
Image by: FASHIONSNAP(Kazuki Ono)
小林裕翔による「ユウショウコバヤシ(yushokobayashi)」が、2025年秋冬コレクションをランウェイショー形式で発表した。会場はTHE FACE DAIKANYAMA。
2025年秋冬コレクションのタイトルは、「アンソロジー(Anthology)」。映画「パスト ライブス/再会」(監督:セリーヌ・ソン、2023年)から着想を得て、人生の中で友人や家族などとのさまざまな出会いや別れを繰り返し、それらが積み重なっていく様子を演劇形式のショーでストーリー性豊かに表現。Rumi Nagasawaによるエレキギターの弾き語りがその世界観を彩った。
先シーズンに続いて「人と人との出会いと別れ」や「すれ違いとその連続」を題材とした小林は、その理由について「私はハッピーエンドよりもバッドエンドの物語の中に美しさを感じたり、その儚さに惹かれる部分がある。叶わなかったことの方が後になってより強く記憶に残っていたり、今近くにいる人だけでなく、自分の前からいなくなってしまった人も同じように記憶に残っているといったようなことが、クリエイションをする上で自分の中では大切」と語る。
コレクションでは、人との出会いと別れの重なりとその残像を、生地の多層なレイヤーやパッチワークなどを用いて表現。色やパターンの異なる複数のチェック柄や花柄のファブリックがパッチワークされたジャケットやスカート、大判ストールなどをはじめ、色やテクスチャーの異なる多様な糸で編まれたニットトップスやニットパンツ、チェック柄生地の上にレース柄をプリントし、さらにリボンやレースのテープを装飾として重ねたスカートやドレスといったアイテムに落とし込んだ。
ショーやモデルたちの表情からは「人との別れとすれ違い」による悲しみや切なさが多分に感じられつつも、カラーパレットやモチーフには「洋服はそんな日でもかわいくありたい」という小林のマインドを反映。パステルピンクやパステルブルーを基調とした明るく柔らかな色味と、花やハート、チェック柄などの朗らかでかわいらしいモチーフを多く取り入れた。テクニック面では「一点一点違うものを作りたい」との思いから、ハンドクラフトを強化。ハンドと家庭用編み機を組み合わせて編んだニットアイテムをはじめ、手縫い感を感じさせるパッチワークや、ニードルパンチによって手作業でレースやモチーフを間に挟み込んだファブリック、アクセサリーには羽根や造花などをランダムに用いるなど、より意図的にクラフト感を残した。
本来「服」がメインとなるファッションショーだが、ユウショウコバヤシのショーは、いわゆる“ファッションショー”とは趣を異にする。服を着たモデルたちが、会場に設えられたセットの中で“別れ”にまつわるさまざまな場面を実際に演じ、章の移り変わりのサインを手で掲げながら進行していくような演劇的で手作り感のあるショーからは、「服」そのものというよりも、その背景にある人間像やその記憶と感情のようなものの方が、より強く豊かに、観客の心や感覚に流れ込んでくる。プロのモデルだけではなく、役者や実際にブランドの服を買っている客をモデルとして起用していることも、そのリアリティを強調していた。
小林が「“別れ”の物語という具体性はありつつも、余白を残したかった」と話したように、まさにユウショウコバヤシの服やショーには、観客自身がコレクションの背景にある物語を想像するとともに、自身の記憶や傷、思いを投影できるような余白がある。一見すると甘やかで空想的でかわいらしい、手仕事のあたたかみに溢れた服たちは、着用者の過去に積み重なった悲しみや後悔、痛みの痕跡を「それも大切なものだ」と目に見える形で肯定してくれるような、継ぎ接ぎしたパッチワークでその傷をやさしく覆い癒してくれるような、そんな包容力がある。今回のショーでは、ユウショウコバヤシというブランドがもつ独自性や魅力と、ショー会場で感じるブランドを愛するファンたちからの信頼と熱量の強さの理由を、再確認することとなった。
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