インタビューに応じるTOKYO BASE 谷正人代表
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ステュディオス名義のオリジナル商品は廃止へ
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―「最速売上1000億・EC売上500億」を中期計画で達成することを目標に掲げていますが、進捗はいかがですか?
海外進出前の従業員数はアルバイトスタッフを入れて200人だったのが今は400人、売上も90億円から倍ほどの規模になり、現時点では順調に成長できていると思っています。一方で、価格競争に勝つためにEC専用の低価格ブランドを作ったりと売上や利益を上げることだけを目的としたビジネスの部分もあったので、これからはもっと本質的なビジネスモデルの構築を目指していきます。
―「本質的なビジネスモデルの構築」とは?
社員全員が誇りを持てるビジネスを展開していくということです。ファッションは嗜好品なので「世の中に絶対必要なもの」ではありませんが、ファッションを通じてお客様を喜ばせることができる。売上1000億円に到達するまでは、引き続きファッションだけをやっていこうと考えています。
―具体的な施策について教えてください。
既存事業では来春からステュディオスのオリジナル商品の製造販売を止めることにしました。新規の取り組みではストアブランド「シティ」を再始動するほか、まだ名前は決まっていないのですが来秋にはアスレジャーの新業態を立ち上げます。
■TOKYO BASEの主要事業
・ステュディオス(セレクトショップ)
・ユナイテッド トウキョウ(オリジナルブランド)
・パブリック トウキョウ(オリジナルブランド)
■今後の取り組み
・「ステュディオス」名義のオリジナル商品の展開を来春に廃止。
・ステュディオスから派生した新たなストアブランド「シティ」を始動。メンズとウィメンズを展開し、ユナイテッド トウキョウやパブリック トウキョウと同様、原価率約50%のオリジナル商品を販売する。
・アスレジャーに特化したオリジナルブランド(名称未定)を立ち上げる。来秋の展開開始を予定。
―ステュディオスのオリジナルを廃止する理由は?
セレクトショップのオリジナル商品は自社ショップ名のライセンスビジネスのようなもので、原価率が低く、様々なブランドと似たようなものづくりをしているところも少なくないかと思います。ステュディオスのオリジナル商品は日本製に徹底して質は高めていましたが、うちのスタッフはあまり着ていなかったようですし、自分たちが買わない物をお客さんに提供するのってどうなの?という思いがずっとあって。売上と利益は確保できるので製造販売を続けてきましたが、来春以降はセレクトショップとしての感度をより上げる方向にシフトします。
―固定客もいるかと思うので、その分の補填はどのように考えていますか?
実店舗の例を見ていると「ユナイテッド トウキョウ」や「パブリック トウキョウ」に流れていったり、セレクトもすべてエッジの強いブランドというわけではないので、顧客離れへの懸念はあまりありません。唯一影響が出るとしたら、ゾゾタウンでしょうね。ただ、ゾゾタウンで購入されるお客様の多くは「ステュディオス」と認識をせずに買っていると思うんです。ビジネスとしては大事な層なのかもしれませんが、ステュディオスのファンではないですし、あくまでも"ゾゾタウンのお客様"ですから、取りこぼしたとしてもそれはしょうがないという考え方です。
―「セレクトショップとしての感度をより上げる」とのことですが、具体的な施策は?
原宿エリアでコンセプト違いで運営している3店舗「STUDIOUS MENS 原宿本店」「STUDIOUS 2nd 原宿」「STUDIOUS 3rd」を参考に、今後はステュディオスの店舗の中で色々な業態を並べることでエッジを強めていきます。これは他店舗を買い回りしなくてもステュディオスだけで完結できるように、固定客を増やしていく狙いがあります。ウィメンズにもこの形式を反映していく予定です。
―現在の国内のステュディオスのオリジナルとセレクトの売上比率は?
