのドレスですね。素晴らしいプロダクトです。
光山:着られないのが悔しいです(笑)。日本は欧米に比べてオケージョンの機会が少なくて、いわゆるドレスを着る頻度に違いがありますよね。そういった異なる2つのコンテンポラリーを理解した上で、そのどちらでも着られる設計を行なってちゃんとセールスまでできているのがすごいと思います。
F:Bコープ(社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度)取得などでも注目を浴びていますしね。
光山:もはやアイテムのデザインだけで「デザイン」とは言えない時代にもなってきましたからね。ラグジュアリーブランドのような長い歴史を持っていないからこそ、新しいスタンスに挑戦できるんだなって思います。
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