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2025年の展望を、2024年の振り返りとともにインタビューする「トップに聞く」。「サボリーノ(Saborino)」や「クレンジングリサーチ(Cleansing Research)」など、ロングセラーブランドを擁するスタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニーは2024年、飛躍的に躍進した。サボリーノや「ロアリブ(ROAlív)」といったリニューアルブランドのほか、コロナ禍の2021年に誕生した「乾燥さん(KANSOSAN)」の伸長が好成績を牽引する。売上・利益ともに大きく伸ばす一方で、現状に満足することなく、新たな市場への参入も積極的に行ない、2024年のサプリ市場に続き、2025年は美容機器市場へ。さらには海外展開の拡大など、突き進み続けるその戦略について、大村和重カンパニー エグゼクティブ プレジデントに聞いた。

■大村和重(おおむら かずしげ)2007年、BCLカンパニーの前身であるB&Cラボラトリーズに入社。2018年にBCLカンパニー国内事業部の事業部長に就任。2019年からカンパニーエグゼクティブを兼任し、2021年6月にカンパニーエグゼクティブプレジデントに昇格。スタイリングライフ・ホールディングスの執行役員も務めている。
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目次
SNSでも話題、「乾燥さん」の躍進が売上を牽引
⎯⎯2024年を振り返り、一言で表すと?
「躍動」です。
コロナ禍が明けた2023年は「この先どうなるのだろう」と、少しの不安も残しながら過ごす年でしたが、一方で、2024年はそういった不安を払拭してスタートダッシュからの勢いがずっと止まらなかったという印象です。化粧品業界がコロナ前の状態に戻るのは2026~2027年になるだろうと思われていましたが、そんな不安をよそに急激に回復しています。これは当社のような中堅メーカーや新興メーカーの実績が大きく伸びたことが影響していると見ています。
⎯⎯2024年の業績について教えてください。
今期(2025年3月期)の売り上げは前期比35%増、営業利益は同80%増で推移していて大変好調です。その要因は、コロナ禍に入っても新商品開発を止めずに続けてきたことです。社会情勢の変化のタイミングは化粧品トレンドも変わる時期。そうした変化を見据えてコロナ禍に誕生させたのが、乾燥肌に向けた保湿特化ブランド、乾燥さんです。保湿に対する需要が伸びていくだろうと予測して打ち出しましたが、売り上げは右肩上がりで昨年は前年比3倍を記録しました。

⎯⎯SNSでも話題を集めていますが、乾燥さんが大きく伸長した要因は何だとみていますか?
SNSの影響や信頼性のあるインフルエンサーの紹介などさまざまですが、コロナが明けた今、生活者は“なりたい人”より、”一緒に寄り添ってくれそうな人”を支持する傾向が強いと思います。そうした背景と、パッケージに描いているキャラクターが相まって信頼性のあるブランドとして受け入れられているのかなと。また、商品パッケージはシンプルで洗練されたデザインを施した一方、商品外箱ではキャラクターや乾燥、保湿を強調したデザインでどんな商品なのかを一目で分かりやすく覚えてもらいやすいものにしました。見た目を可愛い韓国コスメに寄せるのではなく、効果感をしっかり伝える真面目さ。そしてそれに伴う商品の効果実感全てが相乗効果になっているのではないでしょうか。
「サボリーノ」は“朝マスク”市場の創出に成功、強固なブランドに
⎯⎯主力ブランドであり、ロングセラーブランドのサボリーノ(Saborino)は昨年のリニューアル後、いかがでしょうか?
コロナ禍でインバウンド需要が減少し、サボリーノの売り上げは大きく落ち込むと予想していました。しかし影響が少なかった。なぜなら、ブランドが誕生して10年が経ち、“朝マスク”はすでに消費者の生活に根付いていたからと分析しています。そこで10年間ほとんど変化していなかったサボリーノを2024年に刷新し、売り上げは同50%増と順調に動いています。“朝マスク”という市場の創造でブランド認知度を高められたこと、日々のスキンケアの一連の中にフェイスパックが当然のように組み込まれるようになったことなどが強みになっています。また、サボリーノやカンソウサンは昨年11月からマス向け施策としてテレビCMをスタート。認知度がさらに高まり消費者の購入の後押しとなっています。

⎯⎯韓国コスメをはじめ、シートマスク市場は急速に拡大しています。そんな中で存在感を発揮していくには?
シートマスク市場は新興メーカーが次々と参入しレッドオーシャンとなっているのも事実で、勝ち抜くのは難しいカテゴリーとなっています。また今のトレンドとしては、大容量タイプより、7枚入などの個包装タイプ。当社も個包装タイプの売り上げを伸ばしたくこれまで挑戦してきましたが成功していませんでした。そんな中で、昨年10月に美容感度の高い人に向けて美容成分や保湿力、処方設計、シートマスクの素材にこだわった朝用と夜用のオールインワン処方マスク「メガショット」を発売したサボリーノでも、大容量タイプに比べて、個包装タイプの方が売れ行きが良いんです。インバウンド需要は圧倒的に個包装タイプのため、今後は海外向けの商品を開発する予定です。例えばタイで売るならタイ向けの処方に、EUで売るならEU向けの処方にと地域別にアレンジして展開することを検討しています。

