ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)が手掛ける「ヴァレンティノ(VALENTINO)」2022年秋冬コレクションは、溢れんばかりの「ピンク」がランウェイを彩った。
まず、ヒントは会場にあった。壁から椅子、柱、フロアまで一面がショッキングピンクで統一された空間ではゲストの顔も反射でピンクがかって見えるほど。パントン・カラー・インスティテュートとのコラボレーションにより実現したショーが始まるとゲストの推測は確信へと変わり、登場するモデルたちはメンズ、ウィメンズ関わらず誰もが首から顔を除く手の先から足の先までピンク一色に染まっていた。メーキャップをはじめ、イヤリングやバッグ、ストッキング、グローブやシューズまでモノトーンで揃えられ、背景に同化しているようにも見える。ピンクの行進は中盤、転じて黒一色のルックに切り替わるまで続き、再びピンクルックでフィナーレ。ピッチョーリによるこの実験的なコレクションは、「カラーパレットを一色に徹底的に絞り込み、一見すると可能性が狭まったように思われる枠組みの中で、表現の可能性を最大限に広げる」試みとして発表された。
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引き込まれたのは素材表現。同じ色が繰り返し登場することで、ディテールやテクスチャー、シャイプや技巧の多彩さが際立つ。透け感のあるシフォンとローライズのワイドパンツが一体となったジャンプスーツや、ビジューが施されたオフショルダーのバルーンドレス、スパングルがデザインされたニットのセットアップ、素肌が覗くカットアウトシャツ、軽やかに舞うオーガンザのシャツドレス、スパングルのサロペット、フェザーのコクーンコート、ボウディテールのウールコートなど、一つの色の中に様々な質感が見て取れる。また、ウィメンズがドレッシーなルックで大半を占める一方、メンズはピンクの同色ながらドレスダウンしたようなカジュアルな装いもコントラストを生み印象的だ。
ピンク一色に目が慣れてきた頃、中盤に投入されたトータルブラックのルックはある種の視覚効果のように機能し、いつになく"鮮明な黒"として目に映った。
「ピエールパオロ・ピッチョーリのピンクは、二つとない個性」。コレクションノートに記された言葉通り、ピッチョーリは驚きと不思議な感覚に包まれたランウェイで、"画一的な枠組みの中で際立つ個性"を浮かび上がらせた。
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