「テルマ(TELMA)」のショーは、現代アートのギャラリー・コンプレックスが入っているTODA BUILDINGのホールで行われた。
ファーストルックからしばらく、黒、黒、黒の連続。
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Image by: 越智康貴
"テルマといえばグラフィカルなテキスタイルだよね"という期待に反した見せ方により、一気に引き込まれる。
同時に、いままでは柄でカモフラージュされていたようなディテールやシェイプもありありと見えてくる。ラペルひとつとっても服作りへの気構えが見えてくる。あるいは反骨的な要素が見えてくる。あるいはセールスへの高級な迎合というものが見えてくる。
次第にグレーが差し込まれる。そこにのせられたシルバーのペイントと連動するように、得意のチェックオンチェックなどの柄のレイヤリング、それからオリエンタルなモチーフ、それから室内着と室外着が交差するようなオン・オフ感覚のルックが次々と展開されていった。

Image by: 越智康貴
最初は、数ルックずつ区分けされている点、点、点という印象で、フォーカスの曖昧さが気になった。昼夜がくるくると足早に展開されていくようだった。けれど終盤まで見たところで、脈絡がなく感じていたものたちがゆるやかに結びついていく。
幾何学的なビジューのあしらい、レースが施された裾、パファージャケット、プリーツスカートの透け感、フェイクファーのバッグ、蘭や薔薇が描かれたアール・ヌーヴォーテイストのプリント、毛足みたいなグラフィック、唐突なキルティングや、星のかがやく柄……。

Image by: 越智康貴

Image by: 越智康貴

Image by: 越智康貴
繋がったものを言語化するなら”豊かな記憶から引用される調度品や室内装飾の手触り”だと思えた。それから“美しいものを愛した母親像と東京感覚のソフィスティケイテッド“のミックスとも思えた。
あくまでも無意識的に選び取られているだけで、テーマとしている訳ではないと思う。あくまでも印象によるものだから、思いっきり解釈違いの場合もあると思う(むしろ、確実に解釈違いだと思う)。けれどひとしきり空想を膨らませて、他者の表現を受け取ることの喜びを享受する。そうやってイマジネーションが膨らむショーだったことには間違いはないのだから……、と逃げ道を探す。

Image by: 越智康貴
ファッションにおける心地良さは、型落ちしていないシェイプの要求というものを除けば、身体との関係、つまりフィット感や肌触りから引き起こされるものだと思っていた。けれど、こういった洗練されたノスタルジアからくる基本的安心感の想起というものもあるんだな、と、ひろびろとした思いがしてくる。それが正しい解釈ではなかったとしても。それが仮に架空の記憶だったとしても。
Video by 越智康貴
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