パリからちょっと足を伸ばしてヴェルサイユへーーー。ヴェルサイユ宮殿を見学するなら、過去と現在の歴史に触れる体感をしてみたい。時間と心に余裕をもうけると、見逃してしまいがちなことが発見できる。もし、そんな一時を体験されたいのなら、「いいよ」と言うまで目を開かず、誘導されてほしい。ここだけの魅力的な場所にお連れしよう。(取材・文:Kaoru URATA)
■Cour des Senteurs(香りの中庭)
ようやく青々とした木々や枝葉の間から、色彩豊かな花々が咲き誇る季節がおとずれた。風が吹くと、ほのかな香りが鼻をくすぐる。爽やかな欧州の夏の姿である。


「さあ、ここで目を開けて」と、庭園の真ん中で手を放す。かたや芝生の絨毯とバラの花壇、住宅に続く傾斜にも、季節折々の植物が咲いている。異形の土地に完成した庭園には、理由がある。周囲を囲む重々しい石造りの建物脇の細道を辿っていくと、その秘密の在処が明かされる。

「香りの中庭」には、フランスのラグジュアリー界をリードする4社が集結する。香水の老舗ブランド Guerlain(ゲラン)、パティスリーと製菓 Lenôtre(ルノートル)、粋なキャンドル Diptyque(ディプティック)、家業4代が継承する手袋の Maison Fabre(メゾン・ファーブル)と、キャストは豪華である。



今年は、ヴェルサイユ宮殿の庭園を設計した建築家で造園師の André Le Nôtre(アンドレ・ル・ノートル)の生誕400周年記念の一貫で、街をあげてのイベントが目白押しである。現在の市長は、前職フランス建築研究所(IFA)の代表者であったこともあり、都市計画の中に位置づけられる建築と街の整備に関しても高いを関心を寄せる。

市長は「王宮時代に栄えた芸術文化が、今日も創造の交差点であるために、歴史が育んできたエッセンスの数々から価値を見出だしていきます」と、ヴェルサイユ市が過去の街ではなく、現在でも魅了していくための熱い抱負を語った。


並行に、4社が展開する商品は、歴史の中で培われてきた各社のノウハウを反映したもので、ここならではの限定商品も販売する。エントランス付近にある、 Maison des Parfums(メゾン・デ・パルファン)では、香りや香水の歴史を写真とテキストで綴る。壁面からは、「オレンジの香り」が泉のように流れる。こうした環境を取り巻く、香りの庭園には、200種ほどの植物が栽培される。


四季折々のヴェルサイユ訪問が、また一段と魅力的に感じられることだろう。
■浦田 薫 - パリ在住ジャーナリスト -

建築とデザインに情熱を抱き、好奇心の旺盛さに寄り道が多い筆者は、多国籍文化の中で生活する、東京生まれのパリ育ち。デザインコンサルタント、企画プロデュース、翻訳・通訳も並行にしながら、異なる文化や言語の渦中で観察を続ける日々を過ごす。本サイトでは、環境に応じて人間が役割を与えて誕生する、空間、もの、出来事について読者と意見を交換していきたいと思う。
【連載】パリの寄り道
・第1回 蚤の市とフィリップ・スタルクのカフェ
・第2回 塩味ゴーフルは夏の味 マドレーヌ広場のカフェへ
・第3回 ヴェルサイユ散歩その1〜モニュメント・カフェ編〜
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香りの中庭への正面玄関
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