「サカイ(sacai)」メンズ部門の元チーフパタンナー兼ブランドマネージャーとして経験を積んだ髙橋伸明が2023年に立ち上げたブランド。アウトドアやヴィンテージなどデザイナーの好きなテイストを融合し、国内外の上質な素材を用いて自然から都市までシームレスに着られるワードローブを提案している。
髙橋 伸明
Nobuaki Takahashi
1982年千葉県出身。文化服装学院、文化ファッションビジネススクールを卒業後に渡仏、フランスのパリサンディカクチュールへ進学。その後パリや日本で経験を積み「サカイ(sacai)」メンズ部門チーフパタンナー兼ブランドマネージャーを務め、2023年に自身のブランドである「NTN」を立ち上げた。
ADVERTISING
- BRAND CONCEPT -
永続的でありながら時代に合わせて変容するワードローブを提案
“永続的なプロダクトを目指し、時代や人に寄り添いながら変容していくワードローブ”をコンセプトに掲げ、さまざまなカルチャーからインスピレーションを得た伝統的かつ機能的なアイテムを展開している。このようなコンセプトを掲げた理由について「自分が着たいものを作ろうと思った時に自然と湧いてきた」と説明。デザイナー自身もトレンドを追いかけた流行りものよりも、時代を超越し愛されるいわゆる定番品を手に取ることが多く、このようなコンセプトを設定したと付け加えた。その一方で時代や人に寄り添いながら変容していくという点についても言及し「毎シーズン同じものばかりを作りたいわけではなく、あくまでもファッションブランドとしてその時代に必要とされる要素や新しさは常に意識している」と補足した。
- BRAND NAME -
ブランド名の由来
デザイナーのイニシャルであるNTに再びNを重ねることで、プロダクトとしての永続性を表す記号として表現。「反復した記号的な名称がブランドのコンセプトにリンクするかと思い、このようなブランド名にした」と解説。ブランドを長く続けるという決意とともに、新しいベーシックを生み出したいというデザイナーの想いも込められているという。
- CHARACTERISITIC ITEM -
ブランドを代表するアイテムはベータジャケット
ブランドを代表するアイテムとして、デビューシーズンから継続して展開しているベータジャケットを挙げた。シーズン毎に生地やカラーを変え、シグネチャーとしてファンからも愛されている一着だ。「ブランドを立ち上げる際に一番最初に作ったプロダクトであり、機能性がシルエットやデザインになるように作られた、NTNの考えを体現したような一着だから」とベータジャケットを選んだ理由を回答。「アウトドアファッションの中でもシェルジャケットが一番好きで、スタイリングの肝になる」とデザイナーにとって思い入れのあるシェルジャケットをモチーフにした一着には、アウトドアウェア由来の機能的なディテールが詰め込まれている。マチがあり収納力抜群なフロントのスリットポケットや、顔に当たらないように右側にズレるように走らせたジップライン、開閉しやすいように長めに設計されたフードコードやジップを閉めずともワンタッチで着用できるフロントのスナップボタンなど、シンプルながらもアクセントとして存在感を放つ。どれもテクニカルで実用性に富んだ仕様は、「デザインのためではなく、あくまでも機能を追求した」とデザイナーが形容するように、「NTN」のクリエーションの根幹を担う"機能美"を文字通り体現したような仕上がりが特徴だ。
2024年秋冬コレクションを代表するアイテム
2024秋冬コレクションでは未開拓地を意味する「BACK COUNTRY」をテーマに掲げ、自然由来の造形や質感、色彩に対する身体の動きや思想から着想を得たイメージを素材やパターンに落とし込んだアイテムを展開。花崗岩の質感を表現したデニム加工のグラナイトや石灰石の複雑な白のチョーク、深い森のオリーブカラー、晩秋を思い起こす深い赤など、自然に身を置き対峙した時に見えるカラーラインナップでアイテムを構成している。中でも霧がかかった情景をイメージしたフォグブルーの色味を採用したアセントシャツは、デザイナー自身も気に入って頻繁に着用しているアイテムの一つだそう。素材の良さを最大限引き出す色味を採用するというデザイナーの考えのもと、リップストップの光沢感にマッチする抽象的なブルーグレーのような色味に設定。シャンブレーのように見る角度や光によって表情を変え、化繊が持つ光沢を上品さを感じさせる艶へと昇華した一着だ。
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- COLLABORATION -
コラボレーションで印象深いのはスパイバー
印象深いコラボレーションとして挙げるのは、2024年秋冬コレクション内にて発表したバイオベンチャー「スパイバー」との協業だ。このコラボレーションに際し、人工タンパク質素材であるブリュード・プロテイン繊維とリサイクルウールを使用したボア生地を用いたジャケットやベスト、スカーフの3型を展開。「ブリュード・プロテインという素材を既視化したような繊維感を感じられる表情に惹かれた。僕らみたいな小さいブランドがやるなら面白い方がいいかと思い、特徴的なものをピックした」とボア生地を選んだ理由を説明した。使われなくなった衣類や縫製工場から出るウールの端切れなどを原料にした反毛ウールに、ブリュード・プロテイン繊維を取り入れた同素材を使用した製品がブランドから発売されるのは、この取り組みが初となる。「消費者が環境に配慮された商品を主体的に選ぶのはまだまだ難しい。作り手としてこういったものを提供して問題を考えるきっかけづくりができれば」と環境問題に対する想いを語った。
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