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ZOZOCOSMEが3周年 大台100億からのその先、「コスメのことならZOZO」を目指して

ZOZOCOSMEが3周年 大台100億からのその先、「コスメのことならZOZO」を目指して

 2021年3月18日、約500ブランドを集積してスタートしたZOZOのコスメ専門モール「ZOZOCOSME(ゾゾコスメ)」。丸3年が経過した2024年3月期はGMV113億円と大台に乗せ、今期は130億円を目指す。プチプラコスメから百貨店コスメ、外資系ブランドに加え、昨今は韓国コスメも充実し、現在の取り扱いブランド数は700を超える。ここまで順調に成長したコスメ事業の経緯について、そして「ファッションのZOZO」だけでなく「コスメのZOZO」を目指す今後の施策について、2021年のスタート時から同事業に携わるEC推進本部カテゴリ推進部ディレクター 青木俊祐氏にインタビュー。成長の背景にあるのは、多くのブランドが狙うZ世代の取り込み成功とZOZOならではのファッションとの連動だった。

青木俊祐:EC推進本部カテゴリ推進部ディレクター 。専門学校卒業後、2004年にアルバイトとして株式会社スタートトゥデイ(現:ZOZO)に入社し、フルフィルメント業務にあたる。その後、バイヤー、出店ブランドの営業担当を経て、2021年からZOZOTOWNのコスメ専門モール「ZOZOCOSME」などの企画・運営に携わる。

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リアル店舗があることが、ECでコスメを買うことへの後押しに

「ゾゾコスメ」スタートから丸3年、振り返ってみていかがですか?

 事業をローンチした2021年3月はコロナ禍真っ只中で、コスメに限らずさまざまなものをECで購入する人が増えたタイミング。そのおかげで多くのお客さまに利用していただきました。アフターコロナとなってからも、ECでも十分買い物を楽しめることを経験したユーザーから継続して利用していただいています。リアル店舗で買う人もいれば、ECで買う人もいる。チャネルを選べる環境になったのはゾゾコスメにとって良かったポイントです。一方で、コスメもECで売上を作れることを多くのブランドさんに認知していただいたことは、その後の出店誘致にも寄与しました。

単純にリアルがなければ、ECの売上が拡大すると思うのですが、リアル店舗とECを選択できることが、EC専業のゾゾコスメにとって良かったというのはなぜでしょうか?

 リアル店舗を使っていただくことは、われわれにとってデメリットではありません。なぜなら、一般的にECではサンプルを試すことができないため、使用感などを実際に試したい場合は、リアル店舗に行って、ご自身でお試しいただく必要があります。その上で、購入手段の選択肢が増えたことはプラスになるかと思います。

事業スタート時、2021年3月に遡りますが、スタートの経緯を教えていただけますか?

 ゾゾタウン内では、その10年前の2011年からコスメブランドを誘致していましたが、取り扱いは数十ブランドと小さい規模でした。ただブランドさんとのやりとりの中でも「コスメを強化して欲しい」とのリクエストが多かったことから、2019年11月に事業構想がスタート。その後も、運営方法などかなり社内で揉んでいました。

スタート時から500ブランドというのは驚きました。

 その数を揃えられたのは、営業部隊の努力の賜物です。せっかくサイトに来ていただいても、気になるブランドや新しいブランドに出合えなかったら、「チェックする必要があるかな?」と思われるでしょうし、一度離れたユーザーに戻って来てもらうのが非常に難しいことはよくわかっていましたから。ゾゾコスメオープン以前は取り扱い規模は小さかったものの、売れている商品内容などの実績をブランド側に丁寧に伝え、営業交渉してきた結果かと思います。

メイクはファッションの一部、だから物が動く

青木さんは、現職以前はファッションの担当だったとお聞きしました。ファッションとコスメは近いようで遠い部分もあり、商慣習も業界の雰囲気も違うかと思います。何か苦労した事はありますか?

 完全に売り方が異なります。ゾゾタウンの場合、アパレルブランドはクーポンを配布したりタイムセールを実施したりして、売上を作ることもあります。一方でコスメはセールの概念がないブランドが多く、「ではセールをやりましょう」とならないところから始まります。ローンチ時は、見に来てくれたユーザーに「自分の欲しいブランドがちゃんと揃っている」と思ってもらえる土台があること、それを認知してもらうことに注力しました。

セールの概念がないコスメブランドを相手に、売上を作るために注力したのはどんなことでしょうか?

 ファッションとコスメは“近いようで遠い”というお話しでしたが、いざ蓋を開けてみると、コスメとファッションは“親和性がないようである”ことがわかりました。コスメのリアル市場もEC市場もスキンケアの割合が高いと思いますが、ゾゾコスメはメイクアップの割合が高いのが特徴です。それは、ファッションの中にメイクが含まれているからだとわかりました。なので当初は、メイクを打ち出す企画やインフルエンサーを起用してメイクステップを見せる企画を試行錯誤しながら実施していましたね。

ゾゾコスメは商品を選ぶ際に、細かい「こだわり検索」ができるのも嬉しいですよね。あの検索はフッションでノウハウを蓄積したゾゾタウンならではです。

 「こだわり検索」はローンチ時からありましたが、どんどんアップデートしています。おっしゃるように、ファッションを探しやすくするのと同様にコスメも考えていて、ブランドからの要望も踏まえながら、どの項目を採用するかテーブルに並べて、かなり議論しています。

ローンチ時からアップデート重ねる「こだわり検索」機能

3周年企画は2周年の2倍の品番を揃え、数時間で完売

ゾゾコスメに手応えを感じたのはいつごろでしょうか?