⎯⎯「ハニーロア(HONEY ROA)」もリブランディングし、ロアリブとして発信していますね。
ロアリブは今年3月に新店がオープンし11店舗展開へ、今後も3~4店舗増える予定です。売り上げは同40%増で、売り上げ構成比はフレグランスが約40%、次いでスキンケアが35%ほど。まだまだ認知度は低いですが、それでもインバウンド需要が高く、グランスタ丸の内店や京王新宿店ではインバウンド比率が40%を超えます。生活の中に取り入れる“香り”を一過性にさせないために、他カテゴリーのラインアップを充実化させ、複合的に香りを楽しめるような環境を作っていきます。そして購入につなげるためのEC強化が今後の課題ですね。
店舗数の少ないブランドでEC強化、さらにサブスクリプションも
⎯⎯BCL全体でECを強化していく?
そうですね。当社ブランドはリアルが非常に強い。国内のドラッグストア・バラエティーショップで取り扱い、例えば乾燥さんは約1万6000店舗、サボリーノは約2万店舗で展開しています。どこでも購入できる環境のため、送料を出してまでECで買う人は少ないですよね。そのため、店舗数の少ないロアリブや、昨年4月にデビューしサプリ市場に参入した夜の美容プロテインブランド「オヤスミタンパク」、そしてサブスクリプションをスタートさせたサボリーノのメガショットなどを中心にECを強化していきます。
⎯⎯その他のブランドの状況は?
高付加価値を求める消費者が多いことから、「クレンジングリサーチ(AHA)」は新ラインを発売しました。全国のドン・キホーテと大規模な取り組みを行い、売り上げを伸ばしています。まだまだポテンシャルを感じており、さらに伸ばしていきたいですね。

ただスキンケアブランドが好調な一方で、メイクブランドは苦戦を強いられています…。当社は毎年10の新ブランドを生み出していますが、売り上げが伸びるのはいっときのみでチャレンジがなかなか結びついていない。しかし反省点を次回に活かす新陳代謝を促しているので、失敗を恐れずに挑戦できる環境が作れています。
⎯⎯挑戦しやすい環境作りは若手社員の育成にも一翼を担っていますか?
頼れる人材が増え、さまざまなアイデアが出やすい環境になっていますね。ただ、売り上げが好調なときほど「このままでいいんだ」という気持ちになりがちです。努力や工夫をして売り上げを確保していく新ブランドを若手社員には任せていきたい。また、「プラザ(PLAZA)」など小売を展開するグループ内特性を活かし、若手や次世代のマネージャー候補には期限を決めたグループ内異動も視野に、経験を積んで欲しいとも考えています。グループとしても新しい風が吹いて活性化できると期待しています。
⎯⎯昨年4月にDX室を設立しました。そこで分析したデータの活用は進んでいますか?
その通りです。商品のヒット率だけではなく、売り場でどのような提案をすれば良いかなど戦略的な活用ができるようになりました。さらに、失敗が減ることで返品率が大幅に改善されたことが利益として大きいですね。当社ブランドはシーズン品が多いが、今後も返品を減らすための取り組みが構築できれば、商品を捨てることが無くなります。それが理想ですね。

⎯⎯海外戦略について教えてください。
現状は従来展開をしてきたアジア圏よりも、欧米が伸びている。特にEUは韓国コスメが市場を作っており、そのネクスト国として支持されているのが日本です。昨年3月に伊・ボローニャで開催された国際美容見本市のコスモプロフに出展してから急激に新規出店の話が増え、今後は英語表記の商品も積極的に出していきます。引き続き香港やベトナム・インドネシア・タイを中心にアジア市場も積極的に取り組みを継続する予定です。米国は処方が厳しいため変更が大変ですが、各国の常識を理解しながらその土地で求められる商品開発を行い戦っていきます。今は海外規模が大きくないからこそ、多少の傷を負っても問題ないとみて、アクセルを踏んでいきます。
9月に美容機器市場への参入を決定、その次は食品事業も
⎯⎯2025年の化粧品市場全体をどのように見ていますか?
市場全体はまだままだ伸長すると見ています。
⎯⎯御社の戦略は?
好調なサボリーノと乾燥さんの認知度を高めてさらに売り上げを伸ばしていきます。また苦戦が強いられているメイクカテゴリーの強化を図ります。その1つとして、韓国コスメに負けないメイクアイテムを開発するための「カワイイプロジェクト」を立ち上げました。第1弾段商品は“カワイイ”を前面に押し出したアイメイクで、SNSで大規模に発信していく予定です。そして海外展開は目標とする売り上げ規模10億円に向けて、前述の通り、既存ブランドの商品を現地生産で販売していきます。

⎯⎯新規事業の参入も計画していますか?
はい。9月には美容機器市場に参入し、第1弾として中・高価格帯のドライヤーを発売する予定です。いずれは海外を狙いますが、まずは日本市場で化粧品と絡めた複合的なトータルビューティを提案していきます。男女ともにヘアケアへの意識が高まっているため、サボリーノからも9月に新商品を投入する予定ですね。
インナーケアでは、オヤスミタンパクから第2弾商品として3月に乳酸菌とビタミンC配合のサプリメントが登場します。これは海外市場を狙っていきます。さらに、来期には健康美容に関する商品企画の新部門を設立します。その中で、健康に良いビーガン食のレストラン事業も検討していきます。新事業にも挑戦しながら、来期の売り上げは前年の約10%増を目指します。
photography: Ryoma Kawakami
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