実店舗に関してはメンズは90%、ウィメンズは76%がセレクトです。今後はセレクトの比率を全体で95%に引き上げ、自社ブランド製品は来春立ち上げる「シティ」のみ、2ラック程度取り扱います。
―「シティ」は以前も展開していましたよね。
ニュウマン(NEWoMan)新宿への出店に合わせて、ステュディオスのウィメンズ業態として2016年に立ち上げたのですが、売上規模はそこまで大きいものではなく2019年に終了しました。名称は一緒ですが、これから始動するシティは内容を大きく変えます。
―新生シティの内容は?
ステュディオスから派生したストアブランドと位置付けていて、社内のディレクターが手掛けたウィメンズのほかメンズ製品を販売します。上質な素材を使って、幅広い層に向けて打ち出していこうと思っています。
―そして来秋立ち上げるアスレジャーの業態について。現時点で決まっていることは?
ちょうど社内でキックオフしようとしているタイミングなのでまだ何も決まっていないんですが、開発には僕も携わります。出店先としてはルミネやパルコ、ルクアなど、ユナイテット ドウキョウやパブリック トウキョウを展開しているファッションビルを想定しています。
―アスレジャー市場は今後も伸びていくと言われていますね。
僕らも「グローバルで戦えるコンテンツ」を育てていく必要があると感じていて、この先2〜3年の中国市場を考えるとアスレジャーは重要なコンテンツになると思っています。
―他社のアスレジャーブランドではマッシュホールディングスの「エミ(emmi)」やジュングループの「ナージー(NERGY)」などがあり、競合するブランドや企業も増えていきそうです。
他社との差別化として、僕らはスポーツもできるし、そのままオフィスにも出勤できるような機能性を取り入れたファッション軸としてのアスレジャースタイルを提案していこうと思っています。
―ファッションの分野で他に実現させたい構想はありますか?
再来年ぐらいまでに40代〜50代に向けたブランドを立ち上げたいです。
―EC売上500億円達成の施策は?
コロナの影響もあってECに勢いはありますが、だからといってただECモールに出店したり、闇雲にD2Cブランドを作ったりするだけではないデジタルの取り組みを強化していきたいと考えています。
例えば、中国ではウィーチャットを使った売り方が浸透しています。ステュディオスの実店舗もスタッフのデジタル売上比率が2〜3割ぐらいあるんですよ。日本だとルミネカードなどカード決済が主流なのでスマホ決済への移行はハードルがあるので、まずは準備段階としてスタッフに個人のインスタグラムのアカウントを作ってもらったり、YouTubeやIGTVに動画を配信したりして個人の発信力を高めてもらっています。
―M&Aは検討していますか?また、対象となるブランドの条件は?
実際に何社か話はあります。M&Aの考え方としては、まず企業理念である「日本発を世界へ」に合致していること、年商30億円以上の規模であること、そして世界で戦えるコンテンツかどうか。中長期的な視点で検討を継続している状況です。
―ファッション業界の今後の見通しについて谷代表の見解を教えてください。
日本は「物があれば売れる」という時代が続いていましたが、これからは少子高齢化で経済がどんどん衰退していくと思います。ファッションビルの客数も将来的には半減するのではないでしょうか。僕たちはその未来を想定した上でビジネスをしているので、日本の経済が停滞しても大きなダメージにはならないように事業を広げています。コロナの流行で、各社が生き残るために試行錯誤するような状況にすでに変わってしまいましたが、今後もどんな状況下にあっても生き残っていける企業にならなくてはいけないと考えています。
―日本ブランドについては今後、どのようなことを期待しますか?
既存の市場にはないクリエイションを見せてくれるブランドが出てきてくれるといいですね。例えば、NIGO®さんが手掛けていた頃の「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」は、まさにそれを体現していたと思います。猿のモチーフをプリントしたアイコニックなTシャツは、「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」や「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」といった日本を代表するブランドにない全く異なるアプローチだったので、業界人からは色々な意見があったかと思いますが、「裏原ブーム」を代表するブランドとしてトレンドを牽引しましたよね。当時中学生だった僕もインポートブランドよりかっこいいと思っていましたから。批判を浴びることを恐れずに「未来のスタンダード」を作って欲しいです。
(聞き手:小湊千恵美、伊藤真帆)
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