 2周年に限定アイテムを多くのブランドさんが協力してくださった時、出店ブランドと営業との関係性が構築されたことを身にしみて感じました。もちろん、売上が伴わなければ協力もしていただけないですし、それは日頃から、営業がプライスプロモーション以外で売上を作る方法を提供してきたこともあると思います。

3周年のスペシャルセットはブランドを横断して商品展開がありましたし、限定アイテムは2周年の時よりかなり数も増えていました。

 スペシャルセットは第1弾、第2弾ともに数時間で完売しました。また、3周年企画時に販売した品番数は、2周年企画時の2倍を超え、さらに成長を感じることができました。

人気ブランドのコスメをオリジナルパッケージに詰め合わせたZOZOCOSME3周年のスペシャルセット

コスメのボリューム層はゾゾタウンより若干若め

現在は700を超えるブランドが出店し、商品内容もかなり充実しています。それほど支持される理由をどう分析しますか?

 ゾゾタウンユーザーの平均年齢は34.9歳(2024年3月末時点)ですが、ゾゾコスメの購買層のボリュームゾーンはそれより若干若めで、ボリューム層は20代です。出店するブランドが自社ECでは拾いきれない、そういったZ世代を含む若年層にリーチできることにメリットを感じてくださっていると感じています。ゾゾタウン全体でも、若年層を獲得する施策を積極的にやっているのも功を奏していますし、若年層に多い「いろんなブランドを試したい」という要望にもゾゾコスメなら完結できます。

これまで、売上が伸びた施策はありますか?

 Z世代に人気の韓国コスメがお得に購入できるイベントでは多くの方にご利用いただきました。またアパレルをメインにしているサイトではあるので、アパレルのついでにコスメも買ってくださるような販促は反響が大きかったと思います。

というと?

 アパレルとコスメを同じカート内で決済すると、コスメ商品で使えるポイントを還元するというもので、2022年にテストして、2023年に本格導入しました。アパレルを購入して決済に進むと「コスメ同時購入でポイント還元」の案内が出るようにサイトをデザインしていますし、決済後の還元なので、再来訪するきっかけにもなっています。

先ほど「コスメブランドはセールの概念がない」というお話しでしたが、以前に比べると、セール商品も増えているように思います。

 最近は、韓国ブランドの出店も増えていて、そういったブランドがセールに参加してくださるケースが増えました。なので、これまでセールをやらなかったブランドがやるようになったというより、やれるブランドの出店が増えたという形です。韓国コスメの「VT」などはセールを活用して再購入するユーザーが多く、好調なブランドの1つです。

メイクアップ以外に伸長しているカテゴリーはありますか?

 全体の売上が増加する中、その構成比にも変化があります。メイクアップが強いというのは変わりませんが、そこにスキンケアが加わり、最近はフレグランスも伸びています。ECでは香りを試すことはできませんが、ブランドがターゲットとするファッション志向や年齢層にサンプルを配布して、購入に至るケースもあります。そのサンプル配布はフレグランスに限らず、他のアイテムもローンチ時から継続して行っていることではあるのですが。

改めて、3年間で113億円まで成長できた理由は何だと思いますか?

 難しい質問ですが、アパレルと親和性があるカテゴリーというのが、1番大きいと思います。全くのゼロからゾゾコスメというサイトを立ち上げるのでは、到底難しい数字です。ゾゾタウンのユーザーの数が膨大で確立されている中でスタートできたことが大きな後押しであったことは否めません。

ファッションのゾゾタウンだから、ゾゾコスメが成功したということでしょうか?

 メイクや香りはファッションの1つに含まれています。スキンケアはどちらかというとアンダーウェアに近いですが、メイクやフレグランスは洋服に近く「まとうもの」。ファッションとコスメの親和性は人によって違うとも言えますが、それが合致しているユーザーが多いのが、ゾゾタウンの特徴だと思います。

これからは毎日、ゾゾコスメを見に来てもらうために

今期は130億を目指します。達成への施策を教えてください。

 もちろん、アパレルと一緒にやっているからこそ、売上を伸ばしている部分はあると感じています。ただ、これからはアパレルを目的として来るユーザーだけでなく、コスメを目指して訪問していただける環境を作っていかなければなりません。例えば、消費財であれば、なくなった頃に追加購入を促すMAなどにも注力していきたい。実は、3周年記念のタイミングで、日替わりの特定アイテムを購入して、レビューを書いていただくと30%ポイント還元されるキャンペーンを行ったところ、非常に好評でした。このように毎日、ゾゾコスメを見に来たいと思ってもらえるような施策に注力して、さらに強化していきたいです。

レビューを書くというのがポイントですね。

 そうなんです。弊社としては、レビューを蓄積したいというもう1つの目的がありました。レビューが蓄積されてサイトの商品詳細内で商品の特徴が把握できるようになれば、口コミを見るために他サイトへ離脱する事がなくなり、すべてがサイト内で完結することができます。商品的にも情報的にも日々サイトが更新されていることで、毎日来訪したくなり、気に入ったものがあれば購入する。そのサイクルを作っていきたいと思っています。

5年後、ゾゾコスメの未来像は?

 「ファッションを買うならゾゾ」から「ファッションのことならゾゾ」を目指しているように、「コスメを買うならゾゾ」「コスメのことならゾゾ」を目指します。コスメのことを想起したら「まずゾゾを見よう」という行動が普通に生まれるような取り組みを積極的に実施していきます。

(文:川原好恵、聞き手:福崎明子 平原麻菜実)

ライター・エディター

川原好恵

文化服装学院卒業後、流通業界で販売促進、広報、店舗開発を約10年経験した後、フリーランスとして独立。下着通販カタログの商品企画などを経て、現在はランジェリーやビューティを中心に、雑誌、新聞、ファッションウェブサイトなどで執筆・編集を行う。

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