Image by: mister it.
砂川卓也が手掛ける「ミスターイット(mister it.)」が、2025年春夏コレクションをプレゼンテーション形式で発表した。会場は東京・代々木のTEN10 Studio。
先シーズン、初のランウェイショーを実施したミスターイット。ブランドの世界観を提示した先シーズンに対して、今シーズンは「ブランドが何をしたいか」、「どういう考えを持って服作りをしているか」といったフィロソフィーを丁寧に発信するため、プレゼンテーション形式を採用したという。
会場では、来場時にゲストひとりひとりに対して名前が手書きされたブックが配布された。ブックには、コレクションに登場するルック順に各モデルが着用するアイテムの説明が記載されており、それぞれ来場者に似合うと砂川が薦めるルックのページにポストイットが貼られていた。
プレゼンテーションは、会場に集まったゲストたちを前に砂川自身が今シーズンの発表に込められた想いを語るところからスタート。日本でブランドを立ち上げる以前に、パリでコレクションを発表する機会を得た砂川は、パリでお世話になった10人の知人のために服を作り、その10人を前にプレゼンテーションを行ったという。当時から、ひとりひとり相手を思い浮かべながら、どのような服を作ったら喜んでくれるか、楽しんで服を着てくれるかを考えながら服を作っていた。そういった考え方は現在も変わらず、身近にいる人や新たに出会った大切な人からインスピレーションを得て、その相手が楽しみ、喜んでくれるかを強く意識してものづくりをしている。その言葉の通り、ミスターイットのアイテムには、全て着想を得た人物の名前が付けられている。こういったものづくりの姿勢は、ブランドが今後ますます成長しても変わらず、「とことん人のことを考えて作ることは続けていきたい」と砂川は話す。
「オープンフィッティング」と題された今回のプレゼンテーションは、ショー自体は行わないが、ショーの本番の前日に大事な人々を招いて丁寧にプレゼンテーションを行いながら、友人たちと最終フィッティングをチェックしていく」ことをコンセプトに、フィッティング風景を披露。モデルたちはまず砂川の前に立ち、小物の追加や服の最終調整を砂川が行い、モデルは狭いホワイトキューブの両脇から鑑賞するゲストたちの前を歩いた。
ファーストルックは、ミスターイットのことを周りの人々によく広めてくれるというNadineのために仕立てたシャツに、アクティブでエレガントなElisaのために製作した上品ながら歩きやすいロングソックスを合わせた。シャツは、PRチケットがたくさん入るマチ付きのポケットが付属し、後ろ身頃の裾はドレスのトレーンのように引きずるほど長い。これは、軽やかなクチュールを追求した、今シーズン最初に作ったシルエットだという。このほか、いつも丁寧に服を扱っているAlistairに向けて、移動中に脱いだ服を丁寧に扱ってもらいたいという発想から製作した、服をかけることが出来るハンガー型のバッグ、普段からボトムのポケットにたくさんのものを詰め込んでいるManuのために中身の取り出し方を重視したポケットをあしらったデニムパンツなど、パーソナルな友人との想い出が込められたアイテムが登場した。複数のモデルや砂川自身も着用していたキャップは、砂川自身が自分のために作ったもの。情報が溢れる社会に対して視界を狭めたいという考えから、ツバは長く下向きに傾斜し視界を遮っている。砂川のルーツでもある奄美大島の泥染めで染色したアイテムや、曽祖父の代から続くスカーフ職人の家庭に生まれたという自身の出自を反映させたアイテムなど、これまでも展開してきた要素も多く取り入れ、ブランドが大切にしているものを改めて提示するコレクションとなった。
ABOUT THE BRAND
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2018年に砂川卓也が立ち上げたウィメンズブランド「ミスターイット(mister it.)」。「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」で積んだ経験を元に、オートクチュールのテクニックを身近なアイテムに落とし込んだコレクションを展開している。
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エスモードパリ(Ecole International de Mode ESMOD Paris)を主席で卒業。2012年メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」に入社し、メインコレクションに加えてオートクチュールのデザインにも参加。その後、2018年より「ミスター イット(mister it.)」をスタート。
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