ひどい肌荒れに悩んでいたとき、日本のあぶらとり紙に出合ったことがきっかけで2009年にサンフランシスコ発スキンケアブランド「タッチャ(TATCHA)」を立ち上げたアジア系アメリカ人のヴィッキー・ツァイ氏。あぶらとり紙の、その美しさと効果に感銘を受けたツァイ氏は、京都で出会った人々のおもてなしの心にも癒やされ、日本に魅了されていったという。日本の素材にこだわったモノ作りは、アメリカをはじめ、カナダ、オーストラリアなどで成功を収め、1年前に日本に上陸。コロナ禍を経て来日したツァイ氏に、星のや東京でインタビュー。ツァイ氏が語る、日本の伝統への愛と、“逆輸入”ともいえるタッチャの魅力とはーー。
■ヴィッキー・ツァイ
創始者&CEO。ウェルズリー大学で経済学の学士号、ハーバード ビジネス スクールでMBAを取得。メリルリンチ、 スターバックスなどでキャリアを積んだ後、2009年にタッチャを設立。コスメティックエクゼクティブウーマンファウンダーアワード(2019年)など数々の賞を受賞。世界の教育機会に恵まれない地域の女子教育をサポートするルーム・トゥ・リードのグローバルボードディレクター。SEOスカラーズ、アジアアメリカ ファンデーション、セフォラのアクセレレイトプログラムのメンターも務める。一児の母。
ADVERTISING
ーまず初めに、タッチャの魅力について教えてください。
13年前、初めて日本に来た時はとてもひどい肌荒れに悩んでいました。その主な原因はストレスで、日々のモチベーションも下がっていて…。日本で出会った人やモノを通じて、結果として肌の状態が良くなり、その経験からタッチャを立ち上げました。タッチャは、日本でのそういった経験を伝えることに注力しているのですが、みなさん自身の美しさの再発見や健康につながっていけば嬉しいと思っています。
ー商品においても、日本の素材にこだわったモノ作りが印象的です。
日本の女性が世界で最も長寿と言われていますが、長寿と肌の関係性は非常に深く、3年以上を掛けリサーチし、その秘密は日本人が伝統的に食べてきた健康食(質の良い米やお茶など)が、体にも肌にも良い影響を与えると考えました。その素材が素晴らしいと理解した上で、現在ではタッチャのチーフ サイエンティストとして活動する、田川正人氏と出会いました。科学的な根拠を得るためにより深い調査、200回以上のテストを実施している、業界をリードしている原材料会社とパートナーシップを結びました。 秋田こまち、宇治の緑茶、沖縄の海藻を主成分に、100年以上の歴史を誇る秋田の発酵スペシャリストと、約300種類から厳選した酵母とともに、二度の発酵プロセスを経て完成させたのが発酵コンプレックス「HADASEI-3」です。この成分はほとんどの製品に配合しています。
ー沖縄の海藻とは?
もずくです。もずくはとっても面白い海藻で、もずく水によりヒアルロン酸を肌細胞で作り出す機能の高まりが期待できるんです。米や茶においてもたくさんのテストを繰り返し、この3つが、最も適したコンビネーションだったんです。
そのほか、タッチャが採用する主な日本の素材
・カメリアオイル(ツバキ種子油):ビタミンA、B、D、Eにオメガ3、6、9を豊富に含む椿油はオレイン酸を豊富に含み、高い保湿力で知られている。伊豆大島産の椿油を配合。
・アコヤ真珠由来エキス(加水分解コンキオリン):乾燥を防ぎ、ふっくらなめらかな肌へと導く。
・紫黒米ヌカエキス(コメヌカエキス):ポリフェノールの一種であるアントシアニンを豊富に含み、生き生きとした印象の肌をサポートする。
・シャクヤクエキス:新潟産のシャクヤクの花から抽出したエキスを採用。気になる目元の乾燥を防ぎ、潤いを保つ。
・野イバラエキス(ノイバラ果実エキス):バラの中でも生命力が強く、環境に左右しにくい丈夫な種類の野イバラ。ノイバラの果実から抽出されたエキスは、肌の引き締めが期待できる。
左から、「タッチャ カメリア クレンジング オイル」(150mL、税込5700円)、「タッチャ ライス ポリッシュ クラシック」(60g、同7700円)、「タッチャ エッセンス」(150mL、同1万3000円)、「タッチャ シルククリーム」(50mL、同1万5000円)
ー今後の新製品について教えてください。
日本には「森林浴」という言葉があると思いますが、医師で日本森林医学会代表世話人を務める李卿博士とパートナーシップを結びました。 李卿博士の調 査によると、森を一回歩くだけで、気持ちが穏やかになるのはもちろん、価値のある測定可能なポジティブな変化を身体と心にもたらすことも期待できると言います。そこでわれわれが李卿博士と一緒に選んだのが、彼の研究でさまざまな健康効果をもたらす強力なフィトンチッドを生成する二つの木、日本のヒノキとスギ。これらに独自のHADASEI-3を配合したボディケアアイテムで、アメリカではすでに発売していますが、日本では2023年初夏の発売を予定しています。
ー次に使いたい日本の素材はありますか?
私たちがやろうとしていることは、日本に今まで伝わってきた伝統的な美容法を変えようとするのではなく、それが「なぜ効果的なのか」ということを追求していきたい、と思っているんです。日本でヒーリングという言葉を使いますが、“癒やされる”素材に一番惹かれますね。
われわれは、「スキンケアを売る」ブランドではなく、スキンケアを通じて「肌と心をケアする」ブランドなんです。
ータッチャは、日本ブランド?アメリカブランド?どちらなのでしょうか?
われわれは日本のブランドのふりをしたことはありません。私自身は日本人でもありませんし、日本語もできません。ただ日本にも、サンフランシスコにもチームがあります。素材やフォーミュラ、生産は日本で、企画やアイデア、マーケティングはサンフランシスコでというように、両方のチームが共同することでブランドが成立しています。
そういった「良さを合わせる」という考え方は、日本から学んだことでもあります。日本の文化は面白く、たとえば、日本で食べるパスタやクロワッサンには、イタリアやフランスに負けない美味しいものがあります。海外から入ってきたものでも、日本特有の視点、日本独自のこだわりを加えることで、全く違うもの、さらに価値のあるものに変化さてしまうのが日本です。そこが日本の素晴らしいところだと思います。
われわれは、ある素材をそのまま使おうと思っているのではなく、そこにエッセンスを加え、さらにリサーチをして新たな価値を加え、新しいものを生み出す。それがタッチャなのです。
ー今の日本市場をどう見ていますか?
コロナ禍を経て毎日ストレスを感じていると思いますが、外に目を向けることが難しかった時代だったからこそ、日本人特有の作法といった伝統など、日本の魅力に気づき癒やしについても考える良い機会になったのではないでしょうか。変化やチャンスがあり、非常に楽しみな時代ですよね。日本には「肌は心の鏡」という素晴らしい言葉があります。日本文化には昔からたくさんの叡智が込められていると思います。
ーそんな日本にタッチャは受け入れられると思いますか?
以前は、百貨店の化粧品売り場に行き、肌荒れなど今感じている悩みを伝えて購入することが多かったと思いますが、今は「自分をより高めるためには」ということに直結するクリエイティブな回答を欲していると思います。求めているのは、健康的で、強く、美しく、幸せになれる商品。タッチャはまさにぴったりだと思います。
ー日本展開2年目、今後の目標を教えてください。
お客さまに対しブランドを正直に説明し、そのお声にしっかり耳を傾け、長く続いていくブランドにしていきたいと思っています。現在日本では、デジタルのみの販売ですが、毎月、前月比2ケタ成長を続けています。その中で、お客さまから気軽に触れられる場所がほしいという声も多く頂戴し、11月からフォーシーズンズホテル京都 THE SPA限定のアイテムを発売し、期間限定トリートメントメニューもスタートさせました。2023年には新たに“触れられる”場所を作る予定です。多くの人にタッチャを知っていただけるような形にしていきたいですね。
(聞き手:福崎明子、平原麻菜実)
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【インタビュー・対談】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境